情報発信を行い、ニュースレターを配信し、SNSにも投稿しているにもかかわらず、予約や購買行動につながっていない。そのような状況に心当たりはないでしょうか。あなたは、ウェルビーイングへの情熱や専門知識を誠実に発信し、売上の活性化を目指しています。しかし、その成果は期待した水準に達していません。
もし問題が、コンテンツの質そのものではなく、その「ポジショニング」にあるとしたらどうでしょうか。つまり、あなたが本来届けたいと考えている顧客層に、情報が届いていないとしたら。言い換えれば、ターゲットの「意識レベル」に合わない形で語りかけている可能性はないでしょうか。
5つの意識レベルで整理する顧客理解の視点
顧客の意識レベルという考え方は、コピーライティングの登場とともに広まりました。コピーライティングとは、読者に行動を起こしてもらうことを目的とした文章表現の技術です。この概念は広告分野で広く用いられてきましたが、近年では採用活動のキャンペーンなどでも活用されています。
この理論を体系化したのが、1960年代に活躍したアメリカのコピーライティング界の第一人者、Eugène Schwartzです。彼は、シンプルでありながら本質的な前提を示しました。
人は「解決策」を買うのではありません。自分が問題をどのように認識しているか、その意識レベルに対する「答え」を購入するのです。
つまり、同じ言葉や論拠を使って、まったく同じ伝え方をするべきではありません。あなたの最新の施術やサービスを一度も知らない人と、すでに予約や購入を検討している人とでは、前提となる認識が大きく異なります。
前者は、自分にその必要性があること自体をまだ認識していません。そのため、追加の説明や納得材料がなければ、対価を支払う段階には至りません。
一方で後者は、その段階をすでに超えており、購入や予約に踏み切る準備が整っています。
多くのコンテンツが成果を出せない理由は、ここにあります。ターゲットがまだ到達していない意識レベルに向けて語りかけてしまっているため、行動変容につながらないのです。
成果につながるコンテンツ設計の基本視点
Eugène Schwartzは、顧客の意識レベルを5つの段階に整理しました。これを理解することは、次の点において重要な鍵となります。
- 成果につながるコンテンツを制作すること
- そして何よりも、見込み顧客が購入や予約に至る意思決定のプロセスを、段階ごとに無理なく導くこと
顧客の意思決定プロセスの仕組み
顧客が施術やサービスを予約するのは、ビジュアルが美しいからでも、毎週欠かさず情報発信をしているからでもありません。顧客が行動を起こすのは、自分自身が、あなたの発信内容の中に「自分」を見いだせた場合に限られます。
つまり、コンテンツを読んだときに、「ここで語られている状況は、まさに自分が置かれている状態だ。そして提案されている内容は、今の自分に本当に必要なものだ」と感じられたときに、初めて予約や購入に結びつくのです。
その状態を生み出すためには、5つの意識レベルを踏まえて発信を行う必要があります。これらの段階を理解することで、メッセージを適切に調整し、オーディエンスに本質的に届く表現が可能になります。
例えば、ストレス緩和を目的とした新しいリラクゼーション施術を販売したいとします。その際に直面する可能性があるのが、次に示す5つの意識レベルです。
意識レベル別アプローチ
意識レベル1 無自覚層へのアプローチ
例えば、明日の朝、あなたの施設を訪れる可能性のある典型的な顧客像を考えてみましょう。その人は、強いストレスを感じており、疲労が蓄積し、顔つきもやつれていて、ここ数か月で一気に老け込んだように感じています。腹部の不調も頻繁にありますが、専門医からは医学的な問題は見当たらないと言われています。加えて、睡眠の質も良くありません。
それでも本人は、こうした状態を「仕方のないこと」「よくあること」だと受け止めています。積極的に解決策を探しているわけではないため、あなたが提供している施術やサービスの存在も知りません。そもそも、もっと良い状態になれる可能性があることすら認識していないのです。そのため、たとえ新規導入キャンペーンとして50%オフの特別価格を打ち出したとしても、購入や予約には至りません。
行動変容につなげる初期段階の役割整理
施術やサービスの販売を考える前に、まず必要なのは「気づき」を促すこと
です。今の状態は決して当たり前ではなく、改善の余地があるということを理解してもらう必要があります。
問題認識を促すための初期段階向け表現例
- 「慢性的な疲労 見逃してはいけない3つのサイン」
- 「朝から消耗していると感じるあなたへ。それは当然ではないかもしれません」
- 「お腹の状態が映し出すストレスレベルの正体」
意識レベル2 問題を自覚し始めた顧客
腰の痛みがあり、毎日その状態で過ごすべきではないことは本人も分かっています。ただし、深刻な症状でなければ、できることはあまりないのではないかと考えています。疲れた印象の顔つきについても、年齢や、感じ始めているプレ更年期の影響を思えば、ある意味自然なことだと受け止めています。
施術やケア方法に関する情報不足の課題
この段階では、どのような選択肢やアプローチが存在するのかを、まだ知りません。kobido、madérothérapie、drainage lymphatiqueといったケア方法についても、耳にしたことがない状態です。
施術や製品が応え得るニーズの全体像提示
さまざまな施術や製品が、どのようにニーズに応え得るのかを伝えることが求められます。ただし、この段階で自分が提供しているものだけを前面に出すべきではありません。問題そのものに精通した専門家としての立場を確立し、信頼関係の第一歩を築くことが重要です。
身体の悩みに対応する自然なケア方法の紹介例
- 「drainageとmadérothérapie 脚の重さに悩むときの選び方」
- 「自然な方法でお腹の緊張を和らげる3つのアプローチ」
- 「kobidoとは何か 日本発のナチュラルで心地よいフェイスケア」
意識レベル3 解決策を理解し始めた段階
kobidoやmadérothérapieについては、すでに情報を得ています。関連するアカウントをフォローし、利用者の声を目にし、価格帯や効果が現れるまでの期間についても調べ始めています。何もしなければ状況は変わらないことを理解しており、変化を求めています。そのため、こうしたケアに対価を支払う必要があることも、心理的・金銭的に受け入れ始めています。これは、将来的に売上につなげたいあなたにとって、非常に重要な転換点です。
ただし、この段階でも、あなたがその施術やサービスを提供していることはまだ知られていません。当然ながら、他の施設や提供者と比べて、あなたのアプローチが何を強みとしているのかも理解されていません。
独自性を明確に示す情報発信の役割
この段階でのコンテンツには、2つの目的があります。
- 課題に対して適切な解決策を提供できる専門家であることを明確にし、信頼を確立すること
- 同時に、なぜ数ある選択肢の中で、あなたの提供内容を選ぶべきなのか、その独自性を示すこと
結果の持続性に着目したケア思想の説明例
- 「私がdrainage lymphatiqueを学ぶことを選んだ理由」
- 「drainageとmadéro 持続的な結果を目指す私の考え方」
- 「フェイスケア後に多くの顧客が実感する3つの変化」
意識レベル4 比較検討に入る顧客心理
見込み顧客は、すでに数週間にわたってあなたの情報発信に触れています。悩みは日増しに大きくなり、このままの状態を続けたくないという思いも強まっています。そのため、解決策に投資する準備はできています。これまでに、投稿やストーリー、実績も確認しており、あなたがニーズに応えられる存在だと感じています。
しかし、選択肢が多い環境の中で、まだ最終的な予約には踏み切れていません。不安や迷いが残っており、安心材料を必要としています。
施術前の不安を解消する信頼材料の提示
この段階のコミュニケーションを怠ると、成約の機会を逃す可能性があります。安心感の提供は、販売プロセスにおいて不可欠な要素だからです。必要なのは、信頼の構築と、感情的なつながりの形成
です。後者は、あなた自身の人柄に根ざしたものであり、他者が模倣することはできません。
意思決定直前に必要となる信頼材料の提示例
- 「まだ迷っている方へ 私のエネルギーケアを試してほしい3つの理由」
- 「最初は半信半疑だったSophieが、初回のdrainage後に語ってくれたこと」
- 「施術を任せる前に、よくいただく3つの質問」
意識レベル5 予約直前の意思決定段階
この段階では、顧客はすでにあなたのことを理解し、信頼しています。納得した上で、あとはタイミングや空き枠、背中を押す小さなきっかけを待っている状態です。直前の空き枠やキャンペーンを告知する投稿を行うとき、あなたが語りかけているのは、このレベル5の顧客です。
そのため、実際に予約へと進む可能性があるのは、この意識段階に到達している人だけです。レベル1、2、3、4にいる顧客は、自分のこととして受け取れないため、行動には移りません。
しかし残念なことに、多くの場合、「売りたい」という思いから、こうした投稿を最優先で行ってしまいます。なぜそれが機能していなかったのか、その理由が、ここで見えてくるはずです。
成約を見据えた予約導線の最適化
この段階では、行動に移るまでのハードルを、徹底的に下げる必要があります。次の予約を入れないという選択肢が考えられないほど、魅力的なオファーを提示し、投稿の目的は明確に「成約」に置くことが求められます。
空き枠提示による予約判断の提案例
- 「今週の空き枠は残りわずか。木曜17時、または金曜11時」
- 「フォロワー限定オファー。日曜夜までkobidoが15%オフ」
- 「今週、まだ3つのウェルビーイング時間が空いています。次はあなたの番です」
売上につながらないコンテンツ発信の構造的要因
ここまで読めば、その答えは明らかです。他の施設や事業者の発信を少し見渡してみると、同じ問題が至るところで起きていることに気づくでしょう。
多くのウェルビーイング分野のプロフェッショナルは、レベル5の顧客にしか語りかけていません。
空き枠、キャンペーン、注目の施術を告知し、まるでオーディエンス全員が「予約」ボタンに指をかけて投稿を見ているかのような前提で発信しています。
しかし実際には、多くの人はまだレベル1か2にいます。これは、イタリア人の顧客に向かって中国語で話しかけ、「なぜこの特別な提案が伝わらないのか」と不思議に思っているようなものです。あなたに専門性や情熱が欠けているわけではありません。ただ、顧客が抱える問題に対する意識レベルと、あなたの発信内容が噛み合っていないだけなのです。
その結果、反応はほとんど得られず、問い合わせも来ず、成約にもつながらない。
そして、フラストレーションだけが積み重なっていきます。
信頼関係を積み重ねる継続的な投稿効果
投稿数を増やせば売上が伸びるわけではありません。必要なのは、より適切な内容で発信することです。顧客の意識レベルに沿ってコミュニケーションを構築すると、次のような変化が生まれます。
- これまで自分にニーズがあると気づいていなかった見込み顧客を引き寄せることができる
- 投稿を重ねるごとに、信頼関係が育っていく
- 売り込みをせずとも、自然に予約や購入につながる
- そして何よりも、あなたの情報発信が、本来持つべき力を発揮し始める
直近投稿を見直すセルフチェックの視点
まずは、シンプルな診断から始めてください。直近の投稿を10本見直し、次の問いを自分に投げかけてみましょう。
「このコンテンツは、どの意識レベルに向けたものだろうか」
もし、そのほとんどがレベル5向けであれば、次に何をすべきかは明確です。
