資生堂、アデランスなど毛髪再生医療の研究開発に力
2013.09.4
編集部
自らの毛髪細胞を培養して薄毛を治療する毛髪再生医療の研究開発が活発化してきた。
アデランスホールディングスは、毛髪細胞を培養して毛髪が薄くなっている部位へ移植する薄毛治療法の研究開発に取り組んでいる。同社の毛髪再生医療は、後頭部の毛包細胞を採取し、真皮細胞と表皮細胞を別々に培養して頭皮に注入するもの。真皮が誘発因子を発して表皮細胞に働きかけシグナルを受けた表皮細胞が毛包を作り出すという治験に基づく。毛髪再生医療の研究開発は、同社の米国にある研究所で基礎研究などに取り組んでおり、2014年中にも毛髪再生医療製品「Jigami」の商品名で市場に投入(販売)する方針。
同社では、毛髪再生医療事業について2011年度から2013年度までの3ヵ年中期経営計画の中で、前期(2013年2月期)に事業全体の戦略を立案し、今期(2014年2月期)中に販売の準備に入る計画を立てた。しかし、同社は、ヒトでの臨床試験や米食品医薬局への製造・販売承認申請など具体的な内容について「明らかにできない」として明言を避けた。
資生堂は、毛髪再生医療技術を持つカナダのバイオベンチャー「レプリセル・ライフサイエンス」とアジア全域で毛髪再生医療事業を展開するライセンス契約(2013年5月)を結び、2018年度までに事業化を目指す。
同社がレプリセルから導入した毛髪自家細胞移植技術は、脱毛症や薄毛に悩む患者の頭皮から採取した低部毛根鞘細胞を細胞培養プロセスで培養した後、脱毛部位に移植することで、脱毛部位の損傷した毛包を再活性させ合わせて脱毛部位の毛髪成長と脱毛薄毛を改善する。
花王は、遺伝子レベルの解析で、加齢に伴う髪やコシを低下する遺伝子として「VEGF」(血管内皮増殖因子)を特定。毛髪を太くし張りやコシを増強する薬剤開発や育毛剤の開発に応用する。また、同社は、白髪の発生と髪の根元にあるタンパク質「繊維芽細胞増殖因子」(FGF)を作る遺伝子の量についての研究成果について「たん白質を作る遺伝子の量が減って働きが悪くなると髪に色を付ける色素細胞の増殖が減退し毛髪細胞の機能が低下して白髪になる」ことを突きとめた。この成果をベースに白髪の予防剤開発に取り組んでいる。
現在、脱毛症や薄毛をサポートする植毛、かつら、育毛剤などの国内毛髪市場は、2000億円規模にのぼると推計(民間調査会社調べ)。今後、毛髪再生医療の勃興で、市場規模がさらに拡大するのは必至とみられる。