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「J’AI TESTÉ!」―五感と物語で心を癒すスパ体験レポート


執筆:Galya ORTEGA

五感を刺激し、深いウェルビーイングをもたらす尖った独創的なコンセプト—それが、私が最近体験する機会を得たものでした。

『Un Instant pour Soi』―自分のための「四大元素」

Le spa(スパ紹介)

スパがあるのは、アンセという小さな町です。 モダンな大きな建物で、天井の高いエントランスには、美しいシャンデリアが下がっています。 入口の側には商品棚が並ぶブティックが見え、そのすぐ先には、待ち時間を過ごせるハーブティーラウンジがあり、そこに置かれた肘掛け椅子に腰かけました。

スパの施術者がやって来て、私の希望を確認し、禁忌事項について質問します。「これは“自分の不調に言葉を与える”ことであり、意識化にとって大切なんです」と説明されました。 なるほど、それは自分にとっても有意義で、気づきにつながるように感じました。

施術を担当してくれるのは、スパの創設者であるアマンディーヌ・ローランさんです。これから行うトリートメントの説明と、使用する化粧品(スクラブとマッサージオイル)について教えてくれました。

施術は、「四大元素」と「五感」の体験を通して進められます。彼女は、私のその日の状態を丁寧に聞き取り、必要に応じて特定の要素を強調するようにカスタマイズしてくれるのです。たとえば、「背中の筋肉痛がある」と伝えれば、リラックス効果のあるサウナを中心にした流れと、その方向性に沿ったマッサージを提案してくれます。

また、ロッカーエリアには、衣類を入れるスーツケースが用意されていて、それを施術後に施術室へ持ってきてくれるのも嬉しい配慮です。 濡れたバスローブや水着を着る必要がなく、施術の余韻が残る空間でそのまま自分の服に着替えられます。

Le concept(コンセプト)

このトリートメントの目的は、顧客が自分自身に立ち返ること。

それを可能にするのが、四大元素(火・水・風・土)を通じた比類ないホリスティックな世界観と、五感の再発見です。この「360度トリートメント」は、身体・心・感情・ニーズを全方位からケアします。 各要素が独立してしっかりと体験できるように設計されており、その結果として体験が非常に強く印象に残るのです。

私の体験

すべては、ハーブティーラウンジから始まります。ここでスパセラピストが施術内容を丁寧に説明し、私の状態やニーズについて会話するのです。実は、この時点で既に施術は始まっているのです。その後、次のようなステップが続きます。

ヨード小屋(空気の要素)

アクアセンサリーな体験。まるで海辺にいるかのような空間で、思いきり深呼吸します。大きなバスではハイドロマッサージ用のジェットが使われ、シャワー体験と冷水バケツによる刺激も含まれています。

サウナとハマム(火の要素)

サウナと星空が広がるハマム空間では、火のエネルギーを感じることができます。

アフュージョンマッサージ(水の要素)

これは、単なるアフュージョン(天井からの温水シャワー)下でのマッサージではありません。オリジナルのスクラブマッサージが行われ、そこに降り注ぐ温かい水のシャワーが、聴覚にも特別なリラクゼーションを与えてくれます。 水の音が心地よく響き、まるで自然の中にいるような気分になります。

オーダーメイドマッサージ(土の要素)

このマッサージは、まず香りのミストが全身に吹きかけられるところから始まります。

施術には、アマンディーヌさんが温めた火山岩を用いますが、それは従来のホットストーンマッサージとは全く異なる特別なプロトコルです。施術前には、ショウガの砂糖漬けを一片いただきました。水の要素を経た後、この温かなショウガが体内のエネルギーを再び活性化し、火山石とのハーモニー(火と土の融合)を感じさせてくれます。マッサージは、頭部と顔を含む全身を対象としており、非常に丁寧で包み込まれるような体験でした。

施術の締めくくり

施術が終わると、あらかじめ預けておいた私のスーツケースが施術室に届けられていました。そのまま、落ち着いた雰囲気の中で乾いた服に着替えることができました。

五感のすべてが目覚める体験

視覚

ハマムの天井に広がる星空、ほの暗く落ち着いた照明、木と鉱物を取り入れたアクアゾーンのデザインなど、空間美にあふれています。

触覚

スパトリートメントの本質とも言えるマッサージは、身体だけでなく心までほぐしてくれる繊細で情熱的なタッチでした。

嗅覚

トリートメントの開始時にふわりと香るミスト。タイのインスピレーションを受けたボディスクラブとバームの香りは、レモンマートルとCBD抽出成分の爽やかで活力ある香りが広がりました。

聴覚

マッサージ中に火山石がぶつかり合う音、そして包み込むように響く穏やかな音楽が、深い安らぎをもたらしてくれました。

味覚

施術前には、生姜の砂糖漬けやアーモンドの試食が提案されます。

これは、施術中もその風味を口の中に残しておくためのものです。

施術の最後には、スパイス入りのハーブティーによって味覚が再び刺激され、五感の締めくくりとなります。

このトリートメントを作った理由

最初の動機は、スクラブ・マッサージの価値を高めたいというものでした。アマンディーヌ・ローランさんは、そこから全体の体験を構築し、ひとつの儀式として完成させたのです。

この施術を受けたお客様が再び足を運ぶようになり、リチュエルの質が確かなものであると確認できたそうです。お客様の反応や時間の経過とともに、内容は進化し、洗練されてきました。 いまでは、チーム全体とリピーターにとってのシグネチャーとなっています。

私の感想

これは、まるで時間の枠を超えるような深い体験です。施術後は、驚くほど深いリラックス感に包まれ、肌もとても美しく仕上がっていました。

所要時間と価格

「Quatre éléments pour Soi」(自分のための四大元素)
所要時間:2時間20分
料金:200ユーロ

それぞれのステップを「アラカルト形式」で受けることも可能です。

施設情報

Excillance Maison Spa『Un Instant pour Soi』
72 allée Viadorée, 69480 Anse

『Le Castel』―失われた時を求めて

Le spa(スパ紹介)

Le Castelは、カブールの中心部にあるスパ付きのホテルです。この施設は、ノルマンディー様式の邸宅を改装したもので、1階部分全体がスパエリアとして設計されています。エントランスに入ると、広々とした受付があり、そこにはPhytomer製品が美しく陳列されたショーケースがあります。 受付の正面には、光がたっぷり差し込む大きな施術室があり、窓からは緑豊かな庭園を望むことができます。そのほかの施術室はやや小さめで、カブールの色彩をテーマにした内装でまとめられ、こちらもガラス窓越しに庭を眺められる設計となっています。

ホテルの客室は、「マルセル」「マドレーヌ」といった文学的な名前が付けられており、プルーストの世界観を彷彿とさせます。

また、庭園内には小さな施術用の小屋(カバノン)もあり、自然の中での施術体験も可能です。

Le concept(コンセプト)

この施術のコンセプトは、作家マルセル・プルーストの小説『失われた時を求めて』から着想を得た、夢想的で詩的な世界観です。なぜなら、まさにここカブールは、プルーストが暮らした地であり、彼の作品の舞台とも重なる特別な場所だからです。

この施術は、ノルマンディーの自然や、時の流れが刻んだ記憶といったテーマを通して、自分自身と再びつながるためのホリスティックケアです。

施術は2つのステップに分かれています。

トリートメントマッサージ

  • 「秘密の庭」へのスパアクセス(45分)

  • 屋外の庭にあるジャグジー、ノルディックバス(温浴)、サウナをゆったり楽しめる時間が含まれています。

私の体験

レセプションに到着すると、すぐにスパマネージャーのMarylou Petitgarsさんが案内に来てくれました。彼女は私を、明るくて、なおかつとても居心地の良い施術室へ直接案内してくれます。

部屋の壁は穏やかなブルーで、ベージュのヴェールのようなカーテンが柔らかく揺れていました。 私は備え付けの肘掛け椅子に腰かけて、健康状態に関する確認票の記入を始めます。

マッサージの流れと五感の体験

うつ伏せに寝ると、マリルーさんがまず温かいおしぼりを足に置き、数回やさしく圧をかけてくれます。

続いて、頭のあたりにヨードの香りがするマリンミストをスプレー。私は深く呼吸し、すでにリラックスが始まっていました。

施術では、カブールの海岸で拾われた貝殻が使われます。温かいものと冷たいものが交互に肌に当たり、まるで海の温・冷流を感じるような感覚。動きは軽やかで包み込むよう。再び足にやさしい圧を加えます。マッサージの手技は、波のような穏やかなリズムで進み、バックグラウンドでは実際の波音が流れ、Phytomerの「海辺」オイルのヨードの香りが空間を満たします。

仰向けになると、前面にも同じプロトコルが行われます。

最後に、頭部のリフレクソロジー・マッサージ、そして顔も同様に貝殻を使ったトリートメント。このパートは、チームのリフレクソロジストが独自に構成したものだそうです。

「秘密の庭」での余韻

マッサージが終わったあと、私は「jardin secret(秘密の庭)」へ。まずは温かいノルディックバスに入り、その後は活力のあるジャグジーへ。 締めくくりは、リラクゼーションルームに戻ってのひととき。ル・カステルのパティシエが焼いたマドレーヌと、新鮮なリンゴジュースをいただきながら、静かに体験の余韻に浸りました。

なぜこの施術を作ったのか?

スパマネージャー、Marylou Petitgarsさんの言葉です。「この施術を作ろうと思ったきっかけは、『最優秀シグネチャートリートメント賞』を目指したいという思いでした。全体の約8割は私が構成しましたが、完成にはチーム全員の参加が不可欠でした。 それぞれが自分の専門分野、たとえばリフレクソロジーや貝殻、マッサージの手技などを持ち寄って完成したのです。

また、今年はスパのオープン1周年でもありましたので、チームを鼓舞し、皆で挑戦できる良いタイミングでした。 もちろん、カブールという土地やマルセル・プルーストの世界観からも多大なインスピレーションを受けました。」

私の感想

この施術は、身体的に本当に効果を感じることができました。海をテーマにした感覚的な演出がとても気に入り、自分にぴったりの空間だったと思います。

また私は、文学とノスタルジーが好きな人間なので、プルーストの『失われた時を求めて』が演出に取り入れられていた点にも知的に楽しさを感じました。全体として、とても独創的で、センスが良く、心から心地よい施術でした。

所要時間と料金

施術名:À la recherche du temps perdu(失われた時を求めて)
所要時間:50分
料金:125ユーロ
スパアクセス込みのパッケージ:150ユーロ

施設情報

『Le Castel』
Hôtel **** & Spa(4つ星ホテル & スパ)
4 avenue Alfred Piat, 14390 Cabourg

『Annamaya』―施術を通して語られるスパの物語

Le Spa(スパ紹介)

このスパは、ラ・シオタで最も美しい湾に面した場所にあります。提供される内容は非常に充実しており、美とウェルビーイングのあらゆるニーズに対応可能です。 純粋なエステティックから、内面への旅にいたるまで、多様な層の来客にフィットします。

内装はベージュトーンで統一されていますが、毎月デコレーションが変化します(カーテン、装飾、小物類など)。 これは創設者であるKarine Aroutiounianさんの指示によるものです。

私が到着したとき、ハーブティースペースのすぐ後ろにある受付で迎えられました。 飲み物やスナックがたくさん用意されていて、温かなもてなしと親しみやすさを感じます。

Le concept(コンセプト)

この「Chronology(クロノロジー)」という施術のテーマは、スパと創設者カリーヌの歩みそのものです。

スパは15年前にオープンしましたが、開業の1年後に大火災に見舞われ、すべてを失いました。その後、年月をかけて一歩一歩再建してきたのです。この施術はその物語を再現するもので、施術の動き・使用するアイテム・音楽・感覚体験のすべてが、まるでダンスの振り付けのように構成されています。 五感すべてが刺激されるよう設計されており、施術の各ステージは過去の出来事に呼応する感情やエネルギーで満ちています。

五感の刺激

視覚

洗練されたスパと施術ルームのインテリア、美しい空間演出。ハーブティースペースではリラクゼーションマッサージの映像が流れています。

聴覚

各ステージごとに感情に合わせた音楽が流れ、加えてチベットのシンギングボウルの波動音も響きます。

触覚

セラピストによる手技に加え、バリ産天然木を使ったマッサージの感触。心を落ち着かせる効果があります。

味覚

マッサージとの調和を考えて特別にブレンドされた自家製ドレナージュハーブティー。マルセイユのグルメ店「Hayastan」のアルメニアのスパイスを使用。

嗅覚

使用されるスパイスオイルは、中東、特に創設者カリーヌのルーツであるアルメニアの香りを感じさせてくれます。施術自体が彼女の人生とスパ誕生の物語を物語っています。

私の体験

施術室に入り、ウェルカムジュースをいただきます。

カリーヌが丁寧に声をかけてくれて、体調や気分を確認しながら施術の流れを説明してくれました。室温、音楽、圧加減など、細部までチェックしてくれます。

うつ伏せに寝ると、セラピストはまず全身に猫の足跡のような軽い圧で触れてきます。足元には温かいおしぼりが。

第一段階:オイルの塗布と脚のマッサージ

バリ島の神聖な木材を使ったアクセサリーで、素早くリズミカルな動き。体が温まり、血行が促進されます。背中のマッサージへ進みます。音楽が変化し、火災後の混乱と絶望の時期を表現。手技も少し荒れた感じに。最後には音楽が徐々にゆるやかで美しくなり、「祈りの時間」を感じさせます。

仰向けになると、それは再生と喜びの象徴。前面全体、頭部、そして顔への圧が加えられ、深く包み込まれるような施術です。

最後に、アルメニア紙(Papier d’Arménie)が焚かれ、創設者のルーツが象徴的に表現されます。そしてチベットのシンギングボウルの音が鳴り、セラピストが退室。私はしばらく余韻に浸ります。

その後、ハーブティースペースでお茶をいただきながら、心地よい気持ちのままクールダウンしました。

なぜこの施術を創ったのか?

創設者Karineの言葉です。

「この施術は、スパ『Annamaya』の15周年を記念してつくりました。その間に起こったさまざまな喜び、試練、そして再生の物語を形にしたかったのです。これはチームの絆を深める機会でもあり、新しい体験を求めるお客様への贈り物でもあります。私の人生とスパの歴史に、皆さんを巻き込みたいと思ったんです。」

私の感想

まさに、内面の深い旅をしたような施術でした。事前に詳細をしっかり説明してもらったことで、より深く体験に入り込むことができたと思います。

所要時間と料金

施術名:Chronology
所要時間:50分
料金:110ユーロ

施設情報

『Annamaya』
Quartier Fontsainte, place Paul Jourdan, 13600 La Ciotat


ヌーヴェル日本版(LNE)公式サイトwith美容経済新聞 2025年6月正式リリース!

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編集部(フランス)

SPA DE BEAUTE編集部(パリ)…フランスのLes Nouvelles Esthétiques社が2016年に創刊したSPA向けの専門月刊誌です。スパの経営者や施設関係者を対象とし、世界のリゾート、ホテルスパ、ディスティニースパなどを特集。本誌は20数か国でライセンス供給されており、スパ業界で最も信頼されているメディアの一つとして高く評価されています。

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