第1期対談第28回 雇用後のミスマッチをなくす! 会社説明会と入社後フォローアップとは

2017.05.1

業界展望

admin

エステティックサロン、ヘアサロンともに美容業界は離職率が高いというのはこれまでの連載で指摘してきたことだが、不幸な結果を招いてしまう一因に、入社後のフォローアップの少なさがあると美容経済新聞論説委員 野嶋朗氏は指摘する。効果的なフォローアップ、特に面談の手法と、採用の際の会社説明会のポイントについて美容経済新聞編集長 花上哲太郎がインタビューを行った。

 面談のポイントはとにかく「聞く」こと
スタッフの「WILL」「CAN」「MUST」を聞き出そう

野嶋 今日は経営者の視点から、社員やスタッフのフォローアップについて考えてみましょう。花上社長はどのような工夫をされていらっしゃいますか?

花上 弊社では毎月1回全社員に対して面談を行っています。

野嶋 とてもいいことですよね。面談さえできていない会社やサロン(エステティックサロン、ヘアサロン)はとても多いもの。面談ができないと離職率も高くなってしまいます。また、メンターもいなければブラザー制度もないという会社もある。これではスタッフが辞めてしまっても仕方ありません。

花上 面談の時には質問シートのようなものは用意すべきでしょうか。

野嶋 質問シートはあってもなくてもいいです。肝心なのは、社員やスタッフの話を聞くこと。聞いているつもりで、実は自分が喋っているという経営者は多いのです。

花上 それはとても気をつけているところですね。

野嶋 面談を設けてスタッフの話を聞くつもりでも、結局上から「こうしてくれ」というお説教で終わるケースもあるんです。耳を傾ける、傾聴するという姿勢が大事です。すると半年、1年後の離職率が変わってきます。

花上 面談の理想的な頻度を教えてください。

野嶋 理想はクオーター(四半期)で、マンツーマンがいいと思います。ただ、これは制度上の話。スタッフの様子がおかしいなと感じたら、適宜実施してほしいですね。

花上 面談の際に聞くべきことは何でしょうか。

野嶋 「WILL」「CAN」「MUST」が基本です。「WILL」はその人の意思、「CAN」は何ができるようになったか、「MUST」は、仕事としてこれをやるべきという事項を再確認することです。特に「MUST」は大事。見当違いなことをやろうとしているスタッフがとっても多いからなのですね。

花上 よくわかります。

野嶋 「MUST」を話し合うと、スタッフは自分のやるべきことがとてもよくわかるようになります。ちなみに「WILL」は、働こうとした原点、モチベーション、そして日々やりたいと感じていることを確認してください。「CAN」はできないことを明確にして、できるようになったことを聞いてほしいです。繰り返しになりますが、単に褒めるのではなく“聞く”ことが大事ですね。

花上 話を聞いたうえで、会社としてのメッセージも伝えたいものです。

野嶋 入社3か月ぐらいからはミッションマネジメントをすることをお勧めします。これは専用のシートを作った方がいいですね。書く事柄が多いとスタッフも疲れてしまうのですが、シートを書いた方がお互いの認識にズレがないと思います。

花上 入社時点では経営陣とスタッフの間にズレはないのですが、だんだん別の方向を向いてしまうもの。適宜軌道修正をしたほうがいいですね。

会社説明会で語るのは福利厚生ではない
会社として描いている夢である

花上 今日はお聞きしたいことがたくさんあります。美容業界において、来年の採用に向けて気をつけるべきことを教えてください。

野嶋  学生さんへのプレゼンテーションがまだまだだなと感じる企業が多いですね。会社説明会となると制度や福利厚生の話って、学生さんは本当に聞きたいものなのでしょうか。もちろん説明は必要でしょうが、むしろ、「会社としてこんなことをしたい」というビジョンや描いている物語の方がお互いに重要なはず。就職は学生さんにとって大きな岐路なのですから、とっても不安な状態にあるはずです。パンフレットやiPadでもなんでもいい、会社として実現したいことをぜひ話してあげてほしいですね。

花上 人気のある企業は「この会社に入ったらこんなことができて楽しそう」という学生さんのワクワク感を上手く引き出している感じがします。

野嶋  その通り。「この会社なら面白いかもしれない」と思わせるには、具体例があればなお良いでしょう。

花上 採用の際も入社後も、いかにスタッフと経営陣が同じ方向を向いて頑張れるか。お互いに不幸な結果にならないように、いろんな工夫を凝らすことが大事ですね。本日はありがとうございました。

 

▼この企画について
美容経済新聞では、サロン経営に携わる方に役立つ情報を常にお届けしています。2017年は、論説委員である野嶋朗氏を迎え、今後の市場の変化にいかに対応していくべきか、ヒントを探って参ります。

連載記事
執筆者:admin

↑