〇解説記事④人工皮膚化粧品の研究開発に力 ~花王、人工皮膚、髪染色等を技術イノベーションに位置付け~(Ⅱ)

2019.09.24

特集

編集部

花王の人工皮膚技術「ファインファイバー」は、オムツの不識布開発から誕生させた。ファインファイバーは、専用装置にポリマー溶液をセットし、一本の糸のような形状で溶液を肌に噴射することで、肌の表面に積層型極薄膜を形成する。直径0.5μという極細繊維で編まれる膜は、これまでの技術では解決できなかった端面の発生、凹凸の追従性、空隙といった問題を解決。また、このファインファイバー技術を活用すれば「消すことができなかった肌に残る傷痕やシミなどを隠す形で改善させることが可能となる」という。

同社は、この人工皮膚技術「ファインファイバー」を主要な技術イノベーションに位置付けている。
このファインファイバー技術と並んで技術イノベーションに位置付けているものにクリエイティッドカラー技術がある。クリエイティッドカラー技術は、パッチテスト不要、簡単、簡便に多彩な色に髪を染色できる技術。

同社は、酵素メーカーの月桂樹株式会社(京都府京都市)とコラボで、植物の原料から髪色を変える成分であるメラニンの元となるものを作り出した。このメラニンの元と制御技術を活用し、髪色を黒髪やブラウンなど思い通りの色に染色することに成功した。また、染髪剤を使用せず、コンディショナーだけで染色することも実現した。

さらに富士フィルム株式会社(東京都港区)と共同開発した染料「ムービングカラー」技術も注目される。同技術は、光のあたり方、髪の動きによって染色した髪の色が変化する技術で、染料もシャンプーとコンディショナーを使用するだけで簡単に髪色を変えることができる。

ともあれ、人工皮膚技術「ファインファイバー」は、スキンケアやメイクといった化粧品の開発に取り組むとともに、将来的には治療領域への応用も視野に入れ、研究を深耕している。
しかし、ファインファイバー技術を使った化粧品の商品化は、現時点で見えない。当初、2019年にも人工皮膚化粧品を開発して市場に投入する方針を打ち出していたが、今のところ具現化のアナウンスはない。

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