減量手術は腸内微生物の構成を大きく変える
2017.05.31
国際部
肥満手術の中でも効果が大きいとされるルーワイ胃バイパス手術と腸内微生物との関係を考察した研究が5月26日、「The ISME Journal」オンライン版に掲載された。
一般的な肥満手術であるルーワイ胃バイパス(RYGB)と腹腔鏡調節胃バンディング手術(LAGB)は、解剖学的に異なる術式である。 RYGBはLAGBと比較してより大きな減量を達成することが知られている。腸内微生物の変化はLAGBではなくRYGBで報告されており、リバウンドなしの外科的方法による体重減少への微生物寄与はさらなる研究を必要としていた。今回の研究を主導した米国アリゾナ大学の研究者らは、RYGBがLAGBよりも腸内微生物とその代謝の変化に大きく影響し、変化した微生物がより大きな減量に寄与し得ると仮定した。
多元的アプローチを用いた分析の結果、RYGB術後の腸内微生物の構成は、術前肥満時、適正体重者、LAGB術施術患者のものと有意に異なっていた。 RYGBと術前肥満時の微生物構成の違いは、代謝物にも反映されていた。微生物の多様性はLAGBに比べ、RYGBでより大きかった。胃酸の曝露がより低いために、大腸菌、口腔細菌、ストレプトコッカスなどは、RYGBでより豊富に存在し、存在量は減量率と正の相関があった。
これらRYGB後に多くみられる微生物の多くは、アミノ酸発酵を可能とする。おそらくはそのために、アミノ酸および炭水化物発酵によって生成されるイソ吉草酸、イソ酪酸、イソ酪酸、プロピオン酸はRYGB術後には多かったが、LAGB術後には少なかった。RYGBはLAGBよりも腸内微生物と代謝物の変化を大きくもたらし、RYGB術後には多くのアミノ酸発酵からなるユニークな微生物叢をもらたすことが明らかになった。