【連載】化粧品が起こすイノベーション・この技術に注目⑳マイクロニードル技術・化粧品への応用(中)~資生堂・・ヒアルロン酸主成分の目元用化粧品を開発~

2020.05.12

特集

編集部

株式会社資生堂(東京都中央区)は、ヒアルロン酸(HA)等の有効成分が溶出しながら皮膚中へ浸透するという自己溶解型マイクロニードルの特性に着目し、HAを主成分とするマイクロニードルの目元用化粧品への応用開発に取り組んだ。
同社は、早い段階からマイクロニードルによる角層水分量や皮膚の粘弾性の増加によるしわ改善効果を見出し、2011年3月に目元用化粧品「フィルパッチ」(写真)として商品化し、美容医療向け専売ブランド「ナビジョン」として市場投入した。

小さな突起付きのパッチを貼って薬剤を注入するというマイクロニードル技術を応用して開発したヒアルロン酸フィルバッチは、シートの表面にヒアルロン酸を針状に固めた突起が1200本も並んだ形状をしている。
ふっくらしたハリと弾力のある目元の肌にフィルバッチを密着させると針状に固まったヒアルロン酸が溶け出し、潤いを角質層に届ける。2018年からは、美容医療向けルートに加えてオンラインショップでも購入できるよう拡販を図った。

同社は、ヒアルロン酸や糖類等の有効成分が溶出しながら皮膚中へ浸透する自己溶解型マイクロニードルの特性に着目して、ヒアルロン酸を主成分とするマイクロニードルの目じりのしわに対する有効性と目元用化粧品の開発に取り組んだ。
同社が行った目じりのしわに対するマイクロニードルの有用性試験を検証すると、約1500本の針を配した100%ヒアルロン酸配合の目元シートを用いた試験では、マイクロニードルによってヒアルロン酸を角質層まで到達することが明らかになった。
有効性試験では、30代から50代の女性25名を対象にマイクロニードルを就寝前に片側目じりに頒布して、浸透性をみた。この結果、ヒアルロン酸の各層内での水分保持が肌状態の改善に寄与したことが判明した。
これらの結果をベースに美容法の開発や形状の改良を行い「ヒアルロン酸フィルバッチ」の開発に繋げた。

同社では、マイクロニードル技術について「ヒアルロン酸のみならず浸透性や溶解性等の問題で一般化粧品への配合が難しい薬剤にとって新たなブレークスルーになる剤型であり、化粧品の発展に寄与する」として期待を込めている。

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