【連載】化粧品各社のイノベーション研究【18】ビタミンC60 バイオリサーチ① ~フラーレンを化粧品原料として実用化~
2016.04.5
編集部
ビタミンC60 バイオリサーチ株式会社(東京都中央区)は、三菱商事株式会社が2003年7月にフラーレンのライフサイエンス向け用途を開発・販売する目的で設立(子会社)した化粧品原料メーカー。
フラーレン (fullerene) は、炭素の同素体(同一元素だけで校正される分子)で、炭素原子60個で構成されるC60などの多面体の総称を意味する。
フラーレンC60の直径は、0.7ナノメートル(ナノメートルは1メートルの10億分の1)で、閉殻空洞状をした60個以上の炭素原子がサッカーボールのように結合した球状の分子構造(写真)をしている。
このフラーレンにいち早く注目したのが三菱商事(フラーレンの物質特許保有)で、フラーレンの物質特性を生かして二つの会社を立ち上げた。
一社は三菱化学株式会社と2001年に有機薄膜太陽電池の実用化を目指して設立した会社。もう一社が子会社ビタミンC60 バイオリサーチであった。
ビタミンC60 バイオリサーチを設立したのは、ビタミンCの172倍の抗酸化機能や12時間を超える持続性などを特徴とするフラーレンを化粧品原料として工業化することが狙い。
しかし、フラーレンは、極微量なので抽出しても製品化が難しいことから同社は、特殊な条件下で炭素に強力なエネルギーをかけてその分子構造を破壊してバラバラにしたうえで、微量のフラーレンを生成して抽出するという手法をとった。また、フラーレンは、まったく水に溶けないことも商品化の面で大きな課題となった。
そこで同社は、水に溶ける高分子化合物「ポリビニルピロリトン」(PVP)でフラーレンを包み込み、水に分散させることを実現した。
このような技術開発によって最初に誕生したフラーレンの第一号商品が、2005年に世界に先駆けて実用化した水溶性フラーレン「ラジカルスポンジ」(商品名)である。水溶性フラーレンは、主に化粧水や水性の美容液など、水分が多い化粧品に配合される。
2009年には、第二弾として油溶性フラーレン「リポフラーレン」(同)を商品化して市場に投入した。
油溶性フラーレンは、スクワラン(保湿剤)と混ぜ合わせて生成される。油になじみやすいため、主に油性の美容液やクリームなどの油分が多い化粧品に配合される。
こうした水溶性、油溶性のフラーレン開発は、細胞実験や肌での効果を確認し、安全性や安定性に裏付けられた化粧品原料として化粧品メーカー、OEMメーカー、皮膚科・美容整形などのユーザーに提案営業を行いながら拡販に打って出た。