マッサージの分野で新たにキャリアを築きたいと思っているものの、不安を抱えてはいませんか。間違った選択をしてしまうのではないか、この仕事を理想化しすぎているのではないか、十分な収入を得られないのではないか、学び直しがうまくいかないのではないか、あるいは顧客の求める勤務時間に適応できないのではないかと心配する方も多いでしょう。
ここでは、この分野でよく見られる5つの典型的な失敗について取り上げます。
独立開業を目指す際に直面する働き方と健康面の課題
失敗1 情熱だけで十分だと信じてしまうこと
「今の仕事には意味を感じられません。これからは、夜に帰宅したとき『今日は誰かや何かの役に立てた』と思えるようになりたいのです。さらにそれが人に喜びを与える仕事であれば最高です」
長年、自分の仕事に対して何の感情も抱けなくなった人が、スパセラピストになりたいと語る理由として、このような思いを口にすることがよくあります。ところが、マッサージが好きであったり、ウェルビーイングに惹かれていたりするだけでは、利益を生むビジネスを築くには不十分です。確かに、それらは困難や迷いの時期を乗り越える助けにはなりますが、現在行っている仕事との違いに適応するための準備が不足している場合には、情熱だけでは通用しません。
十分な時間を割けない場合
例えば、親として交互に子どもを預かる生活を送っていて、隔週の週末に勤務ができない場合には、月に3回の週末勤務が当たり前となっているチームに加わることは難しくなります。その結果、職場のバランスを崩してしまう可能性もあるでしょう。独立して働く場合には上司から勤務時間を指定されることはありませんが、それでも顧客がマッサージを受けたいと思う時間に応じる必要があります。特に土曜日はその需要が高い日です。
健康状態が万全でない場合
また、数時間にわたり立ち仕事を続けることが難しかったり、肩・腕・手首といったマッサージで重要な部位に慢性的な痛みを抱えていたりする場合には、どんなに姿勢を工夫しても仕事を続けるのは大きな負担になります。
実践すべきこと
できるだけ多くの人に会い、この分野についての意見を集めてみましょう。最初に耳にする意見だけで判断してはいけません。心や情熱の声に耳を傾けるのは大切ですが、スパセラピストという職業には現実的で避けられない制約があることを、雇われて働く場合も独立する場合も直視する必要があります。
職業の身体的負担を軽視すると独立スパセラピストは続かない
失敗その2 職業の身体的な側面を軽視すること
スパセラピストの仕事はマッサージを行うことです。そしてマッサージは、立ったまま、暗い環境で、会話をせずに、体力を大きく消耗する手技を繰り返すことを意味します。
マッサージの種類によっては、痩身を目的とした手技は、リラクゼーションマッサージの包み込みよりも多くのエネルギーを必要とします。
また、顧客の体格によっても負担は変わり、これは勤務する場所によっても無視できない要素です。
1日6時間の施術を目標としていなくても、研修の段階ではそのような状況を経験することがあります。例えば、スキーリゾート地や海辺のホテルスパでの実習では、このような集中した施術が一般的です。そのため、職業上のプロジェクトを確立してこのリズムから解放されるようになるまで、体(そして精神)が崩れずに持ちこたえられる状態でなければなりません。
実践すべきこと
できるだけ早く解剖学を学びましょう。顧客に正しく施術するためだけでなく、身体のバランスを理解し、施術台に対して正しい姿勢を取ることで、自分自身を守るためにも役立ちます。もし普段から運動不足であれば、体力を取り戻すためのプログラムに取り組むことを恐れないでください。さらに、自分自身へのセルフケアを行い、ヨガや筋力強化、ストレッチなどの補完的な活動を取り入れることで、より早く回復できるようになります。
マッサージ業界での起業に必要な市場分析と収益性の確認
失敗その3 市場調査をせずに独立開業してしまうこと
一部の人にとって、マッサージ分野への転身は、ウェルビーイング業界での起業プロジェクトの一環です。どのような施術を提供したいか、どのような理念を持っているか、どのような顧客層に届けたいかといった明確なイメージを持っているかもしれません。プロジェクトへの情熱が強すぎるあまり、経済的な実現可能性という基本を忘れてしまうことがあります。
特に、起業をきっかけに現在住んでいる場所を離れ、顧客や地域の関係者をまったく知らない新しい土地に移る場合、この側面を軽視すると新しい挑戦が失望に変わる危険があります。
実践すべきこと
もし起業に関する知識がない場合は、商工会議所に相談し、提示されるステップに従いながら市場の有無を確認してください。すでに存在する競合や地域の顧客層の分析、実際の料金調査、そして事業計画の作成を通じて、この活動が生活に必要な収入をもたらすのかを検証することが重要です。日常的に現実離れした労働時間を想定することなく、持続可能な計画を立てる必要があります。
数値が期待に届かない場合は、それを無視してはいけません。むしろ仮定を見直し、収入や提供メニューを多少妥協してスタートする方が、プロジェクトを実現する近道となるでしょう。
キャリア転換で重要なシグネチャーアプローチと顧客選定のポイント
失敗その4 誰にでも好かれようとすること
キャリア転換を希望する多くの人は、長年大企業で働いてきたために「自分の力だけで収入を得られるのだろうか」と信じ切れずにいます。この「インポスター症候群」に似た感覚が、特に大きな悪影響を及ぼすことがあります。それは「顧客を逃したくない」という理由から、専門分野を絞らず幅広いサービスを提供しようとすることです。多くの施術を並べれば、それだけ顧客を獲得しやすいと考えてしまうのです。
しかし残念ながら、2025年の今ではそのやり方は通用しません。現代の顧客は、ユニークなコンセプトや新しい場所の発見、全く新しい体験を求めています。ウェルビーイング分野もその例外ではありません。
実践すべきこと
キャリア転換は単なる仕事の変更ではなく、まったく新しい人生の始まりです。プロジェクトの経済性を確認し、スパセラピストとしての適性や意欲があると判断できたなら、心の声に耳を傾けてください。自分らしい「シグネチャーアプローチ」を選び、スポーツ愛好者、妊婦、高齢者など、自分がつながりたい顧客層を定めて、明確で一貫性のあるサービスを構築しましょう。ただし、必ず事前に市場調査を行い、現地での需要を確認することを忘れないでください。
キャリア転換で直面する事務作業と経営スキルの重要性
失敗その5「独立開業は本物の職業である」ことを忘れてしまう
長年会社員として働いた後にスパセラピストとして独立を目指す場合、実際の施術やマッサージ業務が「氷山の一角」にすぎないことを見落としがちです。実際には、日々の広報活動、新規顧客の開拓、商談や提案書の作成、毎月の請求書発行、URSSAFへの申告、必要に応じた移動の計画など、多岐にわたる業務を自分でこなさなければなりません。特に起業初年度は、この「事務的な側面」に十分備えていないと、大きな壁となり挫折の原因になることがあります。こうした理由からキャリア転換を断念した人も少なくありません。
実践すべきこと
マッサージの研修と同じくらい、起業に関する知識を学ぶことが重要です。起業家ネットワークを探して交流を始め、商工会議所が提供する起業関連の研修(中には必修のものもあります)を受け、ポッドキャストや書籍からも学びましょう。起業家としての文化を築くためのリソースは数多く存在しており、それはキャリア転換においてマッサージの技術習得と同じくらい戦略的に重要です。
そして、もし目の前に大きな壁を感じているなら、一人で抱え込まないでください。すでにその壁に挑み、成功してきた人たちがいます。強い意志さえあれば、あなたも必ず実現できるはずです。