~九大と共同研究促進、ヘア-カラーの特許取得~
2021.08.12
編集部
ピュール(福岡県糸島市)は、天然成分や無添加にこだわったヘアケア化粧品等を主体としたオリジナルブランド化粧品の開発・製造・販売と、化粧品のOEM(Original Equipment Manufacturing=相手先ブランド製造)・ODM(Original Design Manufacturing=相手先ブランドで設計から製造までを請け負う)事業を行うメーカー。
同社は、1998年に、化粧品受託生産メーカーとして設立。以来、「人と自然にやさしく」をコンセプトに自社通販ブランド「サスティ」の毛髪剤「白髪用利尻ヘアカラーシリーズ」(写真)を2009年に開発し、主に、通販市場中心に投入・販売した。以降、「無添加で肌に優しい」ことが顧客から評価され、累計販売本数が1700万本を超える大ヒット商品となった。
現在、同シリーズは、スキンケアの商品開発やリニュアール化を図るなどして国内をはじめ中国・ 香港・台湾・韓国などの東南アジア、アメリカ・ヨー ロッパにも輸出され、世界中で販売される状況にある。
毛髪剤のリニュアール化を含む商品開発は、九州大学との産学共同研究による成果が大きい。
九州大学と共同研究を活発化させたのは2009年からで、これまで主に共同研究による成果・実績は「ポリフェノールを用いた新規染毛料の開発」 (2012年1月)をはじめ「噴霧容器入りヘアカラーリング剤」(2013年 12月、共同出願特許)、「糸島の特産物 利尻昆布を使った化粧品原料 の開発及びそれを配合した化粧品の性能評価」 (2016年4月、共同研究)などがある。
一方、国内外の需要拡大と受託製造(OEM)事業の拡大に対応するため、総額約20憶円を投じて新工場を建設した。
新工場は、2017年3月に総額約20憶円を投じて、県道85号線沿いの「九州大学南口泊研究団地」内に建設したもの。敷地面積は、1万5417平方メートル、延べ床面積6000平方メートルで前事務所の約2倍。1階は、自社オリジナル化粧品やOEM品の製造を行う。2階は、事務所。九州大学の理学系研究室と研究開発の面で連携を図り、商品性能の向上を図る。
同社は新工場建設について「これまでの工場の生産能力は、1日1万5000本までだったのが約2倍になり、大口注文に対応するベースが敷けた。今後は、OEM受注に力を入れ、自社製品は近年依頼が多い中国やヨーロッパに販路を開拓するなど海外進出を目指す」と説く。
~ユニゾン・キャピタルが買収、出口戦略に注目~
ピュールの事業展開において最大のトピックスは、M&Aで投資ファンド(ベンチャーキャピタル・VC)に買収され、VC主導の経営展開を行っていることがあげられる。
同社は、2019年6月に病院や介護等のヘルスケア分野への投資を主力とする独立系投資ファンド「ユニゾン・キャピタル」に全株式を譲渡し系列にはいった。
ピュールがユニゾン・キャピタルに自社株を売却したのは、主力商品の利尻ヘア―カラーシリーズを国内外において一段と販売拡大すること。また、新商品の開発強化やOEM 事業の拡大を促進するのが目的。
こうした事業を成長軌道に乗せるためにピュールは、経営資源の安定確保は避けられないとしてユニゾン・キャピタルに自社株を売却し、傘下に入って事業成長を目指すことにした。
M&A にあたって両社は、株式売却数や買収額等は、非公表として明らかにしていない。
一方、1998年に設立した独立系のプライベート・エクイティ・ファンドユ「ニゾン・キャピタル」がピュールに食指を伸ばして買収したのは、株式購入という形で資金協力し合わせて企業価値をあげてから転売して利益を上げるのが狙い。
一般的に、ファンドが利益を上げるには、投資している企業の株価(企業価値)が高くなることが必須。企業の価値が下がれば、ファンドの利益も減るため、ファンドは、買収した企業の価値をあげるために役員を派遣し、資金面や人事面など様々な提案を買収先企業に行なう。
通常、ファンドの出口戦略としてファンドによって買収先企業をゆっくりと育てて企業価値を高め、株式を長期保有するファンドと、短期間で企業価値を上げてから、株式を売却して短期間に利益を稼ぐ2つの出口戦略がある。
この2つの出口戦略について投資期間の約2年の間にユニゾン・キャピタルとピュールがどのような経営判断を行っているか、関心が高まる。特に、ファンドの考えと投資先企業の経営方針が合わない場合、M&Aはスムースにいかない。
今後、ピュールの存亡は、ユニゾン次第だが、収益を高めて企業の価値を上げてから売却するのか、ユニゾンの今後の出口戦略が注目される。