連載・異業種から化粧品分野に新規参入した上場各社の化粧品事業に迫る【10】王子木材緑化、ユーカリエキス配合の育毛剤開発・販売(上)

2015.01.19

特集

編集部

ANGELINE(アンジュリン)王子製紙を中核とする王子ホールディングス(HD)傘下の王子木材緑化(1937年設立)は、林業経営、緑化事業など7つの基本事業を行っている。この紙・パルプの会社がユーカリの付加価値を追求する研究の中からユーカリエキスや女性用育毛剤「アンジュリン」(医薬部外品=写真上)、フェイスマスク「OJI-ディープモイスト・マスク」(写真下)を産み出し、化粧品分野に新規参入(2009年6月)した。

参入当初、同社の化粧品分野の進出に驚嘆の声を上げる業界人も少なくなかった半面、今もって同社が化粧品事業を行っていることを知る一般人は少ない。

女性用育毛剤アンジュリンは、ユーカリの葉をエタノールなどに浸して抽出した抗酸化成分(抗菌剤)のユーカリエキスをD-パントテニルアルコール(パンテノール)、酢酸トコフェロール(ビタミンE誘導体)、センブリ抽出リキッド(センブリエキス)など既存の育毛素材と一緒に主成分として配合したもの。

既存の育毛素材は、細胞活性や頭皮環境の改善を促進することで育毛効果を発揮することが知られている。D-パントテニルアルコールは、毛髪の成長促進や白髪を予防。酢酸トコフェロールは、血管拡張や血行を促進する。センブリ抽出リキッドは、血行促進、毛根の細胞分裂を活性化する。これらの既存育毛素材にユーカリエキスを配合することで育毛促進や薄毛、脱毛予防を実現した。

OJI-ディープモイストマスク不織布に美容液を含浸させたフェイスマスク「OJI‐ディープモイスト・マスク」は、ユーカリエキスの抗菌・消臭パワーを女性のスキンケアに生かす研究の中から開発した。
同マスクは、ユーカリエキスとヒアルロン酸、水溶性コラーゲン、コエンザイムQ10、ビャクダンエキスなどを保湿成分として配合し、20mlもの美容液が溶け込むように肌に浸透し、潤いとハリを与える。また、フェイスマスクに使用するシートは、グループ企業の王子キノクロスの不織布を採用。不織布が肌にぴったり張り付くため、保湿力を長時間保持する。

ユーカリエキスの開発は、王子HDの東雲研究センターが担当。育毛剤、フェイスマスクの商品化は、同研究センターと王子木材緑化の健康関連部(製造も管掌・ハブレス)が共同研究して開発した。

王子木材緑化は「育毛剤に関して当社は、後発メーカーであり、先発の育毛剤をしのぐ効果がないと商品化の意味がないとの信念のもとアンジュリン開発を行った」と強調。特に、ユ-カリエキスを既存の成分に配合する配合技術に悪戦苦闘。配合の方法が違うだけでまったく異質の配合成分ができるなど、実用化するまで実に10年の歳月がかかった。

これまで王子HDと王子木材緑化が取得したユーカリ関連特許は、1997年から2009年までの12年間で、権利化した特許取得が9件、審査中2件の計11件に上る。

お問い合わせ
王子木材緑化株式会社

 

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