第1期対談第22回 新卒社員マネジメント考②

2016.11.1

業界展望

admin

このシリーズはこれまで、美容経済新聞論説委員 野嶋朗氏に美容経済新聞編集長 花上哲太郎がインタビューを行う形で進めている。しかし、とある会社の営業職の新入社員が悩みを抱えて野嶋氏に相談した。今回はそのQ&Aを取り上げてみたい。

モチベーションとは何か?
どのようなときに“上がる”のか

野嶋 いまはどのようなことが課題だと思っていますか?

Aさん モチベーションをどうやったら保てるだろうかということに悩んでいます。

野嶋 まず「モチベーション」について考えてみましょう。モチベーションとはそもそも、何なのでしょうか。何だと思いますか?

Aさん ……パフォーマンスでしょうか?

野嶋 少し整理してみましょう。モチベーションとは「熱」「やる気」「体温」のこと。一方でパフォーマンスとは、「成果」「目標達成」のことを指します。つまり、モチベーションとパフォーマンスはイコールではないのですね。ところで、ビジネスでは「人に会えば会うほどチャンスがある」と言われています。なぜだと思いますか?

Aさん 行動する量が増えるからでしょうか?

野嶋 その通り。パフォーマンス(成果)を決めるのが行動量なのですね。行動の量がチャンスを招くのです。でも、行動を起こすというのは大変なこと。その時に何が差をつけるのかというと、モチベーションなのです。

Aさん 確かに、営業でも「新規開拓をたくさんしろ」と命令されても、なかなか動き出せないときもあります。

野嶋 そう、その時に“モチベーションが高い”という状況だと、うまく乗りきれます。

Aさん でも、モチベーションは常に高いままではいられません。

野嶋 モチベーションが落ちてしまう、またはなかなか上がらない時もありますよね。ダニエル・ピンクという人が、著書「DRiVE」の中でモチベーション3段階について説いています。
「モチベーション1.0(basic operating system)」は、衣食住を満たすための生物としての基本的欲求に対する動機付け。「モチベーション2.0(the carrot and the stick / reward and punishment)」は報酬、あるいは罰金。「モチベーション3.0(Internal motivation / mastery)」は、自己実現を果たしたいという欲求や、社会と接点を持ちたい、社会に貢献したいという内発的欲求、人間として成長したいという心の声も入ります。しかし、モチベーション1.0が満たされていないと、2.0や3.0に到達していないと言われているのですね。

Aさん すごくよくわかります。ところで野嶋さんはどのような時にモチベーションが上がるのでしょうか?

野嶋 私は人に会うとホッとしますし、モチベーションが上がります。やはり人間は社会的な生き物であり、人と人との関係の中で生きるものだと思っています。

キャリアの幸運は
計画しない幸運でやってくる

Aさん 上手に段取りが組めないということにも悩んでいます。

野嶋 営業職にいる限り、計画や目標からは逃れられないものですよね。目標を達成するためには段取りを組む力が必要です。でも目標に振り回されず、自分を主人公にして自分の人生を生きるためには、段取り力をモノにすることが必要です。

Aさん なぜでしょうか?

野嶋  目標を達成すると、どのようなメリットが自分にあるでしょうか。例えば、承認欲求が満たされるということもあるでしょう。あるいは、相手と同じ感覚を持つことができたという「共感」が得られることもメリットです。そして、自分の思い通りに物事が進んだことにも満足感を得られるはずです。つまり、段取り力を自分のものにすれば、目標そのものに振り回されず、目標を達成するほどに満足感を得られ、自分の人生を生きることができるのです。

Aさん 目標を達成するためには、段取りをしっかりと立てて地道に頑張るしかない、ということですよね。

野嶋  その通り。しかし、スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授は、「計画された偶発性理論(プランドハップンスタンスセオリー)」を提唱しています。自分のキャリアは意図的に積み上げていくには限界があり、「個人のキャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定される」ため、その偶然を計画的に設計すべきということですね。目の前のことに一生懸命頑張れば、必ずチャンスはやってくる。チャンスの花束をどう掴むのか、掴めるのかは、自分の頑張りにかかっている。予期しない出来事を待つのではなく、積極的に行動することで「偶然を計画」すべきだと思います。

Aさん とても勇気が出ました。本日はありがとうございました。

 

▼この企画について
美容経済新聞では、サロン経営に携わる方に役立つ情報を常にお届けしています。2015年は、論説委員である野嶋朗氏を迎え、今後の市場の変化にいかに対応していくべきか、ヒントを探って参ります。

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