漢方医学の発展に厚労相や日本医師会から力強いエール
2018.01.22
編集部
日本漢方生薬製剤協会(会長・加藤照和氏)の新年祝賀会が19日、都内のホテルで開催され、会長の加藤氏は「国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョン研究会の提言書を踏まえ、5か年の中長期事業計画2017に沿って様々な課題解決にスピード感をもって取り組んでいく」と強調した。
同研究会の提言書は、昨年3月に公表された。これを受け、日漢協でも「漢方製剤等の必要性」「研究の推進」「品質確保と安定供給に向けた取り組み」「医療保険制度における位置づけ」「海外展開の推進」「産学官・国民との連携」の6つの提言について、組織横断的なプロジェクトを設置して、漢方を取り巻く課題解決に向けて活動している。
中でも会員会社の間に共通する課題は原料生薬の安定確保。日漢協の調査でも国内生産生薬の購入・増産を希望していることが多いことがわかっており、厚生労働省、農林水産省とともに薬用作物の産地化に向けたブロック会議を開催している。「国産化の推進には生産者の組織化の後押し、設備投資の援助が必須。生産者に対する何らかのサポートがなければ国内栽培の拡大は困難なので、力添えをお願いしたい」(加藤氏)と訴えた。
また、昨年の薬価制度の抜本改革の議論において、基礎的医療品の対象薬効分類に生薬(刻み生薬)が新たに追加されたことを評価。併せて「医療用漢方製剤・生薬製剤も基礎的医薬品に適用されるよう引き続き粘り強く要望していきたい」(加藤氏)との考えを示した。
来賓の加藤勝信 厚生労働大臣は、「超高齢化社会を迎える中で、疾病の重症化予防による健康寿命への延伸など、漢方医学の果たす役割は今後ますます高く、漢方の需要は高まっていくと考える」と述べ、漢方が日本の医療の中で重要な役割を担っているとの認識を示した。
武見敬三 参議院議員は「10年前に比べると政府もこの分野(漢方)に関わる政策をまじめに考えるようになったのは一つの進歩」と高く評価しつつも、「まだまだやることはあるので、役立つことがあれば、喜んで協力させてもらう」と力強いエールを送った。
また、日本医師会の今村定臣常任理事が、会長代理の祝辞の中で、「漢方のエビデンス構築により国内だけでなく海外でも漢方の臨床上の評価がますます高まることを期待している」とエール。「治療が必要な患者に対して漢方が医療保険の中で処方されていくよう、引き続き国に強く働きかけていく」ことや「平成30年度予算編成に関係部局へ漢方安定供給のための予算確保を要望した」ことを紹介した。
佐藤弘 日本東洋医学会会長は、「フレイルの概念が老年医学の立場から出されたことに注目しており、治療薬の観点だけでなく、病態把握の面で東西両医学の考えが近似したものになりつつある」と評価。また、日本医師会が平成30年度予算概算要求に、新規として医療用漢方製剤のエビデンス追求とその安定供給への支援を盛り込んだことに感謝の意を示した。
このほか、石井甲一 日本薬剤師会副会長や木村政之 日本製薬団体連合会理事長も漢方の将来ビジョン研究会の提言書などを高く評価し、漢方発展へエールを送った。
- 参考リンク
- 日本漢方生薬製剤協会