【連載】化粧品・美容各社の業績と企業買収⑯化粧品・美容各社の業績と企業買収 ~スクロール8年間で化粧品会社等18社買収、DMC複合企業目指す~

2019.11.22

特集

編集部

通販業大手「株式会社スクロール」(静岡県浜松市)の企業買収が目立つ。2010年から2018年までの8年間で国内企業を買収した件数は、累計で18社に上る。
買収した企業の業種は、化粧品関連が5社(表参照)、食品関連が4社、EC関連が3社、ファッション関連社2社、決済、アウトドア関連、旅行関連、マーケティングがそれぞれ1社ずつとバラエティーに富んでいる。2018年だけでも買収企業は5社に上っており、買収意欲は極めて強いものがある。

8年間で買収した主な化粧品企業を見ると、2012年3月にスタイライフの子会社で豆腐の盛田屋ブランドで化粧品販売を行っていた株式会社ハイマックス(福岡県筑紫郡)を買収し傘下(子会社)に収めた。また、2017年5月には、化粧品通販の株式会社キナリ(東京都品川区)を株式会社資生堂(東京都中央区)から買収した。
多種多様な企業買収にあたって1件当たりの買収金額(非公表)は、平均で30億円程度と小さい。しかし、同社が積極的に買収に打って出ている背景には、「DMC」(ダイレクトマーケティングコングロマリッ)という多岐にわたる業種・業務に参入する複合通販企業体の橋頭保を確立するのが狙い。

ダイレクトマーケティングは、広告やメディアを通して顧客と直接につながり購入や問合せなど具体的なアクションを促し、その反応をデータとして計測するマーケティング手法。
同社は、DMのスキルをコアの能力と戦略上の強み「ゲイバビリティ」と位置付けて通販事業やEコマース事業、それに買収して子会社として化粧品などを販売する健粧品事業等のセグメントについては、強化策を講じている。
中でも健粧品事業については、独自性の高いオリジナル商品の開発・販売に加えてオフィシャルサイトの刷新と大手モールへの出店及び越境ECや海外への卸販売などグループの資産を活用した収益モデルの構築に積極的に取り組んでいる。

同社は、DMCを成長の旗印に掲げて2019年3月期をスタート年度に2021年3月期を最終年とする3カ年中期経営計画「新みらい2020」を推進中。
同社の2019年3月期業績(連結)は、売上高711億5300万円(前期比14.4%増)、営業利益16億9700万円(同30.3%増)と好決算となった。通販事業とEコマース事業が全体の業績を牽引した。しかし、投資育成事業に位置付けている健粧品事業は、ブランド認知の拡大に向けたプロモーション活動や中国でのマーケティング強化等を行ったが、売上高は前期比7.7%減の45億8100万円と減収、損益も先行投資が響いて6億3100万円の赤字となった。

2020年の業績見込みは、売上高が前期比5.4%増の750億円、営業利益前期比11.9%増の19億円を見込む。最終年度の2021年3月期は売上高1000億円、経常利益50億円を目標としている。果たして買収で業績を伸長させてきた成長路線が今後とも継続するか、注目されるところだ。

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