第1期対談第31回 ケアメニューの広がりとモチベーションの関係
2017.08.1
admin
ヘアやネイル業界において、ケアメニューの伸びしろはとても大きいというのはこれまで本連載で指摘されてきた。しかし、美容師やネイリストはケアメニューに熱心ではないと美容経済新聞論説委員 野嶋朗氏は指摘する。美容業界の難問であるモチベーションマネジメントにどう取り組むべきなのか、美容経済新聞編集長 花上哲太郎がインタビューを行った。
ケアメニュー需要の伸びに比べて
現場の人気は高くない
野嶋 今日は、美容業界のモチベーションマネジメントの話から始めましょう。この連載では、ヘアにしろネイルにしろ、ケアメニューが伸びしろがあるし、今後残っていくものだというのは話しました。
花上 覚えています。
野嶋 ケアメニューというのはメリットが大きくて、粧材が売りやすいうえにリピートされやすい、つまり「お金がとれる」ものなのです。ですが、あまり力を入れていないサロンが多い。なぜかというと、美容師やネイリストというのはデザインをやりたくて業界に入ってくる人が多いので、ケアというのは“面白くない”と思ってしまうものなのです。
花上 なるほど、ケアメニューというのはデザインに比べて地味だし、「インスタ映え」しないから、実績が絵として残りにくいですよね。
野嶋 ヘアデザイナーはメイクアップに憧れる人も多いですし、美容師の一部はまつげエクステに転向する人もいる。美容師をケア領域に進ませるのは簡単なことではないのです。
花上 よくわかります。ただ、エステティックはケアメニューですよね。
野嶋 エステティック業界における、エステティシャンのモチベーションというのは、ヘアやネイルの方にとってとても参考になるものだと思うのです。例えば、「エステティックグランプリ」もありますし、「感動」という言葉も頻繁に使われる。モチベーション管理が上手くいっている例だと思います。
花上 ゲーム業界も同じような悩みを抱えていると思います。ゲームプログラマーが人気で、制御系や運営系はあまり人気がない。
野嶋 基本的に人材が不足していますから、組織が必要としている部分に人を集めて組織を組み立てていくのが難しいですよね。
美容業界「無人化」の危機?
モチベーション管理の難しさ
花上 人材集めに成功した例はあるのでしょうか。
野嶋 時代性やファッション性を売りにして成功した例はいくらでもあります。このご時世に、入社の競争も激しく面接に整理券が配布される店もあります。
花上 でも実際のマーケットでは、ケアメニューへの需要は高まっているわけですよね。
野嶋 特に地方ではその傾向が顕著です。その点、「人の役に立ちたい」「貢献したい」という人は、エステティックの方に進む傾向が高いと思います。
花上 エステティックは社会的な意義を打ち出しやすいというのもありますね。
野嶋 今回のお話の中では簡単に解決策を提示することはできません。美容業界おいてのモチベーションマネジメントは難しい領域だと思います。ただ、これに真剣に取り組むのか「人を使わない」ビジネスモデルを進めるのか。その岐路に立っている領域がいくつかあるように思います。
花上 無人化するということでしょうか。
野嶋 そうですね。全て機械に任せてしまうことはないですよね。ただしお金周り、顧客管理、集客などの領域は合理的な仕組みが多く導入されていますよね。
花上 人が資本の美容業界にとってそれは衰退を意味していると思います。危機感をもってモチベーションマネジメントに取り組むべきですね。今日はありがとうございました。
▼この企画について
美容経済新聞では、サロン経営に携わる方に役立つ情報を常にお届けしています。2017年は、論説委員である野嶋朗氏を迎え、今後の市場の変化にいかに対応していくべきか、ヒントを探って参ります。
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