第1期対談第15回 サロンの「ブランド作り」を徹底する
2016.04.1
admin
サロンのブランド作りというと、内装を整え美しくするという“形”を考える経営者は多いのではないだろうか。サロンのブランドとは、実現すべき価値としてお客さまに約束することだと、美容経済新聞論説委員 野嶋朗氏は指摘する。ブランド作りの大切さについて、美容経済新聞編集長 花上哲太郎がインタビューを行った。
ブランド=高級ではない!
「社会との約束」がブランドである
野嶋 今回は「ブランドをどのように作るか」について、改めてお話いたします。花上さんは「ブランド」について、どうお考えでしょうか。
花上 いわゆる「ブランド品」のような、高級感を連想してしまいます。
野嶋 私はブランドを、「社会との約束」と定義します。“このサロンに行けばこんなことを満たしてくれる、実現してくれる”とお客さまに連想させ、それを叶える約束をすることです。それには、自分のウリや強み、言いたいことが必須です。
花上 “技術のソニー”というようなものですね。ブランドマネジメントというと、ロゴマークや内装など、形から入るケースが多いかもしれません。
野嶋 ブランドに対する解釈が一定ではないということでしょう。例えば、キレイさやかっこよさにこだわるばかりでは、理念やサロンで実現したいことが見えてきません。作り手の自己満足だけでは、お客さまには伝わらないのですね。
花上 読めない店名をつけるお店もある。作り手の目線だけではダメですね。
野嶋 例えば、「低価格」というのもブランドです。“安くキレイになりたいならココ”と思わせるというのは、ブランド戦略として考え抜かれていると思います。他との違いを実現すべき価値として約束し、お客さまもブランドから感じ取れるようにする。これがとても重要です。
花上 経営者としても頷けます。
野嶋 テロの脅威や難民問題など、厳しい世界状況の中で、サロンには「安全で安心できる場」「自分の居場所」が求められていると感じています。エステティックサロンでこれを実現できているところはどれほどあるのでしょう。もう一度、サロンが目指すことを見直してもいい時期だと思うのです。
顧客にインタビューし、組織が大事にしているものが
伝わっているかを確認する
花上 最初の一歩として何をすべきなのでしょうか。
野嶋 おすすめは、まずVIPのお客さまにインタビューをすることです。何度も通って下さる方や、大きなお金を投じて下さる方に、「このサロンに通う理由はなんですか」と尋ねてみてください。すると、お店が大事にしているものが伝わっているか、見えてきます。
花上 それが出てこない場合も……
野嶋 あるかもしれませんが、基本的には何らかの理由があるから通い続けてくれているのです。また、お客さまの答えも、会社がクレドやポリシーとして大事にしているものが「ここが好きなんです」と出てくるもの。大事にしているものがお客さまに伝わると、通い続けてくださるのです。
花上 お客さまにきちんと伝わるようにすることが大事ですね。
野嶋 こちらが意図して伝えていることと、お客さまが感じ取っているものとがズレていないことをまず確かめてください。組織として大事にしているものを、現場が徹底できているか、仕組みとして実現できているか、空気のようにお客さまが感じられるものになっているかを確認してみてください。
花上 単なる知名度で通ってくださるだけではダメですね。お客さまが感じ取っているものこそ企業の価値そのものだと思います。
野嶋 何を大切にし、何がNGなのか。経営者と同じガイドラインを従業員が持っているかということも確かめてください。ガイドラインを言葉にするのは難しいのですが、これを大事にしているサロンは非常に強いのです。
花上 企業コンプライアンスの話と通じるところがありますね。
野嶋 コンプライアンスの考えなくして、形ばかり追求したり、中身がなかったり、一方的だったりしては、お客さまにも見抜かれてしまうと思います。
花上 弊社の名前は「美容経済新聞社」であり、発行しているのは「エステティック通信」。この名前を汚さないようにすることが、会社として目指すべきだと思っています。改めて社内のガイドラインを見直そうと思いました。本日はありがとうございました。
▼この企画について
美容経済新聞では、サロン経営に携わる方に役立つ情報を常にお届けしています。2016年は、論説委員である野嶋朗氏を迎え、今後の市場の変化にいかに対応していくべきか、ヒントを探って参ります。
- 連載記事
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- 第1回 モノが売れない今、売るべきなのは?
- 第2回 “目標を達成して終わり”ではないサロンへ
- 第3回 サロンが「サードプレイス」になる条件
- 第4回 海外客の受入れで“勝ち”サロンになる
- 第5回 競争に残る「仕組み」が強い会社
- 第6回 2018年問題、その時、美容業界に何が?
- 第7回 コンプライアンスを守るーーケーススタディと共に
- 第8回 前受金ビジネスを再考する
- 第9回 新たなマーケットも?イールドマネジメントとは
- 第10回 新時代の担い手たち『ミレニアル世代』とは?
- 第11回 市場開拓の余地あり! “オヤジ”たちに注目せよ
- 第12回 業界全体でレベルアップ! 「共創」の時代とは
- 第13回 「マーケティング4.0」の現在こそ、技術力の見直しを
- 第14回 顧客の「ファン化」にもう一度、注力せよ
- 第15回 サロンの「ブランド作り」を徹底する
- 第16回 自社の「教育」そのものをビジネスにする!
- 第17回 ご贔屓さまによる「クチコミ紹介率=リファーラル率」向上を目指す
- 第18回 顧客の「QOL」に即した商品・サービス提案をせよ
- 第19回 企画とコミュニケーションこそが広告宣伝となる
- 第20回 顧客とつながる3つの「tion」
- 第21回 新卒社員マネジメント考①
- 第22回 新卒社員マネジメント考②
- 第23回 ポイント経済圏とは
- 第24回 人生100年!? 「健康寿命」とキャリアを再考する
- 第25回 モノはもう売れない! お客さまが求めているのは“新たな体験”だ
- 第26回 時間を有意義に使ってスキルアップ!「オンラインサロン」とは
- 第27回 脱「のれん分け」!? 日本版フランチャイズを改革せよ
- 第28回 雇用後のミスマッチをなくす! 会社説明会と入社後フォローアップとは
- 第29回 やみくもに「おもてなし」はもう古い。「当たり前品質」こそ飛躍の鍵だ
- 第30回 人をつなぎとめ、リピートにつなげる「フリンジサービス」って?
- 第31回 ケアメニューの広がりとモチベーションの関係
- 第32回 化粧品の「オーガニック」って何? 誰も言えない“基準”
- 第33回 ゆく年くる年……2017年総括と2018年これから
- 第34回 売り方ひとつでエステティックはもっと変わる!
- 第35回 「コミュニケーション能力」、具体的には?
- 第36回 美容業界、採用の傾向とは?
- 第37回 人手不足の美容業界、考えるべき「人時生産性」とは?