第1期対談第27回 脱「のれん分け」!? 日本版フランチャイズを改革せよ

2017.04.1

業界展望

admin

日本版のフランチャイズは「のれん分け」が主流。しかしこれでは、いずれ破綻してしまう要因が多いと美容経済新聞論説委員 野嶋朗氏は指摘する。何をどのように変えるべきなのか、そして美容業界はどうすべきなのか、美容経済新聞編集長 花上哲太郎がインタビューを行った。

 日本のFC制度は
「のれん分け」が主流

野嶋 今日は日本のフランチャイズチェーンについて考えてみましょう。今の日本にあるFC制度は、外食企業にしろコンビニエンスストアにしろ、アメリカ的なものにルーツがあります。これの特徴は、社内教育をしっかりしているということ。徹底的に統一された基準を持ち、看板を掲げているものです

花上 確かに、マクドナルドの「ハンバーガー大学」などは有名ですよね。

野嶋 それに対して日本はどうでしょう。FC制度というよりも、「のれん分け」が主流なのではないでしょうか。「のれん分け」とは、看板料はもらうけれども経営権は与えるというシステム。のれん分け、そして仕入れを共同で行うボランタリーチェーン、これを「フランチャイズ」と呼んでいることが多いように思います。

花上 こちらの方が日本の風土に合っているのかもしれませんね。

野嶋 そういう一面はあります。ただ、「のれん分け」というのは師弟関係がいつまでも続き、対等ではない傾向が強くなるんです。最大の問題点は、企業の成長カーブに、人の成長、人材の補充が上回っていないということ。ここにギャップができてシステムが破綻してしまうのです。美容業界ではとてもよくある現象だと思います。

花上 FC制度の成功というのは、人材教育と均一化した品質。飲食業界では同じ味が実現できますが、美容業界はどうでしょうか。属人的なおもてなしがメインですから、サービスを均一化するのは難しいのではないでしょうか。

野嶋 難しいですが、例えば『QBハウス』は成功していますね。『QBハウス』はハードウェアが優れていると思われがちですが、本当に優れているのは教育。新人を即戦力にするための教育が整えられているのです。対して、美容業界はどうでしょうか。

花上 脱毛専門サロンは、多店舗化に成功しているところがありますよね。

野嶋 脱毛専門サロンは、例えて言えば回転寿し。機械のクオリティが安定しているから、サービスも安定するのです。それに対して、エステティックサロンは寿司職人。多店舗化が難しい面は確かにあります。

花上 ただ、それでも品質とサービスを均一化しないと多店舗化は難しい。

野嶋 人工知能やロボットをどう活用するか、問われる時代がきっと訪れるのではないかと思っています。現在でも、機械やモノに肩代わりさせることができるサービスは多くありますしね。

教育システムを整え、AIも活用し、
人材を即戦力に

花上 話は少し戻りますが、「のれん分け」が破綻しやすいのはなぜなのでしょうか。

野嶋  ある程度の規模で店舗展開をしようとすると、採用と教育システムにかなり力を注がないと、組織の成長と人の成長との曲線が合わないのです。規模が大きくなりすぎると、組織のガバナンスがとれない。離職率も高くなります。

花上 外食企業でも問題になりましたが、人材の質と量が低下すると、いまいる人材の労働時間が多くなり、組織として破綻してしまうということでしょうか。

野嶋  その通り。飲食業界は問題が表面化しやすいのです。そこで、別ブランドでリスタートし、リサイズすることが多いですね。

花上 ただ、美容業界はそのリスタートがしづらい。また飲食業界とは異なり、パートやアルバイトが入りづらいということもあります。美容業界は他のどの業界をお手本にすればいいのでしょうか。

野嶋  前にもお話ししましたが、今は小・中・高の教育システムが変わっています。暗記・詰め込みの教育から、「調べて活用する」「作り出す」スマート教育になっているのです。これは美容業界の教育システムにも確実に影響を与えると思います。例えば、昔の教育は年号を覚えさせたものですが、今では年号は検索すれば一瞬で出てくる。覚えることよりも考えることに力を入れることができる環境が整っているのですから、美容業界でも人工知能などに任せるところは任せて、より大事なことに注力していくべきではないでしょうか。

花上 スタッフのいいところをどんどん伸ばして、即戦力にしたいものですよね。本日はありがとうございました。

 

▼この企画について
美容経済新聞では、サロン経営に携わる方に役立つ情報を常にお届けしています。2017年は、論説委員である野嶋朗氏を迎え、今後の市場の変化にいかに対応していくべきか、ヒントを探って参ります。

 

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