大手化粧品各社の海外M&A(下)~資生堂、花王海外橋頭堡を構築
2014.06.25
編集部
化粧品の海外M&A を牽引しているのが資生堂と花王の両社。資生堂の製品カテゴリー別に見たグローバル展開は、日本とアジアを中心としたスキンケアビジネスとBPI(Beauty Prestige International)という独立した香水部門を持つ香水ビジネスを世界最大の香水市場である欧州をメインにしながらグローバル展開。さらに、BEやNARSといった企業買収ビジネスによる「メイクアップ」ブランドを北米市場中心に展開するなど3商品をトライアングルにして欧洲、米国、アジアの3極を中心にグローバル化を推進してきた。
特に、資生堂は、ベアエッセンシャル(BE)やNARSを傘下(子会社)に収めたことで、それまで未参入の高級化粧品市場における「ナチュラルメーキャップ」の領域をカバーすることを実現。同時に、BEが資生堂グループのメンバーとなったことで、世界の化粧品業界における資生堂グループのプレゼンス向上に寄与した。その一つのモデルとして資生堂香港(販売子会社)を通じて香港デパートに出店を実現したのは、シナジー効果の証しといえる。また、米市場において「NARS」は、デジタル・マーケティングのノウハウや実績を生かして資生堂のeコマースを導入するなどシナジー効果を発揮している。2013 年12 月末時点でのグローバルブランド「HISEIDO」の展開地域は、世界89 の国と地域(日本を含む)にのぼるなどグローバルネットワーク橋頭堡構築の証しといえる。
すでに資生堂は、買収によるシナジー効果やグローバル展開で前期(2014年3月期)の海外売上比率は、50・5%と50%を超え、国内の売上比率を上回った。今期(2015年3月期)は、海外売上高4100億円、海外売上比率52・6%を計画。今後、ロシア、ブラジル、インド、中東など新興市場において合弁、M&Aを含んだ事業基盤の強化によって中長期期的に海外での売上比率は、60%にまで高まる見通し。
平成25年度を初年度に27年度までの中期3ヵ年計画(K15)を策定した花王は、連結売上高1兆4000億円、総売上高に占める海外売上比率を30%以上目指す。
花王の化粧品、スキンケアなどビューティケア事業のM&Aは、1988年にスキンケメーカーの「アンドリュー・ジャーゲンズ」社を買収。1998年には、アメリカの「ボシュロム」社からプレミアムスキンケアブランド「キュレル」を買収するなど他社に先行してM&を実践した。
現在、米市場では「Kao USA」(旧アンドリュー・ジャーゲンズ)が「ジャーゲンズ」「ビオレ」「キュレル」「ban」などのブランドで展開。欧州市場では、1986年ドイツに高級ヘアケア製品の製造販売を行う「グール・イケバナ」を設立。翌87年には、ドイツに美容サロン向けヘアケア製品を製造販売する「花王プロフェッショナル・サロン・サービシーズ」を買収し、ヨーロッパでの事業基盤を強化した。
中国を中心としたアジア市場では、子会社カネボウ化粧品との相乗効果を発揮する。カネボウ化粧品の2013年1月―12月売上高は、約1,800億円(花王の連結決算対象)。海外比率は、10%強にのぼる。中国市場では、百貨店、高級薬局に加えて第3の市場と捉える化粧専門店で攻勢をかける。同時に、ロシア市場での攻略も注目されるところだ。
資生堂、花王とも海外現地販社の設立や企業買収に伴う子会社設立など欧米、アジア3極でのグローバルネットワークの橋頭堡は、ほぼ確立された。資生堂は、高級路線、花王は、スキンケア、ヘアケア中心の路線でM&Aとグローバル化を推進してきたが、引き続き海外M&Aの指向は堅持する方針。今後、現地の消費者に根ざした高付加価値の売れる商品開発と合わせて海外のM&A展開による市場攻略が注視される。