【連載】化粧品各社のイノベーション研究グリーンサイエンス・マテリアル ~スイゼンジノリから抽出の多糖類を化粧原料等として開発~

2021.08.12

特集

編集部

グリーンサイエンス・マテリアル(GMS・熊本県)は、北陸先端科学技術大学発ベンチャー。同大学がスイゼンジノリから発見した超高分子多糖類「サクラン」(写真)の化粧品原料・化粧品等への応用開発・販売を目的に法人を設立(2007年4月)した。2007年10月には、同大学と共同研究契約を締結し、サクランの物質・製法特許取得(2008年 1月)するとともにサクランの用途特許申請(2008年3月)を行うな、どの成果をだした。以来、現在では、サクランの抗炎症作用、保水力、被膜形成力などの有効性・機能性等に取り組むとともにサクラン配合の化粧品開発等に注力している。

スイゼンジノリは、九州の阿蘇山系の伏流水のみで育ち、食することのできる非常に珍しい藍藻のこと。水のきれいな河川で気温や水温が一定でないと藍藻が育たず生産が安定しない問題を抱える。このため同社は、地元の養殖業者と組んでスイゼンジノリの養殖・培養などに取り組み安定生産を確立した。

中でも、同大学と共同研究で、このスイゼンジノリから発見した超高分子多糖類「サクラン」について同社は、化粧原料として開発・販売するなど事業化に打って出ている。

共同研究で明らかになったサクランの機能性は、高保湿力が特徴。化粧品の保湿剤として一般的なヒアルロン酸と比較すると、純水では約6倍、塩水では約10倍の保水性を実証している。
抗炎症効果にも優れる。アトピー性皮膚炎患者への塗布実験では、サクランの持つ皮膜形成能により外部刺激等から保護された炎症部位は、ステロイド塗布よりも症状が緩和されるという結果が出した。
被膜形成能も高い。サクランは、非常に高分子量(分子サイズはマイクロサイズ)であるため、結果としてナノ厚さの緻密な膜を形成する。また、サクラン集合体が肌の上でバリア機能を発揮することで、皮膚内部から蒸散される水分を吸着し、薄い水の皮膜層を形成する。

こうしたサクランの第二の皮膜形成能に加えて皮膚細胞を外部刺激やアレルギー反応を起こす原因となる物質「アレルゲン」から守る機能を持つほか、高粘性や逆チキソトロピー性(流体に力を加え続けたとき、時間の経過とともに粘度が増加していく現象のこと)を有し、肌に乗せた瞬間にしっかりとしたつけ心地を感じることができる。

このように同社は、サクランを化粧品原料として化粧品メーカー等に販売するとともに医療、食品、工業等さまざまな分野への用途開発を行って拡販につなげる方針。

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