アルツハイマー病協会国際会議2021年レポート
2021.08.12
国際部
アルツハイマー病協会国際会議(AAIC)が米コロラド州のデンバーで7月末に開催され、2021年の研究結果がこのほど発表された。これによると、新型コロナウィルス(COVID-19)感染症の拡大が、長期的な認知機能障害とアルツハイマー病の病理、症状の加速に関連していることを示唆する発表などが議論された。
パンデミックが始まって以来、新型コロナウイルスを引き起こすウイルスSARS-CoV-2について多くのことが分かってきたが、同ウイルスが人間の体や脳に及ぼす長期的な影響については、まだ分からないことがある。AAICでギリシャとアルゼンチンから発表された新たなデータは、高齢者はSARS-CoV-2の感染から回復後も、持続的な嗅覚の喪失をはじめとする長期的な認知障害に悩まされることが多いことが明らかにされた。
アルツハイマー病協会の医学・科学関係担当バイスプレジデント、Heather M. Snyder博士は「これらの新しいデータは、COVID-19感染が持続的な認知障害、さらにはアルツハイマー病の症状につながるという憂慮すべき傾向を示している。世界中で1億9千万人以上の感染者と400万人を超える死者を出したCOVID-19は、全世界に壊滅的な打撃を与えた。このウイルスがわれわれの体と脳にどのような影響を与えているのか、研究を続けていく必要がある」と述べている。AAIC 2021で発表された、その他の新たなデータは以下の通り。
アルツハイマー病協会国際会議2021年のハイライト
◾大気質の改善は認知症リスクを低減する可能性がある。
◾世界の認知症患者は2050年までに3倍近い1億5200万人以上になると予測。
◾米国のトランスジェンダーやノンバイナリージェンダーの成人は、シスジェンダーの人より記憶力や思考力の低下、機能的制約、抑うつ症を訴える傾向が強い。
◾有色人種コミュニティーは歴史的に認知症研究への参加が少なかったが、誘われたり、研究目標に貢献したいと思ったり、認知症の家族がいる場合には、参加に意欲的。
軽度認知障害(MCI)や軽度アルツハイマー病用の治療薬アデュカヌマブ(Aduhelm、バイオジェン/エーザイ)を米食品医薬品局(FDA)が迅速承認したことで、アルツハイマー病や認知症の治療パイプライン内のそれ以外の治療法にも新たなエネルギーと関心が集まっている。今回の国際会議では、最先端の抗アミロイド治験薬であるドナネマブ(イーライリリー)やレカネマブ(バイオジェン/エーザイ)の新たなデータと分析に加え、抗タウ戦略、抗炎症標的、神経保護、再生医療など様々なアプローチが発表された。