【連載】化粧品が起こすイノベーション・この技術に注目⑪防腐剤無添加技術、化粧品の防腐設計を実現(上)
2020.03.18
編集部
化粧品の歴史の中で、化粧品に配合するアミノ酸や糖類、油脂などと言ったカビが生えやすく微生物が繁殖しやすい成分が数多く使用されてきた。 だが、この10数年の間に、微生物やカビの原因菌に肌が汚染される危険性が指摘され、このリスクを避けようと「防腐剤フリー」の流れが急速に進展、防腐剤無添加技術に取り組む動きが鮮明になっている。
多くの化粧品各社が防腐剤無添加技術の開発に取り組む中で花王株式会社(東京都中央区)・安全性評価研究所は
①化粧品に求められる微生物学的品質と防腐防黴性
②化粧品の保存効力
③化粧品開発時の微生物試験とその留意点
④化粧品開発時の微生物試験
⑤化粧品製造に関わる微生物試験などの研究開発プログラムを上げて、化粧品の微生物学的品質を確保するための試験法や化粧品開発時の保存効力・防腐防黴性評価に取り組んでいる。
また、化粧品の処方設計の場面で重要となる防腐剤の選定に際して留意すべき点やノウハウを微生物や製剤の特徴などの観点から、化粧品における防腐処方の設計等に取り組んでいる。
中小メーカーの株式会社キレートジャパン(東京都新宿区)は、凍結真空乾燥法(フリーズドライ法)による「防腐剤完全無添加技術」を開発した。
フリーズドライ法は、約60年前、主に食品を保存する技術として開発された。この技術は、凍結した食品に対して減圧し、真空状態にして熱を伝えることで、食品中の水分を昇華させる乾燥技術。
凍結真空乾燥した食品は、原形がそのまま保持され、色や味などの変化が起こりにくいという特徴がある。さらに、氷の結晶部分が微細な空洞として残るので、水分を加えると、この微細な空洞に水分が浸みこみ、水に戻した場合の復元性、再現性が良いなどのメリットがある。
これまで、美容液等の場合、食品とは異なり複数の成分を配合しているため、最も効率よく凍結させる温度帯や時間を見つけ出すのが難しいこともあって化粧品への応用は進んでいなかった。しかし、同社は、独自の熟練した技術と経験を生かし、その多くの過程を手作業で実施、さらに、同社の製造工場で、厳重に管理されたフリーズドライ専用のクリーンルームを新設し施設の空調をはじめ、使用する機器に徹底した衛生管理を施すなどして製造している。
フリーズドライ製法で作ったコスメの主なメリットについて同社は「防腐剤を一切含まない完全無添加の配合成分は、液体の状態では長期間保存することができないため、凍結乾燥の状態にすることで、使用する直前まで鮮度を保つことが可能」。また「美容成分は、液体の状態ではすぐに変性してしまう。アルコールや防腐剤に長い間触れると、有効成分が持つ肌への効果が低下してしまう。そこで、凍結乾燥状態にすることで、美容成分の変性・効果の低減を防止することが可能」としている。