【特別企画】大手各社の化粧品事業戦略に迫る[1] 「化粧品の振興策と再生医療の施策を聞く」

2013.07.8

特集

編集部

国内化粧品市場は、少子高齢化の進展や可処分所得の減少などで1兆4千億円市場から伸びが鈍化傾向にある。消費構造も価格の2極分化・機能重視型に変化し、これまでのマスセールスの時代は終焉した。ここへきて成熟した国内市場から方向転換して活路を海外に求める動きが顕著。すでに、アジア市場中心に激しい市場争奪戦が始まっている。
そこで、美容・健康・医療を標榜する美容経済新聞社では、化粧品の市場構造が大きく変貌する中、連載「大手各社の化粧品事業戦略に迫る」と題して化粧品メ―カ―や原材料サプライヤーなどを対象に各社の化粧品事業戦略に迫った。
第1弾として経産省生物化学産業課長江崎禎英氏に化粧品の振興策と再生医療の施策を聞いた。

東南アジアで日本専門チャンネルを通じて化粧品PR

今年度、遺伝子ビジネスのガイドライン作成

経済産業省製造産業局生物化学産業課長 江崎禎英氏

江崎課長

 ━まず、国内外の化粧品市場をどう評価・分析しているか、伺いたい。

「この20年間、国内の化粧品売り上げはフラットに推移しここへきて需要構造も2極分化しています。特に、最大の化粧品人口である5千万人にのぼる女性層がピークに達し、約3千社ある化粧品メーカーが激しい争奪戦を展開しているのが実態です。また、輸出入統計をみても輸出は、この10年間で2倍、1200億円に達した半面、輸入は1600億円と輸入超過となっています。一方、世界市場で中国が11.5%、179億ドル、東南アジア8.5%、95億ドルと伸びています。成熟市場の欧米と比べ高い経済成長を背景に中国、東南アジア市場は、引き続き世界市場を牽引して行くと見ています。」

 ━国内の化粧品輸出を促進するための具体策は。

「化粧品の輸出促進策として海外各国の規制実態や市場動向に関するセミナーの開催、JETROによるベトナム、ロシアなど新興国の市場、規制調査及び各国のバイヤー招聘による化粧品の研究所、販売店紹介によるアピールなどを継続して実施する。海外においては、今年11月にインドネシアで、日本のアニメ、伝統製品などを売り込むク―ルジャパンの一環として化粧品紹介イベントを開催する計画です。」

 ━国内の業界からどんな要望が強いですか。

「東南アジア市場で日本独自の専門チャンネルがあると化粧品を含む日本製品の魅力を伝える効果が大きいとの要望が強い。アジアで,日本のコンテンツを専門に放送する国内事業者と連携しながら化粧品のPRや国内化粧品会社のアジア進出を支援して行きたい。」

 ━化粧品や医薬品会社、美容整形クリニック、エステサロンなどが遺伝子受託検査を行って化粧品、毛髪などの応用開発や遺伝子検査に基づく化粧品販売などを行う遺伝子取扱ビジネスが勃興してきました。新たな取引のルールを定めた指針作りが必要ですね。

「大手化粧品の中で、遺伝子による毛髪の育毛剤開発が進み、新たな胎動を予感させる動きが見られます。また、医療機関を介さずに私的な個人を対象(DTC=ダイレクトツ―コンシューマ)に検査キットや採取キットで、遺伝子検査代行を行う遺伝子取扱ビジネスやヒト遺伝子をデータベース化して遺伝子情報をネットで提供する遺伝子情報サ―ビスに乗り出す動きが顕著になってきました。当省は、昨年、DTCの実態調査を行い、幅広い分野でビジネスが展開され、スソの広がっている結果を得ています。今年度中にDTCの新たな取引のルールを定めたガイドラインを策定します。」

 ━化粧品分野に新規参入した企業の中には、再生医療製品、再生医療機器の開発・販売に取り組む動きが見られます。具体的な振興策を伺いたい。

「国内の医療機器全体が欧米の攻勢で辛苦をなめる中で、世界初のiPS細胞や細胞シートに代表される再生医療製品、再生医療機器を成長のエンジンとして位置付けて力を入れて取り組みます。
具体的には(1)細胞培養加工機器や周辺機器の設計基準の標準化(JIS)を図る(2)効率的な細胞の培養を実現するため医療機関から外部の専門機関への委託を可能とする委託制度の導入と安全性に関する審査基準の整備(3)美容医療の許可制から届け出制の移行(4)医療機関や大学が行う再生医療の臨床研究で日本製の機器や試薬を使用して性能を調べる場合、研究開発費(装置開発、治験費)の補助(今年度20億円の予算計上)などの施策を講じて行く考えです。一連の施策は、薬事法の抜本改正や新法再生医療推進法に盛り込み次期臨時国会で成立させる考えです。」

 

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