連載・異業種から化粧品分野に新規参入した上場各社の化粧品事業に迫る【13】キューピー、化粧原料と化粧品の両輪で事業展開(上)
2015.02.16
編集部
マヨネーズに代表されるキューピーの化粧品事業は、原料と化粧品の両輪で、事業展開している点に特徴が見られる。両輪の1つは、食品、医薬品分野の原料に加えてヒアルロン酸(グルクロン酸とN-アセチルグルコサミンからなるムコ多糖の一種)や卵殻膜、卵白などの化粧品原料メーカーとしての顔。もうひとつの輪は、化粧品原料を使ってスキンケア化粧品を実用化し、事業展開する化粧品メーカーとしての顔。
同社は、1980年代初頭にマヨネーズの主原料のひとつで、生命誕生に必要なすべての要素が含まれる卵から有用成分を取り出して活用するファインケミカルの研究をスタートさせた。以来、現在まで化粧原料・素材として開発した商品アイテム数は、機能性ヒアルロン酸4品目、ヒアルロン酸ナトリウム9品目、卵殻膜3品目、卵黄由来の機能性皮質3品目、卵白由来の原料3品目、卵黄レシチンと既存の化粧原料を組み合わせたプレミックス製剤のコスメソーム2品目、植物グリコーゲン1品目の合計25品目にのぼる。
この化粧用ヒアルロン酸の中でユーザーニーズの高いヒアルロン酸として①角質層や毛髪への浸透を図った保湿機能に優れる低分子のヒアルロン酸「ヒアロオリゴ」(浸透型ヒアルロン酸・粉末)②肌へのしっとり感や髪の毛に艶のあるしなやかさを補うスキンケアとヘアケア用の吸着型ヒアルロン酸「ヒアロベール」(水溶液)③親水性のヒアルロン酸ナトリウムの一部に、疎水基を付けた修復用ヒアルロン酸「ヒアロリペア」(粉末)などがある。
こうした化粧用と合わせて食品用や医薬品用のヒアルロン酸を含めると同社が商品化したヒアルロン酸の種類、品目は、他社を凌駕。
現在、市場投入している主なファインケミカル化粧原料は、ヒアルロン酸ナトリウムや卵黄に含まれる機能性皮質「卵黄レシチン」、卵白に脱糖処理をして噴霧乾燥させたアルブミンなどの「卵白素材」、タマゴの殻の内側にある薄膜で、加水分解して得た水に可溶な二層の網目状構造(写真)をした「卵殻膜」などがあり、まさに”ヒアルロン酸の総合デパート”の異名を誇る。
化粧原料を含むファインケミカルの事業体制は、ファインケミカル本部と研究開発本部(研究開発に必要な技術を開発する技術研究所とその技術を活用して実際の商品を開発する商品開発研究所がある)が連携しながら皮膚の真皮に存在し、保湿を支えるヒアルロン酸をはじめ、卵の殻の内側にある薄膜「卵殻膜」や卵黄、卵白、植物グリコーゲンなどを由来とする化粧原料・素材の開発、製造・販売(化粧品メーカー向け)を行う布陣となっている。
同社の前期(2014年11月期)における化粧、食品、医薬品原料などのファインケミカル総売上高は、化粧品ヒアルロン酸や医薬用EPAの好調で107億円を達成。今期もファインケミカルの売り上げは増収を見込んでいる。また、化粧原料におけるヒアルロン酸の売上比率は約8割を占め主力原材料となっている。
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