第1期対談第12回 業界全体でレベルアップ! 「共創」の時代とは

2016.01.1

業界展望

編集部

接客や接遇、技術を競うコンテストが盛んな今日。自社の売上げばかりを重視していた時代は、すでに終わりを告げようとしている。「競争」ではなく「共創」で、業界そのものの向上を目指す動きが広がっていると美容経済新聞論説委員 野嶋朗氏は指摘する。具体的にどのようなメリットがあるのか、美容経済新聞編集長 花上哲太郎がインタビューを行った。

「競争」よりも「共創」で
業界のレベルアップを目指す

花上 いま全国で、接客や接遇、技術を競うコンテストが盛んです。

野嶋 美容・サービス業でいうと、「エステティックグランプリ」や「リラクゼーションコンテストJAPAN」が代表的ですね。審査のポイントはいくつかあり、ひとつは、電話対応も含め、入店から見送りまで、規定の時間内でどのようにお客に対応するかという点。もうひとつは、お店が接客や技術面において良い方向にどう変わってきたかというところ。こうした観点から顧客対応力を競い合おうという顧客満足度の競技会です。

花上 美容業界に限らず、百貨店、外食、自動車販売などにも広まっています。

野嶋 「売場の力を高めていこう」という取り組みは、働く方々のモチベーション向上にもつながります。競合同士で手の内をさらすことにはなりますが、教育面や次世代の業界のことを考えると、ナレッジをオープンにするのは大きなプラスです。

花上 なぜこのような傾向なのでしょうか。

野嶋 業界全体でサービスレベルの底上げをしたいのです。この対談でも何度かキーワードに出てきましたが、「競争」ではなく「共創」だというのが今の雰囲気。共に努力し、マーケット全体を伸ばしていこうという考え方なのではないでしょうか。

花上 自分の会社の利益だけを優先する考えは、すでに古いのかもしれません。業界を問わず、社会問題の解決をスローガンに掲げている企業が多くなってきました。

野嶋 特にエステティック業界でいうと、まだ残る負のイメージを払拭したいというのがあるかもしれません。健全なビジネスを行い優れたサービスを提供するのはもちろん、女性の働く場として魅力的なのだとアピールすることは、採用面でもプラスです。

花上 10年、20年先の業界のことを考えると、「お互いに頑張ろう」と切磋琢磨することは本当に喜ばしい、いい風潮だと思います。

チーム力を高め
強い組織の基盤を作る

野嶋 こうしたコンテストは、単に賞を獲得するだけがメリットではありません。出場・審査に向けて、1日1日と努力を積み重ねていく。その継続が確かな力になっていくと思います。定期的な勉強会や研修会を開いているお店も多いと思いますが、現場の取組みそのものに意味があります。

花上 他店からの刺激も大きいですね。

野嶋 「頑張れ、頑張れ」という精神論だけでは改善点が見えません。顧客調査から改善ポイントの優先度が可視化されロジカルに分析しチェックできるようになってきています。スタッフ全員が方法論を共有できますし、コンテストなどの場でも実績としてアピールできる。とてもいい傾向だと思います。

野嶋 1人の絶対的エースがいて、その人がチームをまとめあげて引っ張っていくというやり方もあります。しかしエースの仕事は、他の多くのスタッフが真似できるというものでは必ずしもない。一方で組織全体で闘うチカラを高めていくことはどんな店であっても出来ることです。。

花上 どのような組織でも同じですね。

野嶋 そうですね。ハイパフォーマーに依存すると組織作りも難しくなりますし、不安定ですよね。いなくなってしまうと一気にしわ寄せがきてしまい、残った人も疲弊します。チーム力を高めるためのマネジメントへのシフト、ナレッジ化を進めないと息の長い仕事を続けていくのは難しい。美容業界ではチームで成果をあげる、戦力を整えるための点検をコンテストを通して行うことでチームで成果を上げる良い機会になっていると思います。

花上 地道な取組みはじわじわと、確実に功を奏すると思います。さまざまな業界でこうした動きが広がるといいですね。本日はありがとうございました。

 

▼この企画について
美容経済新聞では、サロン経営に携わる方に役立つ情報を常にお届けしています。2016年は、論説委員である野嶋朗氏を迎え、今後の市場の変化にいかに対応していくべきか、ヒントを探って参ります。

 

連載記事
執筆者:編集部

↑