【連載】化粧品各社のイノベーション研究【22】ロート製薬① ~化粧事業拡大、再生美容や機能性素材の探索研究推進~

2016.04.22

特集

編集部

目薬や胃腸薬など大衆薬メーカーとして存在感を示してきたロート製薬株式会社(大阪府大阪市)は、全売上高に占める化粧品(スキンケア)の売上比率が前期(2015年3月期)で約67%に達するなど、化粧品メーカーに大変革(イノベーション)を遂げている。

ここへきてアンチエイジング化粧品開発のために皮膚幹細胞の研究や皮膚疾患の遺伝子研究に力を入れて取り組むなど、化粧品メーカーとしてさらに変貌を遂げる動きにある。

同社が本格的な皮膚研究に着手したのは、1995年に皮膚科学研究室を設立したのが契機。これを皮切りに2006年には再生美容研究室を新設し、皮膚における幹細胞研究をスタートした。

同社が細胞と化粧品のイノベーション研究で、まず注目したのが線維芽細胞の働き。繊維芽細胞は、コラーゲン・エラスチン・ヒアルロン酸などのタンパク質を生成する美肌の生命線ともいえる細胞。しかし、加齢とともにタンパク質の生成が減少。また、機能が低下するとコラーゲンなどの量が減少するなどの問題があった。

コラーゲン、ヒアルロン酸、TIMPIの能力向上そこで、再生美容や機能性素材の探索をテーマに掲げる現在の中核研究拠点「ロートリサーチビレッジ京都」において、脂肪由来間葉系幹細胞が真皮線維芽細胞のヒアルロン酸、コラーゲン、更にコラーゲンの分解を抑制する酵素「TIMP1」の産生を促進することを確認(データ図)。同時に、真皮線維芽細胞のコラーゲン線維形成を促進することも確認した。

確認試験は、脂肪由来間葉系幹細胞と真皮線維芽細胞を混合培養した後、線維芽細胞のみを再培養し、その上清中の各タンパク質量を測定した。また、幹細胞は、真皮線維芽細胞のコラーゲン繊維形成することについて真皮線維芽細胞および脂肪由来間葉系幹細胞の培養上清を添加し、真皮線維芽細胞を培養した後、I型コラーゲンを染色した。

一連の試験結果から、脂肪由来間葉系幹細胞は、自らコラーゲン等を産生するのみならず真皮線維芽細胞のコラーゲンやヒアルロン酸の産生を促進すること。また、コラーゲンの分解を抑制する生体内酵素「TIMP1」の産生が促進することも判明した。

従来から幹細胞が自らコラーゲン線維を形成することは明らかになっていたが、線維芽細胞の能力まで高めることが今度、明らかになったことで、加齢等で弱ったコラーゲン線維の増強等に貢献すると期待されている。

同社では「皮下の脂肪由来間葉系幹細胞の活性化は、肌の状態改善、再構築に繋がり、アンチエイジング効果が期待できる」と強調。今後、脂肪由来間葉系幹細胞の働きを研究して化粧品開発へ応用する考え。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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