「バーンアウト(燃え尽き症候群)」は、仕事による極度の疲弊として知られ、場合によっては当事者に対する包括的なケアが求められます。精神科医であり温泉療法医でもあるOlivier Dubois医師(ソジョン・クリニックおよびソジョン温泉の代表、ストレス温泉学校の創設者)に、Thermes de Saujonが提供する支援について伺いました。
160年にわたるメンタルヘルス専門の温泉施設
Olivier Dubois医師
ソジョン温泉は、160年にわたりメンタルヘルス分野を専門としてきました。精神的な不調を抱える方に向けて温泉療法を提供しており、2024年には4,260名が治療を受けました。2012年には「ストレス温泉学校」を設立し、テーマ別の滞在型プログラムを開始しました。滞在中に以下のようなテーマ別のプログラムに参加することが可能です。
- ストレスとの向き合い方
- 燃え尽き症候群(バーンアウト)
- 自然な睡眠の回復
- 心的外傷(トラウマ)
- 自己主張の強化
- 線維筋痛症とのよりよい共存
- 乳がん治療後のケア
- 精神安定剤の減薬または断薬
- 介護者のための温泉休息
- 瞑想と温泉療法
- 子宮内膜症および子宮腺筋症のケア
- うつ病との決別法
これらのプログラムは、21日間の保険適用の温泉療法中に組み込むことも、自由診療として5日間で実施することも可能です。バーンアウトにおいては、以下の複数の目標を掲げています。まず、バーンアウトとは何かを理解し、疲弊の兆候を見極める力を養い、リスク要因と防御要因を把握した上で、仕事への意味やモチベーションを取り戻し、職業的・個人的再構築のきっかけをつかむことを目的としています。
バーンアウト向けプログラムの対象者とは
バーンアウトは、外的要因によって引き起こされ、主に職場で顕在化する可逆性の高い障害です。以前は健康だった人も罹患する可能性があります。ソジョン温泉では、この治療に良好な成果が得られています。
当施設を訪れる患者の平均年齢は55歳です。25~34歳では罹患率は2%、35~44歳で4%、45~54歳で6%に達し、ピークは45~54歳にあります。その後55歳を超えると5.5%と減少傾向を示します。これは、55歳以降にバーンアウトを発症すると、多くの人が仕事を辞めるためと考えられます。
女性の方が影響を受けやすい傾向に
来訪者の大多数は女性です。女性は不安や抑うつといった心理的症状を示しやすい傾向があり、感情、繊細さ、抑うつ、不安などのメカニズムが影響します。そのため、自らの状態をよく認識しており、ケアを求める傾向が強いのです。
一方、男性では攻撃性や苛立ちとして表れることが多く、ケアの必要性を認識しにくい傾向があります。例えば、自殺未遂は女性に多いものの、実際に自殺に至るのは男性の方が多いという統計があります。男性の抱える内面の暴力性は、ケアを受け入れることに対して障壁となりやすいのです。
バーンアウトにかかりやすい職業とは
特に影響を受けやすいのは管理職です。自由業、医師、農業従事者、教育関係者なども含まれます。プレッシャーの大きい職場、孤立して仕事をする環境、他者の苦しみに日常的に接する職業は、特にバーンアウトのリスクが高くなります。
3週間のケアプログラム内容
バーンアウトプログラムでは、休息・リラクゼーション・解放を重視したケアが提供されます。また、心理的なサポートや、職場復帰を見据えた支援も行われます。
3週間の滞在中、毎日以下のような温泉療法が施されます。
- ジェット付き浴槽での入浴(10分)
- ジェットシャワー(3分/強さは要望に応じて調整)
- 温泉プールでの入浴(10分)
- マッサージ(20分)
これらの施術は心身のリラックスを促すことを目的としています。さらに、週に1回、一般医または精神科医による心理的フォローアップがあり、個別のカウンセリングも提供されます(こちらは健康保険の適用外です)。
バーンアウト専用プログラムを選択した場合、同じ課題を抱える人々とのグループに参加します。滞在中は、心理教育的ワークショップやヘルスワークショップ、個別心理面談、個別評価サポートなどを受けられます。
なお、5日間の短期プログラムも存在しますが、こちらにはヘルスワークショップや心理面談は含まれていません。ただし、希望すれば現地で追加申込が可能です。
「心身医学的温泉療法」とは
患者の病名にかかわらず、当施設で提供している温泉療法は、いずれも「心身医学的療法」に該当します。
このため、治療のための温泉療法を希望する場合は、かかりつけ医または精神科医が、患者の健康状態に応じて処方を行う必要があります。医師は、健康保険制度で使用されるCERFA書類上に、温泉療法の治療目的として「心身症」を明記することが求められます。健康保険機関(Assurance Maladie)は、通常1か月以内に審査結果を通知します。
温泉療法は近年、より一般的な選択肢となりつつあり、着実な成長傾向を示しています。ただし、新型コロナウイルス感染症の影響によって、その増加傾向には一時的な停滞も見られました。
バーンアウト患者に対する温泉療法の効果
ストレス温泉学校において、バーンアウトをテーマにしたプログラムを受けた92名を対象とした調査では、滞在終了時点で72%が「改善を感じた」または「非常に改善した」と回答しました。その3か月後も、69%が引き続き改善を実感しています。さらに、63%が痛みの軽減を実感し、70%が睡眠の質の向上を報告しました。
また、オーストリアで行われた別の調査では、3週間の温泉療法を受けたバーンアウト患者65名を対象に経過観察が行われました。その結果、以下の4つの症状すべてにおいて、有意な改善が確認されました。
- 無気力(アスセニー)
- 精神的疲労
- 意欲の喪失
- 不眠症
これらの改善効果は、治療後3か月が経過した時点でも持続していました。