【連載】化粧品各社のイノベーション研究【2】ハーバー研究所①~新社長に末広栄二氏就任、通販組織を再編強化~
2015.11.16
編集部
株式会社ハーバー研究所(ジャスダック上場)は、マーケティング事業本部ディレクターの前職にあった末広栄二氏(写真)を新社長とする昇格人事(2015年6月21日付け)を行った。田中雅智前社長は、退任した。
末広新社長は、今期(2016年3月期)重点施策の一環としてネット通販の強化や社内情報の共有化などに取り組んでいる。
通販部門の強化は、前期(2015年3月期)の通販売上高が2014年3月期比7・9%減の82億1000万円になるなど、巻き返しを図る必要に迫られたことによる。前期における通信販売の販売ルート別構成割合は、62・3%とトップを占める。
前期に通販部門の収益が落ち込んだ理由として、同社は「新規顧客獲得後の顧客育成に大きな課題がある」と分析。
このため、従来から、新規顧客の獲得を行っていた宣伝PR部門の業務を新たに、継続客の育成、会員への誘導による歩留率の向上などを担当していた通信販売部門に移管。通信販売部門が新規顧客の獲得から継続客育成までを一貫して行う組織に再編した。
これにより顧客生涯価値の向上に繋げるほかコスト削減による受注のピークを平準化していく。またコールセンターでは、顧客へのカウンセリング力を増やし、顧客対応の充実を図る考え。
通販部門の組織再編と合わせて社内の情報を共有化し、スピードアップを図るため、ユーチューブを使った動画配信や社内システムのクラウド化に取り組んでいる。
ユーチューブによる動画配信は、社内セミナーや新商品の説明、会議などの動画を配信し全ての拠点で同時に、社員がいつでも閲覧できるようにした。
現在、コールセンターの基幹システムを刷新してクラウド化を進める体制を整えている。コールセンターに寄せられた顧客の声を全社員でリアルタイムに共有することを目指したもの。
これまで通販の担当者は、顧客に直接触れずにオファーの設計やウェブの制作などを行ってきた。このため、実店舗やコールセンターのスタッフとの意識のギャップが生じがちだった。顧客の声をリアルタイムで掌握できれば、オファーやCRMを設計する通販部門のスタッフの顧客に対する意識改革が進み、通販事業においても接客の感覚が醸成できる。
今後、顧客とのコミュニケーションを重視した顧客対応への転換がどこまで進むか、注視される。
新規客獲得については、今期の広告宣伝費が前期に投下した約15億円を上回る見通し。また、今期は、テレビCMとウェブ広告を中心に新規の顧客を獲得する考えで、従来から行っていた新聞広告は縮小する方針。