第1期対談第23回 ポイント経済圏とは
2016.12.1
admin
買い物の際に貯まる「ポイント」を積極的に使っている人も多いだろう。このポイントは、美容サービスにおいては「プラスワン」としてユーザーに使ってもらいやすいものだと、美容経済新聞論説委員 野嶋朗氏は指摘する。どのようにビジネスに役立てたらよいか、美容経済新聞編集長 花上哲太郎がインタビューを行った。
ポイントを加盟したら
「プラスワン」のメニューを作るべき
野嶋 今回は「ポイント」について取り上げましょう。花上さんはポイントカードを使っていますか。
花上 ポイントというと、「Ponta」や「nanaco」「Tポイント」が有名ですね。いくつか使っています。
野嶋 提携している企業によってそれぞれ使えるポイントが異なりますよね。ポイントで形成される一つの連合体。これを「ポイント経済圏」と呼びます。貯まったポイントは主にコンビニエンスストアで使われることが多いようです。
花上 実体験としてよくわかります。
野嶋 ポイントを貯めてランチのデザートを買ったり、あるいは、キャシュレスの手段としても使われたりしていますよね。例えば、1,080円の買い物をしたとして、80円分ポイントで支払えば小銭を受け渡しせずに済みます。
花上 エステティックサロンなど、サービス業でも使うことのできるポイントが広がっているようです。
野嶋 ポイント経済圏に加盟することのメリットは、ユーザーがポイントを使えるだけではありません。ポイントを使うと、ユーザーの買い物履歴と年齢、性別などの属性がわかります。つまり、エステティックサロンに興味がありそうな人々に、効果的にダイレクトメールを打つことができるのです。消費行動を分析して次の行動が読めるかどうか、ポイント経済圏において勝者になれるかがかかっています。
花上 ポイントというと、ポイントを使ってくれるからお店にメリットがあると考えがちですが、本当のメリットはそこではないのですね。マーケティングの一つとして使えれば、可能性はもっと広がりますね。
野嶋 ポイントを供給しているのか、消費させているのかを把握することは大事ですよね。ポイントを供給している場合、販促としてポイントを使えているかが鍵。ユーザーがリピーターとして戻ってこなければ、ポイントに加盟しても得はありません。
花上 ポイントを消費させるにはどうしたらいいでしょうか。
野嶋 ユーザーからすると、美容はポイントを消費する傾向にあるようです。これは贅沢消費全般に共通する傾向ですね。特に美容は消費の「プラスワン」をしやすい。例えば、貯まったポイントを使ってワンランク上のパックをしたり、20分のマッサージを追加したりしやすいのです。一方で、こうした「プラスワン」ができる、あるいはしたくなるようなメニューがないと、消費が流出してしまうのです。ここはビジネスのセンスが問われるところですね。
花上 これまで見逃しがちな考え方でした。
野嶋 ポイントは、基本的には何かを「アドオン」あるいは「プラスワン」させることで販促として使わなければ意味がないと考えてください。美容はメニューを作りやすい業界ですから、ぜひ取り組んでみてください。
ポイントを使ってもらい
「お得感」を感じさせて販売促進に
野嶋 もう一つの側面としては、いかにユーザーにポイントを使わせるかということも大事です。ポイントは実はキャッシュ。ポイントを使わせられないと、ポイントが吸い取られてしまいます。
花上 それは盲点でした。
野嶋 10代、20代の男女は結構締り屋さん。世代の消費傾向を分析して、ポイントを使わせたくなるような工夫をしなければいけませんね。例えば、店販品などはユーザーがポイントを使いやすいものの一つ。「ポイントが貯まったからシャンプーや化粧水を買おう、ポイントで買えてお得だったな」そんな印象を与えやすいのです。
花上 ユーザーにお得感を持ってもらうことが重要ですね。それがあると、リピートや販売促進として有効なように思います。
野嶋 前払い型の金券やクーポンなどを購入した顧客が、その権利を行使しないことを「退蔵益」といいます。換金されていない宝くじもその一つですね。これは企業側の利益になるということで歓迎する向きもありますが、私はあまり賛成しません。ポイントはユーザーの権利なのだから、しっかり行使してほしい。それが本当の販売促進につながるはずです。
花上 そのためにも、ポイントを使ってもらうメニューや店販品などを用意すべきということですね。本日はありがとうございました。
▼この企画について
美容経済新聞では、サロン経営に携わる方に役立つ情報を常にお届けしています。2016年は、論説委員である野嶋朗氏を迎え、今後の市場の変化にいかに対応していくべきか、ヒントを探って参ります。
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