第1期対談第32回 化粧品の「オーガニック」って何? 誰も言えない“基準”

2017.09.1

業界展望

admin

化粧品分野で「オーガニック」を謳う製品は多く、それに対するニーズも増加する一方。だが、「オーガニック化粧品」の明確な基準はない、と美容経済新聞論説委員 野嶋朗氏は指摘する。アジアの美容を牽引する日本が、「オーガニック」について曖昧なままでいいのか、美容経済新聞編集長 花上哲太郎がインタビューを行った。

日本独自の基準がない「オーガニック」化粧品
そもそも「オーガニック」はなんだろう

野嶋 オーガニック化粧品がブームになって久しいですが、天然由来ではない成分が含まれていると、製品の自主回収をしたメーカーもあります。花上社長は、そもそも「オーガニック」は何であるかと言葉で説明できるでしょうか?

花上 難しいかもしれません。確か、食品には規定があったと思いますが。

野嶋 農水省が検査・認証制度を行っています。ところが、シャンプーやコンディショナーを含む化粧品については、明確な基準がないんですね。そのため、オーガニック成分を少し入れただけで「オーガニック」と謳っている化粧品もあります。

花上 ちなみに、「オーガニック」「ボタニカル」は違うのでしょうか?

野嶋 「オーガニック」は、比較的上の世代が使っている印象ですね。それに比べて「ボタニカル」はファッションの文脈で使われているように思います。

花上 私には「オーガニック」もファッションの一分野のように感じてしまいます。

野嶋 それは鋭い指摘かもしれません。今の世の中は「安心・安全」「健康志向」ですから、「オーガニック」とラベルに貼るだけで、『きっと健康にいいのだろう』という印象を与えられるはず、と、メーカーはこぞって「オーガニック」を謳います。ところが、明確な基準がないのですね。だから、日本の「オーガニック」は、ブーム・ファッションに過ぎないと言われても仕方ないかもしれません。

花上 海外ではいかがでしょうか。

野嶋 ヨーロッパでは「NaTrue(EU)」「BDIH(ドイツ)」「ECOCERT(フランス)」「Soil Association(イギリス)」など、複数の機関で認証を行っていますし、それぞれに権威なり影響力があります。

花上 化粧品には、日本独自の基準で「オーガニック」はないですが、これらの機関で認証を受けていますと表示して販売している化粧品はありますね。

野嶋 基準をきちんと設けず、曖昧な部分を残しておく、というのは、何かとても日本的ですよね。

花上 昔より自然派志向の人が増えていますから、そのぶん消費者が賢く選ばなければなりません。ただ化粧品業界に関して言うと、曖昧な部分を残しているのは「オーガニック」だけではないかもしれませんね。

「ジャパンプライド」を揺るぎないものにするために
明確な基準を設けるべき

野嶋  化粧品は全成分が表示義務にありますが、一般の人も、それぞれの成分がどういった働きをするのか、安全なものなのか、気を配らないといけませんね。虚偽に対してNOを突きつけ、メーカーは品質や安全を追求し、決められたものを守るべきである、嘘のないようにすべきである、という消費者からの圧力は、まだ日本の社会に働いていると思います。

花上 日本は小ロット高品質であり、品質に対するプライドがあるはず。「この程度では許さない」というような気質みたいなのは、消費者も持っているかもしれませんね。

野嶋  国民性もあるかもしれませんし、高品質であることで海外への訴求力も生まれます。

花上 ジャパンプライドというブランド力ですね。

野嶋 オーガニックの話に戻すと、そうした国が化粧品の分野でも「オーガニック」を曖昧にしておいていいのか、という疑問が生まれるわけです。アジアで美容業界をリードしている国として、アジア人に馴染む「オーガニック」基準を持つことは、戦略としても必要でしょう。

花上 ぜひ代表的なメーカーに声をあげてほしいですね。本日はありがとうございました。

 

▼この企画について
美容経済新聞では、サロン経営に携わる方に役立つ情報を常にお届けしています。2017年は、論説委員である野嶋朗氏を迎え、今後の市場の変化にいかに対応していくべきか、ヒントを探って参ります。

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