【連載】この中小化粧品会社に注目(63)高級アルコール工業(下)~第2工場建設、金融機関3行が37憶円を協調融資~

2021.06.9

特集

編集部

高級アルコール工業は、シャンプーや口紅、マスカラなどに使用される高品質な化粧品原料を開発・製造している。独自の精製技術や多品種小ロット生産による品揃えを強みにして大手化粧品メーカーなどを中心に、国内外の約1500社で使用されている。

同社を巡るトピックスな動きとして新工場建設に伴う建設資金を地元銀行など3行が協調融資した点が挙げられる。
同社は、医薬品原料への本格参入を狙って成田市の大栄工業団地内に第2工場(写真)と研究所を新規建設し、竣工(2016年3月)させた。建設資金約37億円は、株式会社千葉興業銀行(千葉県千葉市)や株式会社商工組合中央金庫(商工中金、東京都中央区)、株式会社日本政策金融公庫(東京都千代田区)の3行による協調融資(シンジケート、商工中金 15 億円、千葉興業銀行 13 億円、日本政策金融公庫 9億円)によって調達した。

新設の第2工場は、生産能力の増強に加え、環境対応と作業環境に徹底配慮し、ISO14001とGMP(適正製造規範)の適合工場。原料の供給から充填までを立体的に配置し、コンパクトな構造となっている。
同工場内には、研究所機能を持たせており微生物試験室など新たな機能を追加し、製品の安全性や効果・効能に対するエビデンスの立証に取り組む。
厳格な品質基準に対応する製造設備と管理体制が整ったことで、従来の化粧品、原料事業におけるサービス拡充だけでなく医薬品原料事業への本格参入を図る。

ところで、中小の原料会社に工場建設資金として金融機関3行がシンジケートを組んで協調融資したのは、近年において珍しいケース。
協調融資は、同社の生産能力増強や新分野への本格参入により、一層の成長につながることや地域雇用の創出が見込まれることなどを評価した。特に、政府の新技術・新製品開発、新サービス等に関わる補助事業認定制度「経営革新計画」が認定」(2014年10月)を受けたことが協調融資につながった。

経営革新制度は、新製品や新サービスの開発・提供、新たな生産方法の導入などにより経営改善を目指しその経営改善までの道しるべとなる経営革新計画書を作成して知事の承認を得るもの。
計画の承認を得るとⅤⅭからの投資や金融機関からの融資などが受けやすくなる。同計画に盛り込んだ新工場の建設が新たな事業の成長に寄与することか経営革新計画に認定され、建設資金の協調融資につながった。

また、同社は、2016年10月に東京商工会議所(東京都千代田区)主催の第14回「勇気ある経営大賞」奨励賞を受賞。同年に第15回 千葉県元気印企業大賞「優秀製品・サービス賞」受賞するなどの顕彰を受けている。

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