第1期対談第4回 海外客の受入れで“勝ち”サロンになる

2015.06.15

業界展望

admin

売上げアップに向けて、すでにインバウンドへ目を向けている経営者も多いのではないだろうか。海外客を確保し、人口減少時代を生き抜くには、どうすればいいのか。美容経済新聞論説委員 野嶋朗氏に、美容経済新聞編集長 花上哲太郎がインタビューを行った。

中国人観光客はまだ買い“モノ”が中心
今後は買い“体験”が主流に

花上:海外客の取り込み、特に中国人観光客に注目しているサロン経営者は多いでしょう。実際はいかがでしょうか。

野嶋:中国人観光客の購買力に期待されている方は多いと思います。ただ、モノは買ってもサービスにはお金を落としていないというのが現状です。日本も、バブル期にはブランド品などのモノを買うことばかり注意が向けられていました。しかし、今は“こんな体験をしたい”という「体験」を購入したいという人が圧倒的です。中国人観光客の方も、必ずや「体験」にお金を払うという時代が来ると思います。欧米の観光客は、すでに体験型へとシフトしています。

花上:中国人観光客の中でも、富裕層は体験を買いたいという方が多くなっているように思います。

野嶋:スキー場では中国人観光客の姿をたくさん見かけるようになりました。こういう利用客は、旗を持ったガイドのもと団体行動を行うのではなく、横にいながら一緒に行動してくれる専門知識をもったガイドと、少人数で旅をしたいと考えているはずです。今後はこうした旅行が主流になるはずですし、美容サロンはチャンスが巡ってきます。

花上:すでにツアーも組まれていると聞きました。

野嶋:美容ツアーを企画、催行した旅行会社もあるようですね。中東からの観光客も増えています。ハラル認証のレストランも増えていますから、今後は「ハラル認証サロン」も増えてもおかしくありません。

美容サロンの受け入れ態勢は未だ進まず
内需依存ではリスク拡大の恐れも

花上:まずは集客から始めないといけないですね。

野嶋:欧米では『トリップアドバイザー』の利用が盛んです。どこかで誰かが良いコメントを残したら、必ず広まるんですね。美容サロンの口コミも増えれば、ホテルスパだけでなく、もっと地域に根差した店も集客できるようになるはずです。クルーズ船の中などで、サロンのアナウンスが流れるようにしたら面白いと思います。

花上:言語の壁も大きそうです。

野嶋:これは過去に中国人観光客の誘致イベントを行った際のケースなのですが、施術中のやりとりなど、意思疎通はなんとか図れる。しかし、30分前に突然のキャンセルがあったり、来たら施術が終わっても帰らなかったり、予約しても来なかったりと、文化や慣習の違いに戸惑うことが多かったようなのです。常識がないのではなく、教える人がいない。使い方のアナウンスが足りないんですね。ガイドやコンシェルジュ役が求められます。メディアにも期待したいところです。もちろん言葉も喋れる方がいい。

花上:例えば韓国。韓国は人口が少なく、はじめから内需に頼ってはいません。一方で日本はずっと内需依存型でした。

野嶋:家電やドラッグストアなど物販の業界はスタッフの英語力も高く、受け入れ態勢が進んでいるのですが、日本の美容サービスは、グローバル化という点ではまだまだです。しかし人口減少時代にあっては、内需に頼るのはリスクが高いと言わざるをえません。節約志向の高い日本人よりも、たくさんお金を使ってくれる海外客をターゲットにした方が、容易に売上げが立てられるはずです。資金力が豊かな海外客を狙うには、形態が広い方が業界全体として面白味がありますね。

花上:中国の美容サロンでは、日本の専門学校で学び、日本の資格を持っていれば、3倍の給料が貰えるところもあるようです。日本で就労しなくてもいいが、留学したい、という人はたくさんいるのではないでしょうか。こうした留学生の受け入れも進めたいですね。本日はありがとうございました。

 

▼この企画について
美容経済新聞では、サロン経営に携わる方に役立つ情報を常にお届けしています。2015年は、論説委員である野嶋朗氏を迎え、今後の市場の変化にいかに対応していくべきか、ヒントを探って参ります。

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