禿げ、薄毛の現代事情(中)~育毛剤通販市場が百花繚乱、異業種から新規参入相次ぐ
2014.10.23
編集部
育毛剤は、ネット販売解禁や女性用育毛剤の成長を支えに異業種から新規参入が相次ぎ通販市場を中心に活況を呈している。育毛剤市場には、自社ブランド(プライベートブランド=PB)の育毛剤開発を計画する多業種の法人企業や美容サロン、通販事業者、美容整形、OEM・ODMメーカーなどを含めて約200社が参入。特に、女性向け育毛剤を通販市場(市場規模約98億円)に重点的に投入する動きが活発で、異業種からの参入組を含めて会員の取り込み、新規会員の拡大に躍起の体。490億円にのぼると見られる国内育毛剤市場は、まさに百花繚乱の状態にある。
こうした中、異業種から新規参入が相次いでいる。これまで育毛剤市場に参入または参入を表明した大手企業は、コスモ石油株式会社(東京都港区)、王子製紙株式会社(東京都中央区)、サントリーホールディングス株式会社(大阪府大阪市北区)、富士フイルム株式会社(東京都港区)などが代表格。
育毛剤の新規参入組で最も注目されるのが富士フイルム。同社は、2014年9月に「スカルプフォーカスシリーズ」(女性用:頭皮用美容液、シャンプー、コンディショナー3品目)を市場投入し、本格参入した。育毛有効成分として広く用いられているグリチルレチン酸を独自の「ナノシェル技術」(水溶液中でもナノサイズで安定化させる技術)で水に高濃度に分散した「ナノグリチルレチン酸」(図)を開発し、成分配合した。
同社は、これまで、化粧品分野に参入して100億円の売上を達成したと見られているが育毛剤でも台風の目のような存在。当面、同社の通販サイトとアンテナショップで販売。3年後に10億円の売り上げを見込む。
コスモ石油は、株式会社MILBON(ミルボン:大阪府大阪市都島区)と共同で、育毛剤事業に参入を表明し「5-ALA」(アミノレブリン酸)と鉄を配合した育毛剤を2008年に厚労省へ承認申請し現在、承認待ちの状態。
育毛剤市場には、新規参入がさらに加速する勢いだ。株式会社九電工(福岡県福岡市南区)や養命酒製造株式会社(東京都渋谷区)なども今後、新規参入する公算が強い。両社は、現在、自然派を標榜する化粧品メーカーと育毛剤の共同開発を進行中。
九電工は、現在、熊本・天草市の自社オリーブ園で栽培したオリーブ葉エキス配合の化粧品やシャンプーなどを商品化し、オリーブ園や福岡市内の百貨店(写真)、通販で販売している。今後、商品アイテムを育毛剤に拡大して市場に打って出るのは確実と見られる。
こうした育毛剤に配合されている成分は、髪の毛を丈夫にするなど身体に何らかの効果を及ぼすとして厚労省が医薬部外品として認可したもの。しかし、消費者にとってより重要なことは、配合成分や有効性を再度、認識した上で購入することが求められる。
化粧品は、すでに消費者指向が「自分に合った、自分だけの商品」へとシフトし、企業ブランド、商品ブランド離れが起きている。育毛剤も消費者の賢い選択が何よりも重要な時代となっている。