美容業界の主なM&A、4年間で海外を含めて17件に
2014.03.10
編集部
化粧品やヘアサロンなど美容業界の企業買収が活発化している。今年に入り国内外で楽天、健康ケンコーコム、ポーラ・オルビスホールディングス(HD)、アデランスなど大手企業が相次いで企業買収(M&A)に乗り出している。美容経済新聞社の調査では、美容領域での主なM&A件数は、2010年から2014年の4年間で17件に達したことが明らかになった。今後、国内化粧品市場の飽和、乱売合戦の中で財務体質の強弱が一段と表面化し、M&Aがさらに進むものと見られる。
一般的にM&Aの手法は、売り手が買い手に株式を売却する株式譲渡や吸収合併、売り手の事業(資産・負債・商圏、人材等)を買い手に売却する営業譲渡(事業譲渡)、買い手会社が、売り手会社の株式を受取り、対価として株式を交付する株式交換、株式公開買い付け(TOB)などによって行なわれるケースが多い。当然、財務体質の強い企業が買い手になって財務体質の弱い企業(売り手側)の株式を取得し傘下に収めるもの。
今年に入り国内企業同士のM&Aの動きとして楽天がヘアサロン検索サイトを運営する美・美・美コムを買収したのをはじめ健康コーポレーションが子会社化(2013年9月)したイデアインターナショナルの株式を2014年2月から3月にかけてTOBで追加取得した。同社は、2013年8月に日本リレント化粧品の全株式を取得するなどM&Aを活発化している。また、資生堂は、主にヨーロッパでサロン向けなどに販売してきたスキンケアブランドの「カリタ」と「デクレオール」を仏ロレアル社に事業譲渡した。企業と商品ブランドを前面に押し出して事業展開してきたブランド戦略の選択と集中を図る動きとして注目される。ハーバー研究所は、連結子会社のビューティジーンを今年3月31日付けで吸収合併する。
海外事業を加速する狙いで海外企業をタ-ゲットに企業買収した動きとして注目されるのは、ポーラ・オリビスホールディング(HD)とアデランスの2社。
ポーラ・オリビスHDは、米エイチツーオ―プラスを2011年7月に買収したのに続き豪ジュリーク社を同年11月に買収し傘下に収めた。また、アデランスは、米ヘアクラブ社を2012年7月に124億円で買収したのに続き、同年9月に仏ル・ヌーヴェル・エスパセ・ポーテ社を買収し傘下に収めた。いずれも現地法人(持株会社)を通じて買収しているもので、買収によって海外事業を加速している点に特徴がある。
一方、韓国の企業が日本企業を買収する動きも見られる。韓国ヘルスケア最大手のLG生活健康社は、2012年2月に銀座ステファニーを買収して傘下に収めたのに続き同年12月に健康補助食品「皇潤」で成長を果たしたエバーライフを買収し手中に収めた。
こうした国内企業間、国内企業と海外企業間、海外企業と国内企業間の主なM&A件数は、2010年のダスキンがアザレプロダクトと共和化粧品工業を買収した2010年9月から2014年2月までの約4年間で累計12社17件にのぼる。
美容業界でM&Aが活発化している背景には、2兆円市場を形成した国内化粧品市場がこれまで市場を支えてきた5,000万人にのぼる女性の化粧品消費人口の内、消費の中軸を成してきた20代から30代の女性の割合が減少し、逆ピラミッドの消費構造になっていること。また、消費者の化粧品選択動機が単なる有名ブランド指向ではなく好ましい効能を実感できる「自分の肌に合う」実質適合型化粧品選びへと移行していること。さらに、通信販売を中心に異業種からの新規参入が相次ぎ、乱舞・乱売合戦が横行して収益が急速に悪化し継続して事業を展開することができなくなったこと。大手企業を中心に国内市場の飽和と過当競争の中で、海外に活路を見出して海外企業漁りに乗りだしていることが主因。
今後、美容業界のM&Aは、消費購買単価の引き下げによる過当競争が進み、群雄割拠とした企業群の戦勝劣敗がより鮮明になって来る。その意味で、業界の整理淘汰が進むのは避けられない。似て非なる商品のブランド威光や商品の販売だけでは、生き残れない。消費者個人の肌に合う基礎化粧品やヘアケア商品の品質と安全性、信頼性を取り込む商品作り、訴求力が何より増して問われる状況になってきた。