どうなる抗疲労トクホの認可(中)
2014.01.9
編集部
3年間にわたる疲労プロジェクトの成果として、血液中の成分であるアシルカルニチンなど23種類のバイオマーカーを候補として精神・肉体負荷時に発生する疲労度を数値化するため、ヒトヘルペスウイルスを用いた疲労定量化技術を開発した。同技術は、ヒトヘルペスウイルスが細胞の健康状態の悪化を感知して唾液や皮膚の表面に逃げ出す性質を利用して体液中のヒトヘルペスウイルスの発現量を測定することにより日常における疲労度を簡便に定量的に評価したもの。医療の現場や医薬品・食品等の臨床評価に加えて診断キットの開発による疲労度の自己モニタリングの実現にも繋がる技術として期待が高い。
この疲労定量化技術の開発と合わせて鶏肉から抽出したイミダゾールジペプチド(ヒトや動物の骨格筋に存在するアミノ酸結合体)など新しい抗疲労成分やコエンザイムQ10クエン酸など6種類の抗疲労成分について抗酸化作用があることを確認した。
一方、日本疲労学会は「病的疲労を伴わない健常者を対象とする肉体疲労に対する特定保健用食品の臨床評価ガイドライン」を策定(2008年)し、疲労を「作業効率が低下した状態」と定義。同時に、抗疲労という表現についても「疲労と疲労感の両方を抑えること」と定義づけた。同ガイドラインは、抗疲労トクホの評価に用いることを前提に作られた。
こうしたプロジェクトでの成果やガイドラインの策定に伴い、総医研HDの子会社で健康補助食品を販売する「日本予防医薬株式会社」(大阪府豊中市)は、2010年9月にイミダゾールジペプチド飲料「イミダFR」(商品名)のトクホ表示許可(抗疲労トクホ)を厚労省に申請した。抗疲労トクホの申請は、国内で初めてで大きな関心を集めた。
しかし、トクホ申請後に同社は、厚労省からの指摘事項に対応して日常の疲労についての臨床デ―タを提出(2012年9月)。さらに、2013年6月に消費者庁に対し再度、許可申請した。だが、最初の申請から3年を経過していまだに認可されない状態にある。イミダゾールジペプチドを開発した総合医科学研究所では「現在、消費者庁と疲労データについてやり取りしている状態で、いつ認可されるか分からない」と困惑の体。
これまで疲労トクホを申請したのは、同社を含めて3社を数える。その内、2社が途中で申請を取り下げ、同社だけが申請を継続中だ。
このように抗疲労トクホの認可が遅れている理由は、食品成分で期待できる抗疲労能力データが出ているものの、抗疲労成分が細胞に浸透することで、疲労軽減に繋がるのか、医学的、科学学的見地からさらに実証して行くことが必要と見られる。また、疲労という新たなカテゴリーのトクホが初めて公に登場しただけに消費者庁も認可に極めて慎重にならざるを得ないことも事実。現在、同社と消費者庁との抗疲労トクホ認可を巡る動きが最大の焦点となっている。
すでに抗疲労成分イミダゾールジペプチドの抗酸化作用を生かして日本予防医薬㈱は、2009年3月から健康補助食品(サプリメント=写真)として市場に投入した。現在までドリンク剤2種類、ソフトカプセル、錠剤など計5種類のサプリメントを製品化し、通販主体に販売中。