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【専門家インタビュー】2025年にヒットする美容テクノロジーと化粧品の条件

イントロダクション

2025年を見据え、LesNouvellesEsthétiques(以下LNE)は、トレンドとブランドネットワークの専門家であり、TrendSourcingの創設者であるパスカル・ブルース氏と対談を行いました。このインタビューは、美容とウェルネス業界、特にエステティシャンに対する消費者の期待を理解することを目的としたものです。

消費者ニーズとテクノロジーの進化

LNE: 2024年には「ビューティーテック」、つまり自宅で使える美容機器のトレンドが見られましたが、2025年にはどうなるのでしょうか。

パスカル・ブルース: この分野は引き続き需要が伸びており、成長し続けるでしょう。ですが、フランス市場は、アジアやアメリカに比べると遅れをとっています。顔も体も、全身においてです。特に、ライトセラピーが人気で、LEDマスクは500〜1200ユーロと非常に高価ですが、人気があります。高価な機械を買わずとも、高度な技術を試すことができるため、エステに行くことのメリットが大きいと感じる人が多いです。しかも、エステでは個別のアドバイスも受けられますよね。

LNE: 2025年には、消費者はどのような化粧品を求めるでしょうか。

パスカル・ブルース: 化粧品の需要は明確です。国を問わず、消費者は確実な効果と良い使用感を求めています。そして、それが自然由来であれば、なおさら良いのです!自然由来の有効成分は非常に注目されています。皮膚科学ブランドのAvèneは、植物由来成分であるバクチオールをDerm Absolu(ダームアブソリュ)シリーズに配合しました。

LNE: オーガニック化粧品の人気はどうでしょうか。

パスカル・ブルース: ラベル認証、特にオーガニック認証を求める消費者は、いつでもいるでしょう。クリーン、ナチュラル、またはオーガニックであり、効果が証明された化粧品ラインを少なくとも一つは提供することが不可欠です。

「イン」と「アウト」の視点を取り入れる重要性

LNE: 「イン」と「アウト」が最近注目されていますが、エステティシャンはこれを取り入れるべきでしょうか。

パスカル・ブルース: 2024年の連邦美容皮膚科専門家会議(DEFEE)において、ある皮膚薬理学者がまさに、化粧品はスキンケアの20%しか占めないと指摘しました。皮膚の健康は80%が私たちの摂取するものに依存しています。そして、これはエステティシャンがしっかり考慮すべき点です。これは、彼らの学びの方向付けとなり、またコンセプトを異なる視点から考えるきっかけにもなります。エステティシャンは長期的に良い結果を得るために、この重要な側面を考慮する必要があります。エステティシャンが、顧客の糖分摂取や食生活について尋ねることは多いですが、これは良いことです。包括的な診断をすることで、他サロンと差別化でき、顧客がサロンに足を運ぶ大きな理由となります。

LNE: 消費者はそのことを十分に理解しているのでしょうか。

パスカル・ブルース: 残念ながら、十分ではありません。だからこそ、エステティシャンはそれを伝える役割があります。

LNE: 季節に応じた化粧品のテーマについてはどうお考えですか。

パスカル・ブルース: 私はまた、季節に応じた化粧品のテーマが十分に活用されていないと思います。これは食生活とも関係があり、皮膚や体のためには季節の食べ物を摂取することが重要です。この考え方は、東洋では普及しているのですが、西洋のブランドはほとんどが活用していません。フランスの化粧品ブランドのHorée(オレ)は、この市場に参入し、新鮮さを重視し、短い流通経路を用いているのが特徴です。どのブランドでも、季節限定の製品を1つまたは2つ作ることができると思います。実際、私たちが冬に使うクリームと夏に使うクリームは違うことが多いじゃないですか。テクスチャーや、季節ごとに好まれる香りは、違いますからね。

2025年の美容・化粧品トレンドとエステティシャンの役割

LNE: 2024年5月に(フランスにおいて)施行された法律により、エステティシャンはレーザーや光脱毛を使用できるようになりました。これにより、エステでのサービスにどのような影響がありますか。

パスカル・ブルース: この法令は顧客を安心させるでしょう。おそらく、その結果として、クリニックでのレーザーや光脱毛のサービスの需要が増加していきます。そのため、クリニックは一般の消費者が購入できない機器の品質について、積極的に知らせることが重要です。

未来のウェルネスと社会的課題への対応

LNE: 美容と食事を組み合わせたウェルネスのコンセプトが増えてきています。これは一時的な流行りでしょうか。それとも長期的に続く形だとお考えですか。

パスカル・ブルース: 確かにこのコンセプトはかなりうまくいっていますが、高価なため、少々富裕層向けと言えるでしょう。私は、美容施術とドリンクや栄養補助食品を組み合わせることは面白いと思います。先ほどお伝えしたように、西洋では「イン」と「アウト」についての理解はまだ深まっておらず、フランスの市場は遅れています。しかし、若い世代はこれを受け入れる準備ができていて、この2つを組み合わせることが当然だと感じているようです。

LNE: 若い世代はエステ界のターゲット層として狙いやすいのでしょうか。

パスカル・ブルース: 若い世代は、ライフスタイルやウェルネスを重視しているので、エステの新しいコンセプトには共感しやすいです。現代的なデザインや、若者向けの雰囲気を意識すれば、狙いやすい層と言えるでしょう。

LNE: フランスや世界的に、若い世代に人気のある美容のコンセプトにはどんなものがありますか。

パスカル・ブルース: いくつかの例を挙げましょう。Ma Thérapie(セリーヌ・ジュリアン)、Yodi Beauty(スペースケア)、Spa Alaena、Clarins(マリー・デプランによるフェイシャルケア「Clarins Precious」)、Seasonly、Aimeskincare、Face Kult、Holidermie、Kure Bazaar、La French Beauty、Oh my creamなどです。さらに、シャネルはパリのショセ・ドゥ・ラ・ミュエットに新しい美容スペースをオープンし、そこで独自のフェイシャル・ボディ施術プラン『La Fascia』が提供される予定です。

LNE: トレンドとなっている健康法の中で、ヨガもその一つですね。これについてどう思いますか。

パスカル・ブルース: 確かに、ヨガはとても普及しましたね。コロナ後、ヨガインストラクターの養成が爆発的に増加し、今ではスパなどで、ヨガクラスを目にしないことはないほどになりました。これは消費者のリラクゼーション方法の一つです。私たちが生きている環境はストレスが多く、時には不安を感じることが多いため、若者だけでなくすべての人々が発散方法を求めていることは注目すべき点です。消費者は現在、健康を促進するためのツールや活動(瞑想、フェイシャルヨガ、ゴングバス、マッサージ、ファシアセラピー、指圧、サプリメント、ナチュラルジュース、ウォーキングやランニング、リラックス用のエッセンシャルオイル、睡眠用オイル、セックス・トイ、個別コーチングなど)の選択肢が広がっているので、成果を出すためには、それらを組み合わせることが賢明でしょう。以前はケアや技術を組み合わせることが一般的でしたが、今ではそれを超えて、ウェルネス活動を組み合わせる時代です。いくつかの例としては、ピラティス、リフォーマーやヨガ、そしてYodi Beautyの『Pleine conscience, Mindful Boost Jeunesse(マインドフルネス・ブースト・ユース)』プログラムなどがあります。これはマッサージセラピストのエマニュエル・カプス氏によるもので、小顔流、リンパドレナージュ、そしてディエン・チャムの顔の反射療法に基づいた指圧を組み合わせたものです。美とは内面から来るものですから、リフレッシュし、ゆったりとした時間を作ることが重要です。

LNE: これは、現代における精神的な健康を保つことの重要性にも繋がりますね。

パスカル・ブルース: その通りです。特にフレグランスがその例です。アメリカではこれを『ファンクショナル・フレグランス』と呼び、メンタルに効くフレグランスが増えています。フランスでは、AmoiやTilto Careといったブランドが登場しています。朝や夜のスキンケアの際に、商品の香りが心を安らげるのに役立っています。この分野は大きな成長を見せており、今後も衰えることはないでしょう。消費者は安心感を求めています。例えばTilto Careでは、香りを試した際に、癒しを感じたと報告されています。これは新しいことなんです。このような言葉が出てきたのは、まさに現代の象徴です。この癒しのニーズは、リラクゼーション活動やグッズによって満たされています。

LNE: 香水をつける行為は、仕事に出かける前にしたりする、ただの習慣だけではなくなったのですね。

パスカル・ブルース: そうですね。以前はずっと一種類の香水だけを使うことが一般的でしたが、今では多くの香りを使い分けるようになりました。若者たちは香水を重ねづけしたり、服装に合わせて香りを選んだりしています。香りがメンタルにもたらす効果は非常に興味深いです。さらに、コロナ禍で外出を制限されたことも影響し、インテリア用のアロマやキャンドルの売り上げが急増しました。香水のブランドDiptyqueは、インテリア用のフレグランスやキャンドルを提供するブランドとして、パリのサン・オノレ通りに素晴らしい店舗をオープンしました。

LNE: 先ほどおっしゃっていたストレスの多い環境について、関連する革新的な事例はありますか。

パスカル・ブルース: 睡眠に焦点を当てたケア法がますます増えているのが見られます。多くのサプリメントが市場に登場しており、植物性メラトニンも話題になっています。スパでは、睡眠を改善するためのケアが多く開発されています。エステサロンでも、顧客に適切な睡眠をサポートするサービスやエステティシャンからのアドバイスを通じて、睡眠に関するニーズに応えています。

*フランスの美容ブランドCaritaとYon-Kaは、睡眠改善のケア製品を開発。Yon-Kaは、SoinSleepTherapyで2024年のH.ピエラントニーイノベーション賞を受賞。

LNE: フェイシャルケアも非常にトレンドになっています。これらのサービスはどのようにして更に発展していけるのでしょうか。

パスカル・ブルース: 今ではすっかり定着した小顔流も初めは広めるのに時間がかかったように、時間をかけて普及させていく必要があります。それが現在の状況です。最近では、ますます多くのフェイシャリストやブランドが独自のプログラムを作り出しています。私も、MaThérapieを開発したセリーヌ・ジュリアン氏の施術を試す機会がありました。それは、小顔流、Jacquet(ジャケ)法によるつまみマッサージ、呼吸法、クリスタル、チベットボウルなどを組み合わせたものです。エネルギッシュでリラックスできるメソッドです。特に40歳未満の人々に人気があります。

*LBFacialistes(フェイシャリストアカデミー)は、フェイシャルケアの先駆者の一つであり、その設立以来、生徒の数は増加し続けている。

LNE: 気候変動は、現在、深刻な社会的課題となっています。それに伴いスキンケアのニーズも変化する中で、化粧品業界ではどのように対応していますか。

パスカル・ブルース: 私は、気候変動が肌、美容、そして健康に与える影響について、ClimateAdaptiveCareという調査を行いました。一番重大な問題は、湿度と暑さ、そして急激な気温の変化です。これらは体温調節に影響を及ぼし、精神面にも大きな影響を与えます。肌に関しては、ニキビやアトピー性皮膚炎の増加として現れます。つまり、気候によって、ニーズは異なるのです。例えば、少し前にDr.Haushkaでケアを受けた際、冬向きの香りであるムアラベンダーを肌に塗ってもらい、包み込まれるような心地よさを感じました。これは非常に理にかなっていると思いました。夏なら柑橘系の香りを好みますからね。

また、アジアは気候変動にすでに適応しています。暑さ対策として、冷感フェイスクリームが開発されています。頭皮用の同様の製品もあります。さらに、湿度の高い日には髪が首にくっつかないよう、肌にのせられるパウダーもあります。また、暑さの中で化粧直しを頻繁にしたくないという人も多く、落ちにくく崩れにくいメイクアップ商品に対する需要も高まっています。

ヌーヴェル日本版(LNE)公式サイトwith美容経済新聞 2025年6月正式リリース!

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DORIANE FRÈRE

DORIANE FRÈRE

国際版コラム責任者/ジャーナリスト

フランス雑誌『Les Nouvelles Esthétiques』のコラム責任者でありジャーナリスト。

  1. 【専門家インタビュー】2025年にヒットする美容テクノロジーと化粧品の条件

  2. 深い呼吸で結果が変わる!エステティシャンのためのマインドフルネスメソッド入門

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