発毛・育毛剤の研究開発を検証(上) ~資生堂『アデノシン』開発

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2014.09.25

編集部

脱毛症に悩む男女の患者数が1300万人に達し、現代病として無視できない状況にある。患者数の増加は、当然の事ながら企業の参入を促す。

現在、発毛・育毛剤分野に参入している主な企業数は、花王、大正製薬、MSD、資生堂、ライオンなど約20社。また、患者数の増加に伴い、発毛・育毛剤市場は、厚生労働省の動態統計調査によると2013年度で約650億円に達した。今後、年率平均15%前後で推移すると見られることから、3年後の2016年度には1000億円台乗せに期待が膨らむ。

しかし、一方では、第1種医薬品・医薬部外品に指定されている発毛・育毛剤開発には、がんなどの新薬開発同様に、数100億円にのぼる莫大な研究開発投資と10年の歳月を要する開発期間がかかる。そこで、発毛・育毛剤市場を牽引する資生堂と大正製薬の発毛・育毛剤の研究開発に焦点を当て実用化を検証するとともに毛髪再生医療の取り組みにも迫った。

現在、資生堂(東京都中央区)の発毛・育毛剤主力製品は、サロン専用の男性用育毛剤『アデノバイタルV』と一般品の『薬用アデノバイタルシリーズ』の2製品。いずれも自社開発の育毛成分「アデノシン」(写真)を配合しているのがミソ。

[アデノシン]

アデノシンは、毛髪成長の司令塔「毛乳頭」に直接作用し、発毛促進因子「FGF-7」の産生量を高めて発毛を促進する機能を持つ。
同社は、徳島大学研究グループと共同で、男性型脱毛の原因について研究する中で、毛乳頭細胞が産生している因子に着目。男性型脱毛の薄毛部位と正常部位(後頭部)の毛根から毛乳頭を取り出し、DNAマイクロアレイ法(異なった細胞や組織における遺伝子発現の差異を検出する法)でそれぞれの因子を比較した。その結果、薄毛部位の毛乳頭細胞では、発毛促進因子「FGF-7」の遺伝子発現が約半分に減少していることが判明。さらに、男性型脱毛の薄毛部位で減少したFGF-7を増やす成分を探索した結果、生体内成分アデノシンが毛乳頭細胞表面の受容体に直接作用し、発毛促進因子「FGF-7」の産生を高めるメカニズムを解明。同時に、FGF-7が毛母細胞の受容体に作用して細胞増殖を高め、毛成長促進効果を示すことが分かった。

アデノシン

男性型脱毛の薄毛部位(頭頂部)と非薄毛部位(後頭部)から採取した毛根中のアデノシン量を高感度LC/MS法という方法を用いて分析。その結果、薄毛部位のアデノシン量は非薄毛部位の約50%にまで低下していることが判明した(右図参照)。
同社は、一連の研究開発で、アデノシンが発毛促進因子「FGF-7」を生み出し、FGF-7が毛髪の成長を促すことを遺伝子学的手法で証明できたことから、アデノシンの育毛効果をヒトでの検証を行い実証するため、都内の医療法人と共同で、有効性試験を実施した。

男性型脱毛者102人を対象に6ヶ月の実使用による有効性試験では、アデノシン配合製剤を使用する被験者と対照製剤を使用する被験者とに分けて試験を行なった。その結果、外観を中心に判定した頭髪全般の改善度は、対照製剤の有効率76.0%に対し、アデノシン配合製剤では、有効率94.1%と高い効果を実証。また、薄毛部位の太毛率は、平均23%~34%に増加し、被験者の太毛化と副作用などの安全性も確認した。
こうした研究成果や実証試験を踏まえてアデノシンを医薬部外品(育毛剤)の有効成分として厚生労働省に製造承認申請を行い、2004年10月に正式承認を受けた。

『アデノバイタル』の商品化は、アデノシンの開発に負うところが大きい。

参考リンク
株式会社資生堂

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