第1期対談第16回 自社の「教育」そのものをビジネスにする!

2016.05.1

業界展望

admin

きわめて労働集約的な事業である美容業。ビジネスを発展させるためには教育制度を整える必要があるというのは、これまでも何度かふれてきた。さらに、その教育そのものがビジネスになる可能性があると美容経済新聞論説委員 野嶋朗氏は言う。新たな事業軸の作り方について、美容経済新聞編集長 花上哲太郎がインタビューを行った。

技を“見える化”して
自社の教育そのものをビジネスにする

野嶋 今回はサロンのコンテンツビジネスについてお話いたします。

花上 コンテンツビジネスとは、サービスや情報など形のないものを売るというビジネスのことですね。エステティックサロン、ヘアサロンはどちらも当てはまります。

野嶋 サロンには4つのコンテンツがあると思います。(1)技術(2)商品(3)体験価値(4)独自性のあるメニュー。そしてこのうち、(4)のメニューに課題があると思っています。例えば、フェイシャルメニューはどのサロンもそれほど変わりはありません。どこをどのようにこだわってコンテンツ化するのか、これが今、問題だと思っています。

花上 確かに、独自性のあるフェイシャルメニューはなかなか見ないですね。

野嶋 技(わざ)とはユニークネスのこと。これまで何度かお話してきましたが、暗黙値を形式化する、“なんとなく”を見える形にするというのは非常に大事で、これが勝てる要因になります。

花上 エステティックサロンは少し弱い部分ですね。

野嶋 ビジネスとしてなかなか広がりができないサロンは、何が自分たちの武器なのか、強みなのかが理解できず、言葉にできないサロンが多いと思っております。一方で、「経験」「勘」「暗黙値」といったものを「型」にすると、ビジネスとして大きく飛躍します。ベテランの技を「見える化」すると、新人でも真似できるようになるからです。現在大手と言われている企業は、これができています。そしてここからが重要なのですが、技を型にできている会社は、自社の教育そのものをビジネスにできるのです。これがさらなる飛躍へのフックになります。

花上 教育をビジネスにするというのはどういうことでしょうか。

野嶋 わかりやすく言えば、昔からある「家元」制ですね。ある種の階段を作り、初心者が上級者になるまで、ステップアップできるようにする。自分たちの技を体系化し、上級者までの道のりをクリアーにすると、教育が学校になるのです。

花上 なるほど、アカデミーを開いている会社はいくつかありますね。

野嶋 教育ビジネスこそがこれからの成長ビジネスだと思っています。海外展開を考える際も、出店ではなく学校を開く方が現実的ではないでしょうか。インターネットとスマートフォンの普及とアプリの一般化で、現代は机と椅子を用意した学校がいらない時代ですから、講師を派遣してウェブで授業を配信することができる。コストもそれほどかかりません。

花上 なるほど、出店といっても採用は簡単ではありません。採用できても、教育ができなければそれなりのお店になってしまう。

野嶋 エステティックサロンの今後の成長を考えた時に、教育は大きな強みになるのです。型、見える化、マニュアル化、形式値化することで、誰もがベテランの技を習得できるようになる。この、“誰もができる”というのが生き残りの秘訣です。

ビジネスの発展を考えるならば
教育の見直しは不可欠

花上 教育がビジネスになるというのは、非常にインパクトのある考え方です。

野嶋 大手企業はすでに始めていると思いますが、今後は中小企業・サロンも挑戦すべきですね。教育が事業の新しい軸になるとキャッシュになりますし、業務の効率化が図れますから、フランチャイズ展開も視野に入ります。また、メソッドや技術を本やテキストにまとめて販売することもできますね。美容業はこれまできわめて労働集約的な業界でしたが、教育を一つのパッケージとすることで、新たなビジネスにすることができるのです。

花上 製造業ではすでに一般的ですね。トヨタ生産方式など、海外の工場においても人を育てることができ、非常に効率的な業務が実現できている。

野嶋 サービス業、特に美容業の現場では非常に大事になってきています。ホテルもかなりマニュアル化されてきていますね。

花上 一方で、非常に個性的な、カリスマ性のあるエステティシャンが率いているサロンもあります。

野嶋 それはそれでいいのです。ただ、規模を大きくしようとすると、そのエステティシャンが何をもってカリスマなのか、その技を他のスタッフも真似できるようにしなければなりません。その時に教育が大切になるのです。そしてこの教育体制は、そのままビジネスになるということですね。

花上 美容業界はぜひともチャレンジすべき時だと思います。本日はありがとうございました。

 

▼この企画について
美容経済新聞では、サロン経営に携わる方に役立つ情報を常にお届けしています。2016年は、論説委員である野嶋朗氏を迎え、今後の市場の変化にいかに対応していくべきか、ヒントを探って参ります。

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