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スパ人材危機に挑む|セラピストとマネージャーの証言から学ぶ成功の鍵

慢性的な施術者不足に直面するスパは、人材を惹きつけ、定着させるために革新が求められています。
施術者とスパマネージャーがチームの健康を守り、事業の持続性を確保するための解決策を共有しています。

Noelia Ségadé氏の証言―マッサージセラピストが語る正しい姿勢と持続可能な働き方

Noelia Ségadé氏

Noelia Ségadé氏は2008年からプロのマッサージセラピストとして活動しています。心理実践の修士号(対人関係および世代間関係に特化)に加え、ソフロリラクゼーションの修士号を取得しています。さらに、体育・スポーツ教育の資格も持っています。

彼女は高級スパでの経験を積み、パリのHôtel de Crillonのスパをはじめ、5つ星ホテルで活動してきました。同時に、個人のオフィスを構え、マッサージや心理療法のセッションを提供しています。

天職としての仕事

Noelia Ségadé氏は、スパ勤務に伴う条件に適応してきました。立ち仕事、夜遅い勤務、ストレス、マネージャーや仲介者との共同作業、フリーランス間の競争などです。彼女はこの仕事を心から気に入っていますが、快適な労働環境を得るためには多くの調整が必要だったと語ります。

正しい姿勢を取ることの重要性

「マッサージを“やりすぎる”ことは、私がこの仕事に抱くイメージには含まれません。10時間続けて働くこともありますが、それ自体は疲れません」とSégadé氏は話します。多くの施術者にとっては驚きの発言かもしれません。しかし彼女によれば、疲れにくいのは施術中に正しい姿勢を保っているからです。

「正しい姿勢を取ることが失われつつあるように感じます。例えば、指ではなく手のひらで圧をかければ手首を痛めます(腱鞘炎や嚢胞など)。また、膝を肩幅以上に開けば靭帯を傷めます。知り合いの若い女性たちは、2〜5年で仕事を続けられなくなり、わずか18歳で方向転換を余儀なくされました」と彼女は語ります。

さらに、スパでよくある誤りとして「筋肉でマッサージをする」のではなく「体重でマッサージをする」ことの大切さを強調しました。

適切な教育を受けること

Ségadé氏は1985年から趣味としてマッサージを行いながら、芸術コーチとしてのキャリアも歩んできました。彼女はMassage AcademyやInstitut Cassiopéeで質の高い教育を受けた経験があります。

「当初は3日間でプロトコルを学び、その後100件の実技と手書きの評価を得て、初めて修了証がもらえました。数日でプロトコルを覚えることはできますが、マッサージの技術を身につけることはできません。現在ではCPF制度により、3日間で資格が取れるようになり、それ以上の要件はありません。YouTube動画を見ただけで活動を始める人や、16歳で過酷な勤務を強いられ、18歳で転職せざるを得なくなる人もいます。これは本当に憂慮すべきことです」とSégadé氏は嘆きます。

顧客体験を大切にする姿勢

彼女は顧客体験の重要性を重視し、Forbesの基準に従い、顧客との感情的なつながりを築くことを意識しています。それにより、忘れられないひとときを提供し、施術者にとっても癒しとなる時間を実現しています。

自分自身をケアすること

リラクソロジストとしての立場から、他者の体を扱うには自分自身の体を大切にすることが不可欠だと強調します。そのため、定期的にカイロプラクターに通い、関節の調整を行っています。また、月に数回は同僚からマッサージを受けたり、活性プールで体を整えたりしています。こうした習慣により、痙攣、緊張、痛み、緊張型頭痛、めまいを防いでいます。

今この瞬間に集中する

施術中、彼女は常に「今」に意識を集中しています。

「私はオーダーメイドのディープマッサージを行います。筋肉が硬直していれば、それが解れるまで丁寧にアプローチします。指先から筋肉の状態が伝わり、ほぐれていくのを感じられます。それにより、自分の仕事の成果に満足できますし、顧客も同様に実感します。これこそが私の使命を果たした証なのです」と彼女は語りました。

自分に合ったスパを選ぶ

数々の職業的な課題に直面しながらも情熱を保ち続けるために、Noelia Ségadé氏は勤務先をいくつかの基準に基づいて慎重に選んでいます。

「業務全体の条件を評価することが大切です。例えば、セキュリティチェックを通過し、ジャケットを受け取り、施術後にはお茶を用意し、プールへ案内し、さらにキャビンを細かく整える必要がある場合、これらすべてを含めて2時間の拘束で80ユーロしか支払われなければ、実質的には40ユーロにしかなりません。移動時間まで考慮すればなおさらです。一方で、4つ星ホテルで50ユーロの報酬を得る方が、より有利でストレスも少ないのです。 注文量も重要な要素です。時給だけでなく、状況全体を考慮しなければなりません」と彼女は説明します。

フリーランスという働き方の利点

「重要な点を自分で管理できれば、仕事はずっと充実したものになります。これは私のようにフリーランスや事業主であれば可能です。チャンスがあるときには、自分に合う職場や労働条件を選び、自分に合わせて調整する勇気を持つことが必要です。私はある施設を辞めることを怖いと感じたこともありますが、その後は必ずより良い環境を見つけられました」とSégadé氏は語ります。

自由な働き方の選択

フリーランスであることにより、彼女は時間や勤務可能日を自分で調整できます。

勤務服の選択

また、施術中に着用するユニフォームの素材を自由に選べる点も大きな利点です。

「一見些細に思えるかもしれませんが、とても重要です。スパの制服にはペットボトルをリサイクルした素材を使用しているものがありますが、着心地が悪く、ポリエステルに包まれると正しくマッサージの動作ができません。それに臭いも出やすいです。私はコットン素材を選びます」と彼女は説明します。

マッサージオイルの選択

使用する製品についても一定の自由があります。

「日々製品にさらされるので、化学物質を吸収し続けたくありません。私にとってオイルは植物性であるべきです。例えばブドウ種子油を選びます。天然で、しかも乾いた質感のオイルだからです」とSégadé氏は語ります。

衛生管理の徹底

公共の場で働く以上、衛生管理は不可欠です。しかし、彼女によれば、多くの施設では施術者に必要な衛生管理の手段を十分に提供していません。

「私はある高級ホテルで働いた際、石けんが用意されておらず、ロッカールームのものも使用禁止と言われ、6時間ものあいだ手を洗えずに施術を続けたことがあり、その結果、爪の病気を患いました。それ以来、私は必ずオーガニック石けんを自分で持参しています。音楽が流れないときのために小さなスピーカーも携帯し、制服、消毒用ウェットティッシュも持ち歩きます」と彼女は話します。

Ségadé氏はさらに、衛生、正しい姿勢、ラグジュアリー業界の作法といった複数の側面でセラピストをプロフェッショナルに育成しています。スパマネージャーに対して監査を行い、施設の質の向上とスタッフのスキルアップを支援しているのです。

Sophie Chicou氏の証言―フリーランス施術者を活かしたスパ運営と人材定着の秘訣

Sophie Chicou氏

2015年のキャリア転換を機に、Sophie Chicou氏はフリーランスのスパマネージャーとして、ジェール県にある4つ星ホテルの施設で活動を始めました。それ以前は、スパで臨時スタッフとして勤務し、やがてスパマネージャーとなりました。現在、彼女が管理するスパは2つのキャビンを備え、4名のフリーランス施術者のみで運営されています。また、彼女自身も自宅や自身のオフィスでも活動しています。

フリーランスという立場はマッサージのスタートに安心感を与える

彼女がフリーランスという立場を得たのは、過去にイベント業界で働いていた頃から知っていた施設オーナーからの提案でした。オーナーはスパの開設を望み、チームの運営を彼女に任せたのです。これはちょうどキャリア転換の始まりでした。

「私にとって理想的な形でした。安心して自分の活動を立ち上げられ、すでに顧客を抱えた状態で始められたのです」とSophie Chicou氏は語ります。当時、ホテルではすでに客室での施術サービスが行われていたため、顧客を確保するのは容易で、早い段階から安定した収入を得ることができました。

フリーランスのチームは定着しやすい

Sophie Chicou氏によれば、チーム運営は非常にスムーズです。彼女がスパに出向くのは、施術予約があるときやスパブランドの担当営業と会うときのみです。3年間にわたり、彼女はフリーランス施術者のチームを率いてきましたが、そのメンバーは安定して施設に定着しています。

「私のチームは経験豊富な30歳から50歳までのフリーランスです。採用時には施設のウェブサイト、SNS、Indeedに求人を出しました」と彼女は説明します。

チームと対等な立場のマネージャー

彼女は、マネージャーである自分と施術者との間に区別は設けないと語ります。自らも施術を担当することで、対等な関係を保っています。こうした関係性が良好なチームワークを生み出し、スパによっては不足しがちな結束力を高めています。さらに、年末にはチーム全員で集まり、親睦を深める機会を設けています。

スタッフの予定に合わせたシフト管理

シフト管理はホテル全体で使用しているアプリで行われています。顧客が予約をすると、ホテルのフロントがアプリに時間枠を入力します。すると施術者に通知が届き、都合の合う人が先着で受け付けます。

「一人が予約を取れば、その前後に追加される施術も受けることになります。2件以上の施術が入る場合は2人で対応します。施術者たちはその条件を理解し、受け入れています」とSophie Chicou氏は説明します。これにより、施術者が一件の施術だけで出向くことはなく、1時間40ユーロの報酬を得られます。

シンプルなコミュニケーションツール:WhatsApp

一見、フリーランス施術者のチームをまとめるのは難しそうに思えますが、適切なコミュニケーションツールを使えば容易です。この施設ではWhatsAppのグループチャットが活用されており、スパチームだけでなくホテルのフロントスタッフも参加しています。

チーム定着に悩むスパマネージャーへのアドバイス

近年、フリーランス施術者のみで運営されるスパが増加しています。施術者は自分で勤務時間を管理できるため、より意欲的に仕事に取り組めるといいます。さらに、従業員として働く場合よりも高い報酬を得られる可能性があると、彼女は指摘しています。

Nell Foucal氏の証言―スパマネージャーが語る人間性を重視したチーム育成とマネジメント

Nell Foucal氏

契約社員としての研修後、Nell Foucal氏は1年前にHôtel Renaissance Paris Saint-Cloud内のSpa Hysopeでスパマネージャーに就任しました。彼女が統括する200㎡のスパには、3つのキャビンとハマム、サウナ付きのリラクゼーションエリアがあり、ホテル宿泊客だけでなく外部の顧客も利用しています。彼女は昇進の際に2名の正社員施術者を採用し、さらに1名の研修生を迎えています。必要に応じてフリーランスの施術者が加わることもあります。

人間性を第一に

キャリアを始めたばかりの立場でありながら、Nell Foucal氏は施術者の仕事が抱える困難を理解しています。彼女によれば、チームを定着させ、モチベーションを高めるためには「人間性」が何より大切です。

「チームのニーズを理解することが不可欠です。施術者と時間をかけて対話することが大切で、月に1〜2回は個別面談やチームミーティングを行っています。これらは、チームとしての進歩を振り返る機会であり、施術者が直面している課題を話し合う場でもあります。必要であれば追加研修を提案し、同じ問題に直面したときに解決できる戦略を一緒に考えます」と彼女は説明します。

彼女にとって、スタッフはスパの成功に欠かせない存在であり、対話は最優先事項なのです。

柔軟なシフト管理

スパにおけるシフト管理は、マネージャーと施術者の間でしばしば摩擦を生みます。特に夜遅い時間の勤務や連続する施術は、施術者を疲弊させ、離職につながることもあります。そのため、Nell Foucal氏は細心の注意を払っています。

「この仕事は非常に体力を消耗することを自分自身も理解しています。私は今も施術を行っていますから。そのため、施術者には必ず1時間のランチ休憩を設け、勤務開始前には15〜20分の準備時間を確保しています。施術終了後にも同じ時間を取り、落ち着いてキャビンを整えられるようにしています。また、連続施術は4時間半から5時間を上限とし、それ以上は避けています」と彼女は語ります。

こうした配慮により、スタッフは長期的に健康を維持しながら働けるのです。さらに、彼女は施術内容を交互に組み合わせる重要性を強調しています。常に強い圧を伴うボディマッサージばかりを続けることを避け、多様な施術を経験することで知識を生かし、成長や充実感を得られるようにしているのです。

十分な研修を受けた施術者

採用した施術者に対して、彼女はまず施術時に必要な正しい姿勢を指導しました。これは、怪我を防ぐために欠かせません。スパの現場では不適切な姿勢による障害が頻繁に発生するからです。Nell Foucal氏は特に関節や背中への負担を軽減する姿勢に重点を置き、「スクワット姿勢」を推奨しています。さらに、勤務後にはヨガのポーズを実践するよう助言しています。「ダウンドッグ(下向きの犬のポーズ)」や「チャイルドポーズ(子供のポーズ)」などです。

「これらのアドバイスは、施術者が到着した際に渡す研修用ブックに含めています」と彼女は説明します。マネージャーによれば、施術者という職業では予防に対する意識が低く、そのため彼女はスタッフの身体的な健康に特に注意を払っています。週に1~2回、営業開始前に施術者が10~15分間ウォーミングアップやストレッチを行う時間を設けています。こうすることで習慣化され、正しく実施できるようになります。

「予防は不可欠です。予防が欠けているからこそ、多くの施術者が仕事を辞めてしまうのだと思います」とスパマネージャーは語ります。

魅力的な報酬制度

報酬は施術者にとって大きな課題であり、多くの場合、最低賃金(SMIC)で働かされています。Spa Hysopeでは、施術者は販売額の10%(税抜)をコミッションとして受け取り、500ユーロ(税抜)以上を超えると20%になります。また、祝日や日曜日には割増報酬が適用されます。

スパ運営には強固なチームが不可欠

スパマネージャーは、勤務先スパに関する数字や指標を注視する必要があります。

「確かに数字を考えることは必要です。しかし、もし毎月チームの誰かが辞めてしまうようでは数字を追うことはできません。安定したチームがあって初めて、数字について考えられるのです。そのため、私たちはまずチームを最優先にし、その上で数値目標に取り組んでいます」とNell Foucal氏は説明します。離職が多い業界において、この考え方は非常に理にかなっています。

チーム定着に悩むスパマネージャーへの助言

彼女が最も重視するのは「人間性」です。他者への共感や傾聴の姿勢、感謝や称賛、励ましといった認識が不可欠です。個人やチームの成果をきちんと評価することも同様に大切です。

「これらを言葉や態度で示すのはフランスでは難しいとされるかもしれませんが、長期的に強いチームを維持するためには不可欠です。私たちの優先事項は人材の幸福です。スタッフを大切にせずに顧客へ幸福を届けることはできません。結局のところ大切なのは、チームとの対話と傾聴です。私たちは身体的にも感情的にも多くを相手に与える職業です。だからこそ、人間性こそがスパ成功の鍵なのです」と若きマネージャーは強調します。

勤務先スパを選ぶための助言

彼女は、まず働きたいと考える企業を理解することが重要だと助言します。その企業が自分に合っているか、価値観を共有できるかを見極める必要があります。

「名声のあるスパを選ぶのは確かに魅力的で誇らしいことです。しかし、そのスパが自分のビジョンに合致しているかどうかを考えるべきです」と彼女は述べます。

自分が望むことや目標を明確にし、それが勤務先の企業と一致していることが大切なのです。


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DORIANE FRÈRE

DORIANE FRÈRE

国際版コラム責任者/ジャーナリスト

フランス雑誌『Les Nouvelles Esthétiques』のコラム責任者でありジャーナリスト。

  1. スパ人材危機に挑む|セラピストとマネージャーの証言から学ぶ成功の鍵

  2. スパ人材不足と労働環境の現実を示す施術者の声

  3. 美容医療を受ける顧客に勧めるべきケアとは

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