禿げ、薄毛の現代事情(上)~アールテック・ウエノが男性型脱毛症治療薬でライセンス交渉中

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2014.10.22

編集部

男性型脱毛症現在、男性型脱毛症(禿げ=写真)や薄毛に悩む日本人男性は、3人に1人の割合、約1,260万人にのぼる。人間社会の閉塞感、仕事のストレス、遺伝体質などさまざまな要因で発症する現代病といって良い。最近では、女性の社会進出に伴い、薄毛に悩む女性が増える傾向にある。こうした髪の毛に悩む現代病に対して株式会社アールテック・ウエノ(ジャスダック上場:東京都千代田区)は、男性型脱毛症治療薬開発(塗布剤)のライセンスアウト交渉に乗り出している。また、育毛剤のネット販売解禁に伴いサントリーホールディングス株式会社(大阪府大阪市北区)、富士フイルム株式会社(東京都港区)などが新規参入、通販市場中心に百花繚乱の体にある。また、毛髪細胞を移植して禿げた髪の毛を再生させる毛髪再生移植技術(再生医療)に再生医療ベンチャーで上場を目指す株式会社フェニックスバイオ(広島県東広島市)が事業化に取り組むなど新たな潮流も見られる。そこで現代病“禿げ〟“薄毛〟に取組む開発や新規参入の動きなどを中心に禿げ、薄毛の現代事情に迫った。

発毛剤と育毛剤を混合して捉える傾向が強い。脱毛で完全に毛が生えていない部分(写真)に新しい毛を生やすのが発毛剤(医薬品)。これに対して育毛剤(医薬部外品)は、生えている髪の毛に血行促進や栄養分を与えることで、髪の毛を太く丈夫にする。

育毛剤の中には、ふけやかゆみ、傷みなどを修復する養毛剤(医薬部外品)と表記するケースもあり消費者が戸惑う場面も少なくない。また、医薬部外品とは、薬事法で医薬品と化粧品の中間として分類されているもので、人体に対して作用が緩やかなことや何らかの改善効果をもたらすことを指す。

このように発毛剤と育毛剤、養毛剤は基本的に症状や用途が違う。また、医薬品、医薬部外品とも厚生労働省の製造・販売認可が必要。

厚生労働省は、認可に当たって発毛剤、育毛剤、養毛剤に配合されている有効成分や安全性を重点審査して認可を下す。一般的に、医薬品としての発毛剤の認可は厳しい。それに対して、医薬部外品の育毛剤の認可は比較的緩やかだ。

メーカー各社は、厚労省から認可を受けた成分を発毛剤、育毛剤に配合して自社ブランドとして市場で販売することになる。

現在、禿げている部分に毛が生える発毛剤や髪の毛を丈夫にする育毛剤、髪の毛を染める染毛剤合わせた毛髪用剤の国内生産金額は、厚労省動態統計調査によると2013年度で152億3,700万円にのぼる。

この中で男性型脱毛症対応の発毛剤を商品化し市場で販売しているのが大正製薬株式会社(東京都豊島区)とMSD(メルク子会社:東京都千代田区)の2社。2社が発毛剤市場を独占する中で現在、男性型脱毛症治療薬(塗布剤)の開発でもっとも関心を集めているのが創薬ベンチャー「アールテック・ウエノ」のライセンス交渉の動き。

同社は、男性型脱毛症治療薬についてアンチエイジング領域の生活改善薬としてまつ毛貧毛症と合わせて開発に取り組んでいるもの。男性型脱毛症治療薬に塗布剤がないことに着目し、緑内障治療薬の副作用を応用して開発に取り組んだ。新規化合物の開発コード名は「RK-23」で、2011年1月に前期第2 相臨床試験を完了。現在、投薬量や投薬方法を決定する後期第2相臨床試験に移行している。

「RK-23」の前期第2相臨床試験では、脱毛症患者48名に13週間頭皮に塗布して安全性、有効性を評価した結果、プラセボ(偽薬効果)と差異は見られず全身への作用は少ないなどの安全性を確認。また、有効性については、育毛剤の評価法「フォトトリコ試験」により成長期毛数の減少が抑制されたことを確認した。同時に「RK-23」の前期第2相臨床試験完了に伴って開発権や商業化権などを譲渡し、販売額の一定比率をロイヤルティ収入として受領する目的で、ライセンスアウト交渉に乗り出している。

同社は「国内外のグローバル製薬企業との間で、ライセンスアウト交渉を進めている。現段階では、ライセンス先が決まっていない」としているが、引き続き交渉の行方が最大の関心事。

同社は、開発パイプラインを前期第2相臨床試験(フェーズ2a)まで完了させて有効性を確認し、順次、国内外のグローバルな大手製薬企業に開発権、商業化権をライセンスアウトすることを経営方針としている。ライセンスアウトすることで、ライセンス収入やロイヤリティ収入、開発ごとのマイルストン収入などを得ながら毎年の増収に繋げる考え。

同社の2015年3月期業績は、売上高57億6,300万円、営業利益14億3,100万円、利益10億300万円を見込む。ただし今後、ライセンス先が決定した場合、売上高は一挙に80億円台に乗せる局面も予想される。

参考リンク
株式会社アールテック・ウエノ

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