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アップスタイルの伝統を継ぐ!新井唯夫が紡ぐ“真の美しさ”の哲学

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花上:この企画では、新井唯夫さんがどのようにして美容業界を歩まれてこられたのか、また、ご自身の美容に対する想い、業界に対するお考えなどをお伺いさせていただければと思います。本日はどうぞ、宜しくお願いいたします。

新井:宜しくお願いいたします。

花上:新井さんといえば、ヘアメイク業界では「アップスタイル」の第一人者として、確固たる地位を築かれていらっしゃいますね。また、テレビや雑誌など、さまざまなメディアでもご活躍され、美容業界に限らず多くのファンが存在しています。そもそも、どのようなきっかけで美容業界に足を踏み入れられたのでしょうか。

新井:私は、祖母が日本髪結いの家元、両祖母、両親が美容師、という生粋の美容師家系に生まれました。とりわけ、父は日本髪結いの教えを受けて、現代のアップスタイルの独自の技術を確立。「美容研究全国新井会」という、アップスタイルの研究会を組織し、その技術を全国に広めました。私はその二代目として、アップスタイルの技術を伝承しています。

花上:日本古来の髪結いの技術を受け継がれていらっしゃることが、アップスタイルを得意とされている由縁なのですね。アップスタイルというのは難しい技術ですか?

新井:そうですね。髪結いに伝わるオーソドックスなアップスタイル、いわゆる「日本髪」はとくに難しい技術だと思います。最近では、ヘアサロンで提供するスタイルのほとんどが洋風で、カットやパーマが重視されるようになっています。“結いあげる”という基本的な技術自体、できる人があまりいなくなっているのが現状です。

花上:もともと、家業である美容の世界に興味があったのですか?

新井:僕がスタイリストになった頃、青山とかで横文字のお洒落なヘアサロンが流行し始めたときでした。ですから、そのときは「髪結いなんて今どきじゃない」と、じつは思っていたんです。しかし、そのような折に父親が他界しまして。そのときに初めて、「このまま終わらせたくない。この技術をなんとか残していきたい」という気持ちになりました。そこからまた、アップスタイルを必死に勉強し直しました。
父が亡くなってからは「新井会」もいったんはなくなってしまったのですが、古くからの先生も取り込んで組織を復活させ、全国で講習会を開くようになりました。

花上:過去の講習回数は1700回以上、受講生は年間2万人にも及ぶそうですね。古くからの技術をそこまで大きく復活させるのには、大変なご苦労があったのではないでしょうか。

新井:そうですね。以前の新井会は若い人たちが入りづらい構図になっていましたので、まずはそこを見直しました。組合・ディーラー・メーカーとの連携を上手にとって、誰もが参加できるような仕組みづくりをしてきました。また、講習会やショーなどの催しが盛り上がるよう、さまざまな企画を練って開催プランに反映させました。現在においても、来てくださる方に「来てよかった」と思われるように、毎回、さまざまな企画や演出を考えています。

花上:新井さんがご出演されるヘアショーや講習会は、かなり盛り上がるそうですね。

新井:私は文章を書いたり、絵を描いたりするのも好きなものですから、たとえばヘアショーにおいては、髪のスタイリングだけでなく、詩やイラスト、トーク、音楽、映像などを駆使したショーを行います。ヘアという枠にとどまらず、私の中から湧き出る“美”に対する感情を、いろいろなツールを使って表現させていただいています。その感情を観客のみなさんと共有させていただいて、会場をひとつにすることを目指しています。

花上:エンターティナーなのですね。新井さんは講習会やショーだけでなくサロン空間や粧材、衣装、アクセサリーにいたるまで、本当にいろいろなものをプロデュースされていらっしゃいますよね。最近ではエステティックを含めたトータルサロンをプロデュースされていらっしゃいますが、どのようなきっかけがあったのでしょうか。

新井:たとえば、美しい写真を見たとき、被写体の形や表情、アングルや色味の要素がきれいに絡み合ってこそ、「美しいな」と思います。また、動いている人間でいえば、髪型やファッションもそうですが、表情や雰囲気や仕草、話し方、視線など……。その人を構成する一つひとつの事象すべてが重なり合って、その人のよさを引き出していると、「素敵だな、かっこいいな」と感じさせます。そんな風に美を追求していったとき、肌や体の健康を含めた“素材美”を突き詰めたいと思いました。
人の体を構成する肌、そして体を根本から美しくしたいと思いました。そのような想いから、ヘアだけでなく、フェイシャルやボディ、デトックスなどを提供できるトータルサロンをプロデュースしました。

「真の美しさ」は、肌や体を外側からきれいにするだけでは、醸し出すことはできないですよね。美しいな、と思う人って、無邪気に笑う表情を自然に見せることができたり、幸せできらきら輝いていたり、何かに必死に立ち向かっていたり――。

そんな風に、内面から純粋に湧いてくるものがにじみ出てこそ、本当のその人の美しさを表わすことができるのではないでしょうか。私は、それぞれの人が美の体験を通じて、人生の喜びを感じ、輝く未来を描いてほしいと願っています。そしてこれからも、そんな幸福の感情を生み出せるモノやコトを、どんどんプロデュースしていきたいですね。

花上:素敵なお話をありがとうございます。そのような美に対する哲学が、あらゆるもののプロデュース力につながっているのですね。

美容業界に対する想い

花上:“伝統を守り抜く”ことは並大抵のことではないと察しますが、2代目として受け継がれたときにご苦労されたことなどはありますか?

新井:そうですね。かつて父が主宰していた時代には、個々の美容師が各支部に組織された状態で講習会が行なわれていました。すると、次第に派閥ができたり、古くからの先生方で固まってしまったりして、若い人たちが入りづらい雰囲気ができ上がってしまっていました。

私が2代目として受け継いだとき、なんとかしてそのシステムを変えていきたいという思いがありまして。まず、美容ディーラーやメーカーに声をかけました。ディーラー・メーカーに講習会を主催していただいて、受講料集めや運営を行っていただく代わりに、そこで利益を生んでもらう。そうすることによって、それまで主催していた美容師はゲストという立場になり、運営の手間も省けます。また、ディーラー・メーカーの方々に宣伝していただくことで美容師ならば誰でも参加できる仕組みづくりが実現できる。そういったシステムにした結果、業界の中での連携が上手にとれるようになったと思います。

花上:そういった仕組みづくりは美容業界の向上にもつながりますね。素晴らしいと思います。

新井:はい。業界の発展には、ディーラー・メーカー・サロンがお互いにwin-winの立場でなければならないと思いました。やはり業界が大きくなるにつれて、いろいろな意味で偏りが出てきてしまうのは否めません。しかし、それでは技術や情報の共有ができないのも事実です。ですから、講習会やイベントの人気が高くなってくると、受講料をはね上げたり敷居を上げたりするのが一般的ですが、一定の金額以上は上げないような規定を作るなどして、平等なシステムを実現しました。

花上:なるほど。エステティック業界にも見習うべき点があることを感じます。ところで、新井さんは、ヘアメイク業界で頂点を極められている方の一人ですね。とくに「アップスタイル」の第一人者として、確固たる地位を築かれていらっしゃいます。その陰には多大なる努力やご苦労があったことと思いますが、そのように高い目標を達成するまでの道のりでは、何が支えになっていたのでしょうか?

新井唯夫02_Ph01

新井:人間というのは生きる上で、つねに誰かと接しながら生きていますね。とくにメイクアップやエステティックに関わる仕事をしている中では、相手のことをよく観察したり、気持ちを理解したりすることが技術以上に重要なことになってきます。私は、「相手がよくならないと、自分もよくならない」、逆も然りで「自分が良くならないと、相手もよくならない」そんな風に考えながら、自分を成長させてきたように思います。

花上:相手と自分を相互に思いやる気持ちを大切にしてこられたわけですね。新井さんが講師を務める講習会の中でも、そのような精神論をよくお話しになられるのでしょうか。

新井:はい。よくお話しさせていただいています。
たとえば、「『いくら練習しても技術が上達しないが、優れた人間性を持っている人』と、『非常に優れた技術があるが、人間性を欠いた人』は、どちらが先に成功するか」といった類のお話です。結果からいうと前者であるわけですが。いくら技術に長けていても、相手の心を見抜く目がなかったら全然関係ないことをしてしまうこともあります。それでは単なる自己中心的なサービスになってしまいますね。逆に、人間性がよくて技術が下手という人は、相手の気持ちを汲むことはできるので、“相手が何をして欲しいか”を理解することができます。

少ない技術の中でも、はずさない。相手に寄り添ったサービスが提案できるのです。
同じ技量の人が二人いたとしたら、やはり思いの強さだったり、好きの度合いだったり、人とのつながりだったりとかが大事になってきますよね。そういったことがあると、すごい人に教えてもらうチャンスが得られたり、思いがけない好運が舞い込んできたりすることもあります。ことトップの世界になってくると、ちょっとした違いがすべてを変えてしまうこともありますから。技術を高めていくと同時に人間性を育てなければ、いくら努力しても負けてしまうことはあるかもしれませんね。

花上:上を目指してがむしゃらに努力することも必要ですが、人間関係や心持ちを高めことが大切なのですね。

美容業界に携わる人たちへのメッセージ

花上:新井さんは毎年、年間のテーマを決めて活動をなさっているそうですね。毎年12月に行われるヘアショー「アップスタイルヘアコレション」で、翌年のテーマを発表されるのだとか。

新井:はい。毎年、その年に自分たちにとって必要なテーマ、スローガンを掲げて自分の思いを確立します。これは、社内での様々な事に影響されていきます。これまで、「JOY OF LIFE」や「デコレーションビューティ」、「ROCK」などがありました。その時期の自分の気持ちや流行なども踏まえてスローガンを立てています。

花上:なるほど。スローガンを掲げることによって目標をしっかりと見据えて、着実に進んでいくことができますね。ちなみに、2010年のテーマは何ですか?どのようなことを目標にしていらっしゃるのでしょうか?

新井唯夫01_Ph02新井:2010年のテーマは『HAPPY♥POP』。“美容の仕事を通じて幸せを表現し、そこにいることで周りが幸せになるような自分を目指したい”と考え、このテーマを掲げました。
子どもの頃、変な髪形になると悲しくて泣きそうになったことはありませんか?でも反対に、素敵な髪形にしてもらえると、嬉しくて、ウキウキした気分になったことを思い出します。そのような気持ちは誰しも、大人になっても同じこと。ヘアスタイルやメイクがキマると、心が弾んで、洋服選びもいつもよりちょっと気合が入りますね。お気に入りのファッションやおしゃれなヘアメイクができることによって、心の健康をももたらし、素肌も自然ときれいになっていくのだと思います。すると、そこには必ず、健全な心が育まれ、人々に笑顔が生まれます。また、明るいところには人が集まり、そして幸せな空気が満ちあふれます。

私はクリエイターとして相手を感じて表現しながら、心が元気になる髪形や、施術や、空間をプロデュースしていきたいと考えています。お客様一人ひとりに「Happy=幸福」や「Pop=弾ける」気持ちを提供し、私の創造力が生み出すクリエイティブに感動していただきながら、美容を好きになってもらいたい――。偉大な美容の世界を私にかかわるすべての人と分かち合いながら、今後も幸福感を共有していきたいと思っています。

花上:外面の美しさだけではなく、心から喜びを感じることが真の幸福をもたらすのですね。最後に、美容業界に携わる人たち、今後、美容業界を目指す人たちへ、メッセージをお願いします。

新井:美容業界に携わる人にかかわらず、きっと誰だって、頑張ってもうまくいかなくて自己嫌悪に陥ったり、気持ちがめげたりした経験があると思います。
失敗して叱られたり、傷ついて立ち直れなかったり、不安や緊張のあまりパニックになってしまうことも、少なからずあるでしょう。そんな時は、自分自身の澄んだ心を呼び戻して、もう一度原点を見つめ直すこと。それによってさらに傷ついてしまうこともあるけれど、前に進んでいかなければ何も探せないですし、何も得られません。確かに苦しい日々を過ごすのはつらいこと。でも、そういう時だからこそ、順調な時には意識さえしなかった友情とか、人の優しさに気づけることもあると思います。年齢を重ねれば偉くなって失敗もしなくなる、というわけではありませんし、一度身に付けた技術が永久に身に付いてくれるものとも限りません。自分の未熟さを思い知らされることはよくあることです。だとすれば、つねに努力を継続しつづけるしかないのではないでしょうか。
そんな中から、美しさへの創造力が生まれ、お客様へ喜びを与えることができるのだと思います。

花上:ありがとうございます。今回のインタビューを通じて新井さん独自の“美に対する哲学”や人としての魅力を感じ、多くのお客様や美容関係者から支持されている理由がわかりました。これからのますますのご活躍を、お祈りしています。

新井唯夫(あらい・ただお)/FEERIE (フェリー)代表、株式会社アライタダオエクセレンス、株式会社ジェニュイン President&C.E.O.、美容研究全国新井会 会長。ヘアーサロンやエステティックサロンでのサロンワークの他、美容専門誌やテレビ番組に出演する人気美容師。日本エステティック協会 認定エステティシャンの資格を持ち、日本アロマ環境協会 (AEAJ)認定アロマテラピーアドバイザーでもある。

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