【連載】化粧品・美容関連ベンチャー企業の成長軌跡【34】植物ハイテック研究所① ~カラハリスイカから肌ダメージ防止成分を発見~
2016.11.29
編集部
微細藻「ミドリムシ」の事業展開を行う株式会社ユーグレナ(東証一部上場)に買収されて傘下に入った株式会社植物ハイテック研究所(奈良県生駒市、社長 西永正博氏)は、大学発ベンチャーとして経営を維持する難しさを改めて見せつけたモデルケースといえる。
同社は、2004年4月に奈良先端科学技術大学大学院の8名の教授が植物の活力を最大限に引き出して、美容と健康ビジネスに挑戦する目的で設立した大学発バイオベンチャー。
植物の代謝機能の強化や医療用タンパク質などの有用物質を高生産する目的で利用される次世代の植物(葉緑体)形質転換法を駆使して、バイオ燃料「ヤトロファ油脂」の生産性向上を目的とした研究開発を推進。また、アフリカのカラハリ砂漠に自生しているカラハリスイカの生命力と健康・美容への応用研究に取り組んでいる。
この中で早い段階(2009年)からカラハリスイカに含有する成分研究に取り組み、ノエビアとの共同研究で、カラハリスイカに含まれるアミノ酸の一種「L-シトルリン」に紫外線による肌のダメージを防ぐ効果があることを発見するなど、大きな成果を生み出した。
「L-シトルリン」は、抗酸化素材として知られており、欧米でサプリメントなどに利用されているほか、国内においても機能性アミノ酸として注目されている。しかし、肌に対する有効性はほとんど知られていなかった。
そこで両社は、L-シトルリンが紫外線による肌のダメージを防ぐ効果があるかを共同研究した。
研究の結果、
①皮膚の表皮角化細胞において「L-シトルリン」に紫外線による炎症性物質の産生を抑える効果があることを見出した
②皮膚の真皮線維芽細胞において「L-シトルリン」に紫外線によるコラーゲン分解酵素の産生を抑える抗酸化効果があることを見出した(データ図)。
植物ハイテック研究所は、カラハリスイカの抽出液を化粧品、食品、医薬品会社などに販売。また、ノエビアは、L-シトルリンの効果を踏まえて、カラハリスイカの成分を使ったエイジングケア美容液「ノエビア リバイタライザー エクスチャージ」を商品化し、2009年12月に市場に投入した。
ノエビアとの共同研究に入る前の2007年には、美容飲料「エステ・レハーブ」で連携していた田村薬品工業との間で業務提携を交わした。
このL-シトルリンの化粧品、食品、医薬品への幅広い応用が期待される中で、同研究所をユーグレナが買収(2013年9月)、傘下に収めた。