呉先生に聞く、台湾で注目の中医美容とは
2015.08.6
編集部
美容への関心は、日本と親しい台湾でも高い。台湾では今、中国の伝統医学である中医学(漢方)をベースにした「中医美容」が注目されている。その施術方法は、中薬(生薬)、薬膳、鍼灸、推拿(すいな)マッサージ、気功など様々。では具体的に「中医美容」とはどんなものなのか?
台湾のTV、雑誌、新聞などに頻繁に取り上げられ、“美人中医師”として知られる中医師、呉明珠先生に話をうかがった。
呉先生は、台北医学大学を卒業後、台湾の中医師免許を取得し、中国の北京中医薬大学で中医博士号を取得した。もともと祖父と父親が中医薬の仕事に携わっているという家庭環境だったため、中薬や鍼灸の治療効果を身をもって経験、そのすばらしさに感銘して中医の世界に入った。
呉先生によると、中医美容には大きく分けて3つの施術方法がある。1つは中薬を内服する方法。「美容に効果的な処方を用いて、皮膚のきめを細かくしたり、しわを予防するとともに、皮膚病も治療できる」(呉先生)。具体的には“補血、養陰”に重点を置いて肺、腎、脾を補益。よく使う中薬として、人参、黄精、クコの実、絞股藍、銀杏葉、大棗、覆盆子、当帰、何首烏、玉竹、黒芝麻、霊芝、刺五加、蜂花粉、阿膠などがあり、いずれも臓腑を整えることで、気血を顔面にめぐらせることができる。
しみ、ニキビ、皮疹などに対しては、“補血、養陰”に“活血袪瘀、袪風散寒、清熱解毒、消腫散結”などの治則を加えて、珍珠、陳皮、桃仁、防風、桃花、猪胰、辛夷、白芷、白附子、白芨、白鮮皮を使って治療する。
施術法の2つ目は外用。粉末、液体、軟膏、パックなど各種剤型があり、必要な部位に塗る。皮膚に吸収されることで、「経絡を通じさせて皮膚や肌を潤し、汚れを取り去り、美白やしわ予防を実現できる。“活血潤膚”の中薬をメインに使う」(呉先生)といい、珍珠、田七、益母草、蘆薈、白芷、白芨、杏仁、人参などを挙げた。
3つ目は鍼灸。経穴を刺激して臓腑の機能を整え、気血の運行を促して、外邪の進入を防ぎ、皮膚の老化を遅らせる。「一般的に顔面に有益な経絡は、膀胱経、腎経、肝経、胃経、三焦経、小腸経、大腸経の7つあるが、患者の状況に合わせて弁証して刺激する経穴を選ぶ」(呉先生)。
また、“益気和血”(気血を補う)を助けて皮膚の弾力性を増す施術として、絲竹空、攢竹、太陽、迎香、頬車、翳風などと、中脘、合谷、曲池、足三里、胃兪、関元、漏谷などを組み合わせる方法がある。
呉先生によると、「台湾の中医美容は、中医学理論をベースにした“治療型美容”と“健康維持型美容”があり、いずれも弁証論治を用いる。また、美を損なう疾病に対しては、“審証求因、審因論治”を行ない、内外からアプローチすることで身体の中の健康を維持し、これによって外側の美を実現する」。
台湾では、中医美容は伝統的な中医学のメリットを活かしつつ、現代人の求めるスピード・簡易化に応えていかなければならないという。「(症状に対する)ピンポイント治療を強化して、その効果を出していくことが必要。そのため、中医と融合した“医療美容”(医美)という新しい領域が発展している」(呉先生)。
その1つが、顔面の経絡に対して「埋線鍼」を用いる方法。海外から導入した特殊な技術で、糸を皮下組織に残すことで皮膚のリフトアップ効果を図るもの。もう1つは「刺療法」と呼ばれる施術方法で、表皮の基底層を刺激することでコラーゲンを生成。また顔面の血流も促進し、気血の循環を良くする。顔の血色が改善され、しわが平坦になり、瘢痕(はんこん)が薄れ、目袋が消えるなどの効果が期待できるという。
台湾には様々な中医美容に関する施術があるが、まだ発展段階にあるのが実情。目下、ダイエットや顔面の皮膚に対して施すケースが多いようだ。
それでは、日常生活の中で実践できる簡便な中医美容としては、どんなものがあるのか。呉先生が教えくれたのは「薏苡仁百合粥」「核桃豆漿」「海帯緑豆湯」の3薬膳。「薏苡仁百合粥」は、はと麦(薏苡仁)30g、百合根10g、白米60gを一緒にお粥にして食べる。顔面のイボ、暗瘡(あんそう)、そばかすなどに良い。
「核桃豆漿」は、くるみ30gと黒ゴマ20gを粉にして、牛乳と豆漿各200mlに混ぜて温め、少し砂糖を入れ、朝晩と分けて飲む。皮膚のきめを良くして、顔につやが出る。「海帯緑豆湯」は、コンブ10g、緑豆30g、甜杏仁9g、バラの花6g、砂糖適量を一緒に煮出して飲む。暗瘡が再発する人に向いている。
呉先生は、「美容は身体の内外から一緒にアプローチすることで、本当の美と健康、若さを実現できる」と話す。上記に紹介した薬膳は、日本でも手に入る食材なので、ぜひ一度試してみては。
- 参考リンク
- 呉明珠中医クリニック