乳酸菌飲料の継続的な飲用で高齢者の“QOL”改善の可能性
2013.10.30
編集部
カルピス株式会社(東京都渋谷区)の発酵応用研究所は、愛媛大学大学院医学系研究科公衆衛生・健康医学分野(教授:谷川武)との共同研究により、乳酸菌飲料の継続飲用などが高齢者のQOL(生活の質)の向上につながる可能性があるとの研究結果を得て、10月23日から開催された第72回日本公衆衛生学会で発表した。
調査には、50年後の日本の高齢者比率に近いとされている愛媛県越智郡上島町岩城島の住民らが協力。希釈タイプの乳酸菌飲料を高齢者自身が調製し、1日1杯を8週間継続飲用するなどの方法で、高齢者を対象とした乳酸菌飲料の継続飲用による心身の健康度への影響を調査。健康関連のQOLを評価するための調査票や体調アンケートで評価した。
その結果、調査開始時と継続飲用8週後を比較すると、「心の健康」で有意な上昇が認められ、「全体的健康感」、「活力」、「日常役割機能(精神)」の複数の項目で上昇の傾向が認められた。精神面の総合的な指標である「精神的サマリースコア」で上昇の傾向が認められ、特に精神面のQOLについて向上が示唆された。(図)
同研究所は、「飲料を継続飲用することで主観的健康感が上昇し、また飲用をきっかけとした住民の集まる場を設けることにより、高齢者の孤独感が解消する可能性がある」「また、毎日自分で飲料を希釈調製するなどのルーティンワークや日々の生活の目的を持つことにより、心の健康など精神面のQOL向上が期待できる可能性が示された」とまとめている。今後は、今回の調査結果を参考として、当該地域全体で長期的な研究を行い、高齢者のQOL改善効果の検証を進めていく。
※愛媛県越智郡(おちぐん)上島町(かみじまちょう)
愛媛県と広島県の県境、瀬戸内海に浮かぶ離島25島(うち6島が有人島)から構成される町で人口は約7,200人、世帯数は約3,700戸。厚生労働省の研究班の調べでは、「2060年には、日本の人口の40%が65歳以上となる」と予測されているが、上島町の65歳以上の人口は2012年2月末時点で40%に上っており、約50年後の日本人口の縮図と考えられている。