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【15】ホーユー④ ~毛髪研究で産学連携を推進~

未公開企業でありながら、売上高469億円(2015年10月期)を達成しているホーユーのR&Dも注目の的。総売上高に占める研究開発予算は明らかではないが、産学連携による研究開発の取り組みは活発だ。

ホーユー、マラセチア菌 (1)主な研究開発成果としてホーユーは、同じグループ企業のクラシエホームプロダクツと共同で、頭皮トラブルの原因が頭皮に存在する菌の一種「マラセチア菌」(写真)の過剰繁殖であることを確認。同時に、ボタンの根の皮から抽出した成分「ボタンピエキス」が、頭皮のマラセチア菌のみを選択的に減少させることを発見した。
この研究成果であるボタンピエキスを配合したシャンプーを商品化し、2014年秋から市場に投入するなどシナジー効果を上げている。

名古屋大学との共同研究成果も注目される。巨大電子顕微鏡で、毛髪メラニン内部の3D構造を明らかにするとともに、ヘアカラーリングによるメラニンの変化を捉えることに成功した。
メラニンは、径1μm以下と極めて小さく、その上、あらゆる溶媒に溶けないことから観察や組成分析が困難だった。電子顕微鏡においても電子線がほとんど透過しないため、メラニンは黒く映るだけで、部構造まで確認することができなかった。
毛髪メラニン内部の3D構造の解明は、名古屋大学エコトピア科学研究所に設置された走査透過型とよばれる観察方式を採用した超高圧電子顕微鏡(総重量330トン)使って、毛髪の横断面切片を作製し、電子染色等の処理を施して観察・実験した。その結果、毛髪切片を-70度から+70度まで2度ずつ傾けながら約70枚の観察像を取得し、コンピュータ上でメラニンの三次元像を構築した。また、ヘアカラーで、髪を明るくしていくと、メラニンの外側からではなく内側から壊れていくことも明らかにした。
この研究成果を基に、必須アミノ酸の1種である「スレオニン」にヘアカラーの色持ちを向上させる効果があること発見。以来、商品開発への応用に取り組んでいる。

名古屋大学大学院の研究グループとの共同研究では、ヘアカラー(酸化染毛剤)で染色された毛髪のメラニンに毛髪組織と比べて多くの染料が染着していることを発見した。
へアカラー剤で染めた毛髪の測定は、最先端の分析装置「高解像度ニ次イオン質量分析計」を使って行った。その結果、ヘアカラーで染色された毛髪のメラニンは、キューティクルやコルテックスなどの他の毛髪組織と比べてより多くの染料が染着していることが判明。メラニンがヘアカラーリングの重要な染着部位の1つであることを初めて明らかにした。

引き続き、ヘアカラーやヘアケア剤の作用メカニズムに関する研究を進め、得られた知見を製品性能の向上のために積極的に活用する。

ヌーヴェル日本版(LNE)公式サイトwith美容経済新聞 2025年6月正式リリース!

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加藤勇

顧問記者/ジャーナリスト

元日刊工業新聞編集局部長。欧州、米国特派員を含め記者歴通算45年。ベンチャー、中小・金融政策専門経済ジャーナリスト。「レバレッジ金融至上主義の崩壊」など著述多数。本誌では主に、経済部門、企業取材を担当。

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