資生堂、ファンケルの基礎研究動向(下)
2014.08.18
編集部
ファンケル、新UVカット素材開発、総合研を強化
ファンケルは、東北大学多元物質科学研究所を中心とするグループとの共同研究で、紫外線遮蔽効果を持つ無機粉体「酸化セリウム」の形状をコントロールすることで、球状、板状、花びら状の3形状(写真)に合成することを実現、特許を出願した。また、新開発の球状、板状、花びら状の形状をした酸化セリウムは、紫外線遮蔽効果と合わせて滑らかな使用感や高いぼかし効果があることを機能性評価テストで確認した。現在、総合研究所化学品研究所を中心に、使用性に優れたUVカット素材を新たなパウダーファンデーションの開発に応用するための研究開発に取り組んでいる。
現在、パウダーファンデーションには、紫外線から肌を守るため、酸化チタンや亜鉛などの微粒子化合物の粉末などが紫外線遮蔽剤として配合されている。しかし、一般的に使用される紫外線遮蔽剤は、多量に配合すると感触や透明感などの使用性が悪くなる欠点があった。
そこで同社は、透明性が高く広範囲で紫外線を遮蔽する特性を持つ酸化セリウムに着目し、東北大学多元物質科学研究所などのグループとUV効果や優れた使用性を持つUV素材開発を目的とした共同研究を行ない、酸化セリウムを球状、板状、花びら状などの3形状に合成することに成功した。同時に、形状を制御した酸化セリウムの紫外線遮蔽効果や滑り性効果について化粧品に一般的に使われている微粒子酸化チタン、板状の粉末原料「タルク」などの紫外線散乱剤を使って評価した結果、3形状に合成した酸化セリウムは、一般的な紫外線散乱剤と同等の遮蔽効果を持つことや一般的な紫外線散乱剤と比べて摩擦抵抗が低く滑らか、という評価を得た。また、3形状に合成した酸化セリウムのぼかし効果については、微粒子酸化セリウムを比較対象としてヘイズ値(ぼかし効果の指標)を測定したところ特に、球状、花びら状の酸化セリウムがぼかし効果に優れているとの評価を得た。
一連の評価結果を踏まえて酸化セリウムの合成に関し特許申請済み。また、新開発のUVカットに優れる新素材をファンデーションに配合して化粧機能性を評価したところ塗布時の使用感が滑らかで、仕上がりが美しいなどの特徴を確認している。
現在、新開発のUVカット素材をパウダーファンデーションの商品化に繋げるための研究開発に取り組んでいる。
同社の研究開発予算は、年間平均で売上高の約3%を占める。2013年3月期の研究開発費は、24億9800万円にのぼる。
同社は、2004年5月に総合研究所の再編に踏み切り研究開発をさらに強化する。総合研究所の第二研究所構想を見据え、製品開発部門として化粧品、健康食品の安全性、品質を評価する「安全性品質研究センター」、基盤技術研究部門として化粧品の基盤技術開発を担う「ビュティサイエンス研究センター」、予防医療研究に加えて素材探索や開発および臨床開発を担う「ヘルスサイエンス研究センター」、売上と企業価値向上への貢献ならびに次世代のための研究開発力強化を目的とする「イノベーション研究センター」をそれぞれ新設した。
イノベーション研究所に位置付ける第2研究所は、2016年春完成を目標に建設に着工する計画で、研究員も50名程度、増員する予定。
- 参考リンク
- 株式会社ファンケル