第1期対談第34回 売り方ひとつでエステティックはもっと変わる!
2018.06.1
admin
エステティックは人々の生活やライフスタイルに密接にかかわるもの。売り方次第でもっと需要は増加する、と美容経済新聞論説委員 野嶋朗氏は指摘する。「上質」「高級」「特別」だけではないエステティックの可能性について、美容経済新聞編集長 花上哲太郎がインタビューを行った。
エステティックに遊びの要素を入れて
顧客の感覚を刺激せよ
野嶋 今回は、私の専門であるヘア業界からヒントを得て、エステティック・美容業界について考えてみたいと思います。花上さんは「ヘアループ」というメニューをご存知ですか?
花上 いいえ、初めて伺いました。
野嶋 ヘアループとは、“新感覚ヘアエクステ”と言われたりもしますが、形状記憶の人工毛を使う技術です。近年この技術が非常に高くなってきており、増毛したい方にとても人気があります。美容室の新たなメニューとして広まりつつあるんですね。
花上 なるほど。
野嶋 美容室の定番メニューとしては、カット、パーマなどの「デザイン」系と、ヘッドスパやヘアマニュキュアなどの「ケア」系に大まかには分かれますが、最近はケア系のメニューへのニーズが高まっているし、また増やすべきだという話はこれまでもしてきました。ケア系のメニューを充実させると、顧客への提案の幅も広がります。
花上 よく理解できます。
野嶋 それでは、すべて「ケア系」ともいえるエステティックの場合はどうしたらいいでしょうか。私は「ボディメンテナンス」という領域をもっと充実させてメニューを増やし、売上げを高めるべきではないかと思っています。
花上 具体的にはどうすればいいでしょうか。
野嶋 一例ですが、“遊び感覚”“ゲーム感覚”のエステティックというのは考えられるかもしれません。『ライザップ』がこれだけ成功しているのにはたくさんの要因がありますが、一つは“遊び感覚”で減量・ダイエットを楽しむことができる、というのもあると思います。
花上 確かに、革新的な手法ですよね。
野嶋 もともと「スポーツ」という言葉には、“競い合い”や“勝負”という意味が大きいんです。「スポーツ」を“体育”と捉えているのは日本人的な感覚。近年は「eスポーツ(エレクトロニック・スポーツ)」が盛んになってきていて、将来的にはオリンピックの種目の一つになる可能性もあります。「eスポーツ」がオリンピックの種目になるかどうか、議論が成立するのは“競い合い”だからなんです。
花上 それは考えてみませんでした。
野嶋 エステティックも、何かオリジナルの技術やアプリなどを使って痩せたり、キレイになったり、という、遊びの感覚を刺激するような工夫があればいいのでは、と思っています。
回転ずしが大人気になったように
エステティックも売り方を見直すべき
花上 楽しみながら健康になり、結果的にダイエットに繋がるのはいいですね!
野嶋 要は、これまでどおりのことを淡々とやっているだけでは厳しいということです。エステティックは人間の生き方、ライフスタイルに密接に関わってくるものであり、売り方を工夫するだけで、もっともっと大きな需要が見込めるのではないでしょうか。
花上 回転ずしは成功例の一つですね。生産性を比較すると、職人的な技術で食べさせるカウンターの寿司店がエステティックに当たると思います。一方で、顧客自身に調理させられるほどシステマチックな方法が確立しているのが焼き肉。これは脱毛に当たります。つまり、エステティックは回転ずしにならないといけないのではないでしょうか。
野嶋 その通りですね。
花上 売り方を工夫すること、生産性の改革をすることの重要性は、これまでの連載で何度もご説明いただいています。
野嶋 アスクルがシェア率No.1になったのは、物流システムを変革したからです。Amazonもそうですよね。
花上 ただ顧客を待っているのではなく、顧客に届けるという改革をした。
野嶋 シェイプボクシングをやる「エンジョイダイエット」はすでに人気ですよね。ダイエットはいくらでもゲーム感覚を盛り込めますし、美容だって同様なはず。エステティックは「上質」「高級」「特別」を打ち出すのではなく、もっと売り方を見直すべきだと思います。
花上 商売において保守的であることは、リスクもありますからね。本日はありがとうございました。
▼この企画について
美容経済新聞では、サロン経営に携わる方に役立つ情報を常にお届けしています。2018年は、論説委員である野嶋朗氏を迎え、今後の市場の変化にいかに対応していくべきか、ヒントを探って参ります。
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