第1期対談第30回 人をつなぎとめ、リピートにつなげる「フリンジサービス」って?

2017.07.1

業界展望

admin

高級店と低価格の店はどこで差がつくのだろうか。それは、居心地の良さなどに代表される「フリンジサービス」であると美容経済新聞論説委員 野嶋朗氏は指摘する。まだまだ課題が多いといえる美容業界の「サロン作り」について、美容経済新聞編集長 花上哲太郎がインタビューを行った。

 「また来たい」と思わせるサロンは「フリンジサービス」が素晴らしい

花上 月刊誌「エステティック通信」、ウェブサイト「美容経済新聞」で取材を行っていると、本当に素晴らしいサロンに出会うことがあります。それはサロンの環境そのものであったり、質の高い接客であったりするのですが、高級店が必ずしも素晴らしいとは限らないのが不思議ですね。

野嶋 そうですね。「コアサービス」と「フリンジサービス」というのをご存知でしょうか。卵に例えると、黄身が「コアサービス」、白身が「フリンジサービス」なのですが、「コアサービス」は基本的なサービス。白身はそれに付随するサービス、付加価値です。「フリンジサービス」にもいろいろあり、接客、場所、ルール、雰囲気の良さなどが挙げられます。高級店ほどこの「フリンジサービス」に力を入れなければいけません。さもないと、低価格のお店との差別化が図れないのです。

花上 確かに、居心地の良さ、気分の良さというのは高級店の売りの一つですね。

野嶋 顧客にとってサードプレイス的なサロンというのは、非常に強いです。人をつなぎとめるのは「コアサービス」ではなく「フリンジサービス」。そして「フリンジサービス」を充実させるにはマネジメントが重要です。

花上 ただ、基本が欠落してしまっているサロンも多いように思います。

野嶋 以前にこの連載でもお話ししましたが、MOT=Moment of Truth「真実の瞬間」を覚えているでしょうか。お店に入った瞬間で約10%の人が「もう来ない」と思っています。一方で「また来たいな」と思わせることもできるのです。

花上 「もう来ない」と思われてしまうサロンは基本が欠落しているサロンですね。一方で人をつなぎとめるのは「フリンジサービス」ということですから、「フリンジサービス」がしっかりしているほど「また来たいな」と思わせるサロンということですね。

居心地の良さに正解なし。常日頃からアンテナを研ぎ澄ませよ

野嶋  「フリンジサービス」が充実しているサロン、居心地の良いサロンを作るには、カフェがヒントになると思います。ご存知、スターバックスコーヒーは、自宅でも職場でもない、第三の場所=サードプレイスを掲げていることで有名ですね。それを実現するために、居心地のいい環境作りを徹底的に追及しています。この居心地良さは「コアサービス」ではあまり差がつかず、かっこよさ、デザイン、ロケーションなどの「フリンジサービス」で生まれてくるのです。

花上 やはり資本力がモノを言うのでしょうか。

野嶋  ところがそうでもないのが面白いところ。昭和生まれと平成生まれでは感覚が違います。例えばここ六本木の居酒屋さんでも、大きくてシャンデリアがキラキラしているところばかりが人気があるわけではないでしょう。狭くても格好良かったり、日本的な情緒を感じられたりするところは、訪日外国客に受けています。こういう居心地の良さは、正解はありません。頭知恵を絞る必要がありますね。

花上 飲食店に学ぶところは多そうですね。

野嶋  また、働く環境を整えるという意味でも、サロン作りは重要です。人間工学的に考え抜かれたサロン、格好いいサロン、デザイン性の高いサロンというのは、スタッフが意欲的に働くモチベーションとなります。建築デザインの視点から評価していくというのは、非常に重要だと思いますね。

花上 常日頃から「いいお店」についてアンテナを張っておく必要がありますね。本日はありがとうございました。

野嶋  ヒューマンエラーの心配もなくなりますし、習得に数年かかっていた技術を機械化することで、サービスを安く提供できます。

花上 弊社で発行している『エステティック通信』は、10月号から編集方針を改定していく予定です。伸び悩んでいるお店に対して、基礎理論や当たり前の技術、ベーシックな部分をもう一度見直してもらおうという企画です。

 

▼この企画について
美容経済新聞では、サロン経営に携わる方に役立つ情報を常にお届けしています。2017年は、論説委員である野嶋朗氏を迎え、今後の市場の変化にいかに対応していくべきか、ヒントを探って参ります。

 

連載記事
執筆者:admin

↑