【連載】化粧特許と知的財産権⑬サラヴァイオ化粧品、温泉藻類の美容効果等を学会で発表(上)

2019.07.11

特集

編集部

株式会社サラヴィオ化粧品(大分県別府市)は、2006年の創業以来、化粧品の製造開発及び温泉微生物研究などを行なう化粧品メーカー。温泉の中に潜む高い抗炎症作用を持つ藻を発見し、温泉藻類「RG92」と名付けて特許(成分特許)を取得。また、発明した技術内容を国内外に広く公開して利用を図るとともに化粧品の開発や海外での販売展開など事業の成長発展につなげた。

温泉藻類「RG92」は、2012年に92番目に見つけたもので、外皮や体内の炎症を抑える成分を生み出す新種であることが判明。この新型温泉藻類「RG92」を「92番目にみつけた再生への道」を意味する「リジェネレーション・ゲートウェイ92」と名付けた。
温泉藻類について大学医療機関との共同研究に拍車をかけた。信州大学に依頼した遺伝子解析の結果、4つの新種藻類を発見、有用エキスから糖脂質を抽出し、外皮や体内の炎症を抑える抗炎症、抗糖化、抗老化の効果を確認。温泉藻類RG92の力を凝縮した新しいスキンケアローションの研究成果を第28回日本微生物生態学会大会(2012年9月)で早々に発表した。
同時に、定量的解析法「リアルタイムPCR」による解析の結果、RG92を添加した細胞では、炎症因子「IL-1β」が5~6割減少(図・RG92による炎症性サイトカインの抑制参照)したことなどを実証した。同時に、「RG92」による健康促進効果および美容促進効果の検証を実施。RG92は、抗炎症作用に富み傷んだ組織を回復するなどの健康、美容を促進する天然エキスであることを確認した。また、検証では、関節炎、皮膚炎、糖化誘導型脱毛症の疾患モデルに「RG92」を作用させたところ、炎症因子や細胞外マトリックス分解酵素の産生が抑制されたことを確認。さらに、RG92は、糖化や酸化などのストレスから細胞を保護する効果も見出した。
これらの共同研究や実証試験等についての成果について「日本薬学会 第133年会」、「第57回日本リウマチ学会」、「第112回日本皮膚科学会」でも発表し注目を浴びた。

RG92の特許取得や学会発表の技術的優秀性等は、政府の補助事業の目にも留まった。RG92の特許取得後、中小企業庁所管の中小企業基盤整備機構が主催する「ジャパンベンチャーアワード2015」で地方創生特別賞を受賞した。
ジャパンベンチャーアワードは、革新的で潜在成長力の高い事業や社会的課題の解決に資する事業を行う志の高いベンチャー企業、第2創業を目指す中小企業等の経営者を称える助成制度。2000年にスタートした。

さらに、2015年7月に「温泉藻類RG92」を乾燥粉末状にした機能性食品素材の開発で経済産業省の戦略的基盤技術高度化支援事業に採択された。
同支援制度は、中小ものづくり高度化法に基づき経済産業大臣から認定を受けた特定研究開発等計画を基本とした研究開発等の事業を支援対象としたもの。
こうした「RG92」にかかわる学会での成果発表や国の助成制度適応等を契機にして同社は「RG92」の成分を使って化粧品を開発し、化粧品事業の成長発展にまい進する。いわば、特許という知的財産権を商品開発に生かして新たな収益を生み出した。

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