中医学と女性の健康をテーマにシンポジウムを開催
2018.04.23
編集部
中国留日同学総会(会長・汪先恩氏)主催の日中友好40周年 中医学知恵シンポジウム第1回「中医学と女性の健康」が21日、都内で開催され、国内の第一線で活躍する中医師ら6名による、不妊症を中心とした中医養生法や治療法などが紹介された。
第1部では、中医学と西洋医学の融合医学である“中西医結合”を専門とする汪氏が、「不妊・不育症に対する中医治療の原理」と題して講演。中医学では、「不妊・不育症は脾・肝・腎の3つの蔵の問題。これを調節することで治ることが多い」(汪氏)と強調した。治療に成功した具体的な症例を紹介しつつ、「体全体を調整することで、元の正常な生殖体質に戻す」(同氏)ことで子供を授かることができるとした。
徐福漢方薬局・鍼灸院代表の何仲涛氏は「女性アンチエイジングの中医臨床報告」と題して、閉経後の漢方・鍼灸治療の症例を中心に紹介。「生理は面倒だから止めてほしいという女性もいるが、生理は女性の健康の大切なバロメーター」(何氏)といい、正常な生理があって初めて健康が保証されると訴えた。講演では、3例の閉経を考察し、「すべて腎気が衰えてエイジングが進んだ結果だ。腎気を補って内蔵を調和させることで月経が再開される」(同氏)といい、腎気に相当する視床下部・下垂体・副腎皮質系統などの機能を漢方薬と鍼灸で回復させることができることを示した。
株式会社誠心堂薬局学術部課長の楊晶氏は「中医学の不妊症治験」と題して講演。中医学においては「卵子の染色体異常」は腎の衰えと考え、補腎法を使う。例えば腎中陰陽両虚に使う漢方薬として亀鹿二仙丸を挙げた。「卵子のミトコンドリアの減少」に対しては気虚と考え補気し、「卵子の顆粒膜細胞の減少」では血虚として養血する。中医学で妊娠力を高めるポイントは「漢方専門家の相談による煎じ薬にこだわる」「動物生薬を使った補腎法を使う」「漢方と鍼灸の併用」を挙げ、併せて同薬局独自の周期調節法も使うことで妊娠の成功率を上げることができるとした。
第2部では、本草薬膳学院院長の辰巳洋氏が「薬膳と女性」について講演。女性に使う弁証論治施膳として「補腎法」「調肝理気法」「活血調経法」「健脾益気法」「祛湿法」を紹介した。「体を温めることは女性にとって重要。温めることで五臓の動きを活発にし、気の巡りと血の流れがスムーズになり、生理が起こって妊娠できるようになる」(辰巳氏)。具体的な薬膳として“艾葉当帰生姜茶”や“杜仲鶏肉と干しぶどうの煮物”などを紹介した。
誠心堂薬局代表取締役の西野裕一氏は「中医学で考えるエイジング美容」と題した講演の中で、月経周期と皮膚トラブルの関係性に言及。低温期は皮膚の状態が安定するものの、高温期には肌荒れなどのトラブルが多発することをデータを使って示しつつ、こうしたトラブルに対して同社独自の周期調節法(周期美容法)が有効であることを紹介した。周期調節法は、皮膚の周期変化に合わせて中医薬、中医鍼灸などを施す方法で、滋陰と清陽を組み合わせながら、治療の比率を調整していく。「内面と肌はつながっていることを認識してほしい」(西野氏)と強調した。
最後に誠心堂薬局学術部の白芳氏が「中医学で更年期をイキイキ過ごす」と題して、更年期症状の中医治療について紹介した。中国農村部女性の平均閉経年齢が47.5歳に対して、米国女性の平均閉経年齢は51歳と大都市に向かうほど閉経年齢が上がっているデータを示し、栄養状態や医療環境が閉経に影響していると指摘。「早めのケアで女性ホルモンの低下をゆるやかにさせることができるのではないか」(白氏)との考えを示した。
また、過去に実施した月経期間観測調査によると、「ほとんどの女性の月経期間は7、5、3の奇数であった」(白氏)として、陰陽の変化をベースにした周期調節法が“本治”だと強調。「月経周期リズムを予測することが更年期などの治療にとても参考になる」(同氏)といい、例えば7日間の人であれば49歳に更年期を迎えることから、42歳または35歳から早期予防に取り組むなどといった例を挙げた。「35歳を過ぎたら自分の症状を真剣に話せる相手(漢方相談員など)を見つけてほしい」(同氏)と更年期症状の早めの対策を訴えた。