【連載】化粧品・美容関連ベンチャー企業の成長軌跡【9】ナールスコーポレーション① ~大学から技術移転を受けて化粧品原料ナ―ルスゲンを開発~

2016.08.10

特集

編集部

大学発ベンチャーの株式会社ナールスコーポレーション(京都府京都市、社長松本和男氏)は、化粧品原料ナールスゲンを開発するとともに、同原料を配合した化粧水を商品化して販売するなど事業が軌道に乗ってきた。

化粧品原料ナールスゲンは、京都大学と大阪市大の研究グループがγ-グルタミルトランスペプチダーゼ阻害物質「GGsT0P」のヒト皮膚線維芽細胞内コラーゲンおよびエラスチンの産生亢進を発見。これらの成果がJST研究成果最適支援事業(A-STEP)に採択(2009年12月)され、2大学での研究成果をもとに2011年8月にエイジングケア化粧品原料「ナールスゲン」として 商品化が決定されたことを受け、2012年3月に共同研究者らが出資して同社を設立。2大学から技術移転を受けて事業化に取り組んだ。

京大で研究されていたγ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)は、人を含むほとんどの生物が持っている酵素の事。血液検査で肝機能のγ-GTPと呼ばれる血中濃度の酵素といえばわかりやすい。

GGTは、体内にあるグルタチオンという抗酸化ペプチドを分解する働きがあり、老化の原因である活性酸素を取り除く抗酸化物質の代表選手に挙げられる。

このGGTの役割や影響について調べるために、その酵素の働きを選択的にブロックする新しい化合物「GGT阻害剤」(GGsT0P)の開発を進める中で、GGT以外の酵素をまったく阻害せず、毒性や刺激性もない理想の化合物を発見。「GGTを完全にストップさせる最も強力な化合物」という意味を込めて「ナールスゲン」と名付けた。

一方、大阪市大は、γ-グルタミルトランスペプチダーゼ阻害物質「GGsT0P」は皮膚繊維芽細胞を活性化させることで、コラーゲン、エラスチン、ヒートショックプロテイン47(HSP47)等を増やす働きがあることを科学的根拠によって実証した。

実証試験では、ナールスゲンによるエラスチンの増加が1.7倍増えていることが明らかになった。また、コラーゲンが作られる際に必要なたんぱく質「シート・ショックプロテイン47」(HSP47)が多いと繊維芽細胞がより活性化する。

ナ―ルスゲンによるHSP47の増量これを裏付けるようにナールスゲンでHSP47が1.6倍増えるなど活性化が明らかになっている(図参照)。同時に、共同研究開発パートナーの株式会社ドクターシーラボにおける人でのモニタリングテストでも、“保湿効果や肌弾力の向上とともに、適度なシワ改善効果”の発現が見いだされ、新しいタイプの“エイジングケア化粧品(原料)”となり得ることが実証された。

このように大学での研究をベースにアミノ酸誘導体ナ―ルスゲンが化粧品素材として活用できる道を開いたことは、化粧品業界に一石を投じたものとして注目される。

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